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カンボディア シュムリアップからのお便り No.2 2001.9.10
昔、精労協、今、国際精神保健協力
手林佳正 心理 mailto:YHA00720@nifty.ne.jp
mailto:tebayashi@bigpond.com.kh
元、群馬・三枚橋病院、東京・多摩あおば(北久米川)病院
現、SUMHカンボディア精神保健プロジェクト
シュムリアップ現地事務所代表精労協の卒業生として何か書くように有我さんから誘われた。かつて2年間、争議の経験があって、精労協にはさんざん借りもあるし、人間関係も続いているし、断るわけには行かなかった。そこで今回は、ぼくがこの世界に入った経過を書こうと思います。
96年春に18年働いた、ぼくの青春を捧げた、三枚橋を退職しました。46才。何の当てがあるわけでもなくて、当時の若い同僚からはこれからの仕事は大丈夫ですか?と、心配されたことが耳に残っています。子どもが経済的に自立する時期だったのが、ぼくの決断を促しました。
はじめはやりたいと思っていたことをし、行きたいと思っていたところへ出かけました。そのなかには、ネパール・トレッキングを思いっきりするということも入っていました。半年位をそこで過ごすうちに、出会ったのが国際保健協力をする人々でした。面白そうとか、ここは違うんじゃないかとか、活動に実際に接するうちにいろんな想いが出てきて、初めての現実に引き込まれるようでした。知識がまったくない、ハンセン氏病のケアでした。すぐに精神と同様に長い隔離収容策の対象であったことを知りました。
カンボディアには、精神保健分野で保健協力をしている動きがあることをある団体の通信から知りました。時間があるので、連絡を取って見に行きました。ポルポト以降なくなってしまった精神科診療について、まず外来活動を再建する動きでした。カンボディア人精神科医師の養成をオスロ大学を中心とするNGOがやっているのは驚きでした。ノルウェイ人の教授は虐殺の影響は未だあるが、まず何もない診療を創ることが必要、と低い声で断定していました。駐在する日本人に誘われるままに、ぼくは感想を述べていました。急性期の治療はいいとして、慢性的な経過にはどう対応しているのかとか、1100万人の人口に対して首都プノンペンに1ヶ所の診療所でいいのかとか、専門家以外にも養成する必要性があるのではないかとか、そんなことでした。その駐在員は、それを事業としてやりたいと言い出しました。またまた驚きでした。ぼくは国際協力には門外漢だと思っていたからでした。そのプランは、その団体の本部からは認められないで、実行されませんでしたが。
日本での経験や知識が役に立つなら、また好きな途上国で生きていけるならとか、そんな考えも出てきて、滞在費稼ぎと、将来のプロジェクトの可能性を探る意味から、カンボディアを舞台とする研究調査助成を申請しました。これは3年連続で続いています。あわせて、東京では頻回に開かれている国際協力に関する勉強会にも参加し始めました。NGOの派遣募集に応募したり、国が行う国際協力=JICAにも応募したりし始めました。以来、6年です。ウガンダ、ブラジル、ネパール、カンボディアなどが、この間の滞在フィールドです。
今年5月からは、自分たちの独立したNGO「SUMH 途上国の精神保健を支えるネットワーク」が独自のプロジェクトをカンボディアはシュムリアップで開始しています。
応援してください!精労協の皆さん!***************************
スタディツアーと求人情報です。1.スタディツアー募集
主催:SUMH 途上国の精神保健を支えるネットワーク Supporters for Mental Health長い内戦を経験したカンボディアの国際精神保健協力の現場を訪ねるスタディツアー
−アンコール遺跡の街シュムリアップと首都プノンペン−内容:日本初の国際精神保健NGOであるSUMHの活動を見るとともに、カンボディアの現地精神保健NGOや病院、心理社会リハビリテーションセンター、SUMHプロジェクト地である村へ訪問し、交流します。アンコール遺跡群めぐりやクメール伝統舞踊アプサラダンスなどの伝統芸術にも触れ、また現地駐在日本人スタッフの案内で市場散策や屋台食べ歩きなど、庶民の生活に触れながら、盛りだくさんのひと味違った旅をみなさんと一緒に楽しみます。
第1班:12月16日から23日まで、シュムリアップ集合プノンペン解散。
第2班:12月23日から30日まで、プノンペン集合シュムリアップ解散。参加条件など:参加費用11万円。
事前に連絡いただければ空港送迎します。希望者には航空券手配を手伝います。
第1日夕食から最終日朝食までの全食事、飲み物(アルコールは除く)、移動費、見学研修費・資料費・アンコール遺跡入場料を含みます。申し込み期間:2001年9月末(第一次締め切り)と10月末(最終締め切り)。
2.カンボディアの現地スタッフ募集
精神科リハビリテーション専門職1名
この分野の総合的な知識と経験を持ち、関連団体と連携しながら、英語で、それを技術移転できる人。医師、心理、PSW、看護、OT等職種は問いません。心理社会リハビリテーション教員養成講座の企画実施などを担当していただきます。
給与はSUMHの規定。週5日勤務、年休3週間、日本との年間1往復交通費支給、3ヶ月間の試用期間、2年契約(延長可)、医療保険と国民年金と支度金などは自己負担、現地語学研修費はSUMHが負担。2002年1月ないし4月着任予定。いずれもSUMHシュムリアップ事務所(担当:梅野)までE-mailでご応募ください。専門職応募者は、履歴書・志望動機(1200字程度)をwordないしtext形式でお送りください。
SUMH [Supporters for Mental Health]
途上国の精神保健を支えるネットワーク
P.O.Box 93102 G P O Siem Reap Angkor, Cambodia
Tel & Fax: +855-63-963356
E-mail: mailto:SUMH@bigpond.com.kh
原稿その2
国際協力の3つの形−慈善と緊急支援、開発支援について手林佳正 心理 mailto:YHA00720@nifty.ne.jp
mailto:tebayashi@bigpond.com.kh元、群馬・三枚橋病院、東京・多摩あおば(北久米川)病院
現、SUMHカンボディア精神保健プロジェクト
シュムリアップ現地事務所代表インドのカルカッタのマザーテレサの死に行く人々へのケアは有名です。ぼくは「慈善型」と呼んでいます。施しです。最も基本的な協力の形だと思います。持てる人が、持てない人に施すことは、協力する始めの形式でしょう。今でも、途上国の学校にノートと鉛筆を届けるとか、ハンセン病者に靴下と靴を届けるとか、古着を送るとか、さまざまな形で息づいています。
そして「緊急援助型」が次にあります。自然災害や、戦争などで起きた緊急の事態に、外国から支援を一定期間することです。最近ではインドの大地震がありました。神戸へも外国からやってきていました。
最近の国際協力は「開発支援型」です。耳新しいかもしれませんが、参加型とか、持続可能性とか、キーになる概念が1990年代を中心に作られています。「慈善型」は、お金持ちでもない限り継続することが難しいし、その社会の社会保障システムが形成されていく足を引っ張りかねないし、依存を形成しやすいなどの本質的な批判があります。宗教団体を中心に、このタイプの協力は長い歴史があります。
また一方で、具体策も難しいのです。カンボディアの村の小学校では、石版に石で字を書いて覚えるというのが普通の光景ですが、ここにノートとエンピツを送っている団体が実際にあります。子どもたちの日常とは、かけ離れた物品です。すぐになくなるか、あるいは市場へと持っていかれて、売りに出されます。支援される側の現実を知らずに、支援する側だけで決めてかかると、こういう誤りが生まれます。
「緊急援助型」はわかりやすい。困っている人々に、今ここでの援助をして帰ってくるわけです。支援するほうも、手を差し伸べたいと気持ちが高まっているし、受けるほうもニードがある。
この困難性は、まさしくその具体策です。何を、いつ、誰に、どのように、ということが課題になります。ぼくが昨年いたフィールドは10年来の洪水に見舞われました。在宅訪問中心のケアをしている団体でしたが、そのときは高台の国道に着の身着のままで溢れかえる非難している人々に、食事をまず配ることを決めました。赤十字は屋根にする防水テントを、政府は米を配っていました。2週間して水が引き始め、ぼくたちは訪問しているソーシャルワーカーの情報を元に、それぞれの世帯用に、油・鍋・米・マキ・せっけん・乾し魚などの組み合わせを検討し、世帯ごとに必要を思われるものを配りました。こうした事前情報がない団体は、大まかに物品を決めて配るしかありません。そうすると、こういう事態になります。ぼくたちが村を訪問しているときに雑貨屋で見る光景ですが、販売禁止などと書かれた米や缶詰などが商品として並んでいるのです。有効な具体策が必要です。気持ちだけで行動すると、役立たないことも多いです。
「開発支援型」は、最近の国際協力のトレンドです。近年では少子化時代で大学生が集まりにくく、海外に関心のある学生を呼び込む作戦の1つとしての意味もあって、国際ナントカ学科のなかなどで、学問化されてきてもいます。プロジェクトが終了したときに地元にある条件で継続可能かどうかという持続可能性という視点や、外側から何かを行ってくるのではなく、そこに住む住民とともにプロジェクトを作る参加型とか、プロジェクトの効果を測定する新しい視点とか、新たな方法論が生まれています。
このタイプはちょっとわかりにくい。方法論ありき、というところがある。熟達していないスタッフが行うと、理論が先で現実が後からついてくるということが起こりうる。つまり、十分に勉強し把握した後に行われるなら、有効性は高いといえる。さて、3つの国際協力のタイプを言いました。もう一点、重要な視点があります。それは国際政治の視点です。1989年までの冷戦構造の時代には、東西の陣営への綱引きが途上国を舞台に行われていました。国際革命の視点で行われた支援もその中に入れてよいでしょうか。それ以降は、軍事によって国の威信を示すという方法論に変わって、国際援助によって行うという動きがあります。この場合、援助の有効性の判断は、その途上国が国連で日本の案に投票したかどうかによってなされることになります。援助対象国で生きる下々の人々の暮らしは何の関係もないことになります。こういう外交の方策が国際協力の名のもとで行われている現実もあります。
日本の国家間協力ODAを行う国際協力事業団JICAは、日本外交威信事業団と改名すべきという声もあります。約半数の派遣者は行きたくもない途上国に出張として勤務させられ、5スターホテルで生活しているのです。草の根レベルの国際協力とは峻別しなければいけません。そうでない人々も少なからずいますが。
以上。
原稿3
国際協力における看護、日本の看護
手林佳正 心理 mailto:YHA00720@nifty.ne.jp
mailto:tebayashi@bigpond.com.kh
元、群馬・三枚橋病院、東京・多摩あおば(北久米川)病院
現、SUMHカンボディア精神保健プロジェクト
シュムリアップ現地事務所代表保健協力の分野にいると、途上国で働く日本人看護婦さんと出会います。そして戸惑いもよく聞きます。
「基礎教育がだめなんだよね、清潔が伝わらないし。」
「偉そうにして、看護婦が患者の処置を指示するだけなんだよ。」
「看護婦が治療していいんだろうか?」
「看護婦だけの責任では働けないよ、医者が来ないと。」
「病院運営にもっと全職員の声が反映されないと。一部の人しか意見を言わなくて。」
ぼくにはよくわかる戸惑いばかりです。屋根も壁も隙間だらけの診療所が、途上国では普通です。そのほうが通気性がよくて、熱帯には適しているのかもしれません、というのは言いすぎですが。妙齢の看護者が鼻くそを穿りながら看護業務をしているという光景は、カンボディアでは当たり前です。一方では、男と距離が近づくだけでさえ顔を赤らめたりもします。そういう文化です。
また洗濯する川も、排泄する川も、水浴する川も同じ。さすが飲料水は別ですが。きっと水に流すときれいになるという、日本も伝統的に持ってきた清潔感です。物も足りません。日本における清潔と、カンボディアにおける清潔は違うものなのでしょう。ある協力隊員は2年間を清潔を教えるだけに使ったという話を聞いたことがあります。その後の状況が気になるところです。途上国では教育を受けている人の割合が少ない。看護者の地位も高い。看護行為自体は付き添いの家族や親族が行っている。日本では違う。日本で患者さんと直接接することが大好きないい看護婦さんは、困ってしまいます。婦長のように、指示を出すことが仕事なのです。また事態を客観的に捉えていないと、指示を出すことは簡単ではありません。また日本人は指示を出すこと自体に罪悪感すらあります。「気づいたことを人に頼まず、自分で体を使って汗水たらしてしていく」ことがいい看護婦だという信仰がありますよね。
ご存知のように、先進国の看護者の業務は、看護行為であって、治療行為ではありません。しかし途上国では、数週間の研修を受けたヘルスボランティア(国によって呼称は異なる)がファーストエイドやカゼなどの治療はしてしまいます。看護婦においておや、です。専門職が少ないのです。
ナニ!この程度の縫合ができない?どの薬を出していいか決められない?
日本人看護婦は困ってしまいます。医者が来るべきなのに、来ないんだから・・・!途上国で日本の看護者が働くには、日本での経験と知識を途上国に当てはめるのではなく、それを背景にして、途上国の現実では何が役立つか、自分には何ができるかなどを発見していく作業が大事だと思います。オリジナリティが必要です。先人たちの実践に学ぶことも必要です。その社会にあった看護教育者になることも大切です。
日本では、医師を頂点とした医療関係スタッフの階層性があって、いろんな指示が来て、それをこなしているうちに一日が過ぎていくという印象があります。こうした現実は世界の看護婦のごく一部の現実のようです。
日本の看護はどう進めていったらいいのでしょうか、ね?以上
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