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精神医療ニュース 過去記事 2002年7月分


<2002年7月30日毎日新聞青森

[こころを閉じ込めないで] 『病者』たちが問う社会/6
 
 精神障害者が語り合える場を作ろうと、SANNet青森が3年前に開いたフリースペース「アエル」は青森市中心部の新町商店街にある。当初は街の人々の偏見を避けるため「ボランティア団体」の看板を掲げたが、無用の懸念だった。
 「福祉対応型商店街」を掲げ、バリアフリー化を進めていた新町商店街は、00年度に障害者への接し方を解説するハンドブックを作った。その際、SANNetに執筆を依頼した。
 そこから信頼感が芽生え、「実は精神障害者の団体です」と明かすと、「ああ、そうだったの」とあっけなく受け入れられた。今では、二つの身体障害者のNPOとともに「NPO御三家」と呼ばれ、溶け込んでいる。
 車椅子の貸し出し、障害者を交えたイベント「ふれあい広場」、街づくりの会議などで、商店街はさまざまな障害者と交流している。飲食店から割りばしを回収する「割りばしリサイクル」はSANNetが主体だ。
 SANNetのメンバーがミーティングの前後に読む「回復の十原則」には、「私は社会に参加することで回復をします」とある。「参加」の前提は社会の側が受け入れることだ。新町商店街では、それがごく自然に実現した。
 新町商店街振興組合の堀江重一事務局長は「精神障害者がいることに違和感はない」と言い切り、「実は知的障害と精神障害の違いもよく分からないんですよね。見た目は普通の人と違わないし」と苦笑する。SANNet代表の根本あや子さん(53)は「違いが分かる必要はない。受け入れることができればいいんです」とむしろうれしそうだ。
 十原則は「私は精神病の患者である前に一人の人間です」とも言う。SANNetの人々を「一人の人間」と認めた商店街の姿勢は、精神障害者を「危険な人」として隔離する心神喪失者医療観察法案の発想とは対極に立つものだ。
 01年犯罪白書によると、同年に刑法犯で検挙された精神障害者の数は711人。全国204万人の精神障害者の0・03%、約29万人の刑法犯全体の0・2%に過ぎない。
 確かに、自身の「狂気」を暴力で表してしまう人もいる。その暴力を受けて苦しむ人もいる。一方で、SANNet事務局の根本俊雄さん(50)のように「30年近く精神障害者とかかわっているが、一度も暴力を受けたことはない」という人もいる。青森市内のある医師は「精神病は目に見えず、治療法も定式化していない。みんな正体不明というだけでおびえている」という。
 あらゆる「健常者」と同様、犯罪を犯すかもしれない人々が精神障害者だ。あや子さんは、心神喪失者医療観察法案によって「現状では障害者とみなされない人にも網をかけ、隔離するのでは」と危ぐする。「『危険』な人を排除した無味無臭の社会に、本当に住みたいのだろうか」。現行法下でも、障害者は自分が危険ではないと証明させられ続けてきた。次は、健常者の社会がこの問いに答える番だ。
               
 30年近い入院。犯罪。幻覚や妄想。恋人や仲間。自らの力で「回復」する障害者。ともに生きる家族。医師や行政、地域の努力。「精神障害者」の現場には、さまざまな生があった。人間の尊厳をかけた光と泥があった。
 翻って、私たちの社会は障害者が復帰すべき場なのだろうか。一人一人違う他者をひとくくりにして排除する社会。「正常」であることを強迫し、競争に駆り立てる社会。私たちは自分のこころを閉じ込めている。どうすればこころを開き、多様な人々とともに生きていけるのか、今後も問い続けたい。【鈴木英生】=おわり

情報は→毎日新聞社青森支局


<2002年7月31日毎日新聞青森

連載[こころを閉じ込めないで]  『病者』たちが問う社会/5 仲間
◇一人じゃないって

 「わの話す言葉で喜んだり、笑ったりするのさ」
 青森市の荒関繁信さん(28)は、照れながら恋人のことを話した。青森市のNPO「SANNet青森」の創設メンバーの一人で、彼女ともSANNetで出会った。今はそれぞれ一人暮らしで、お互いの家に通う。「彼女は自分が一人だって信じてるのさ。だからこの病気が何なのかとか、教えてやりたいのさ」
 荒関さんは中学卒業後、16歳で発病した。電車がごう音をたてて布団の上を通過し、頭上で漫画の登場人物が決闘をする音がした。何日も寝られず、時間も日付も理解できなくなった。ある晩、たくさんの目玉に囲まれ、頭に針を刺された。「このままでは死んでまる」と思った。
 入院したが、退院後も5年間、家からほとんど出なかった。5年前に犬を飼い始め、公園に散歩に行くようになった。飼い主同士、病気のことは話さずに情報2002年7月27日交換をしていると、突然、幻覚も幻聴も消えた。
 障害者の「仲間」を見つけたのは98年、青森市のハートフレンド作業所でだった。初めて行ったころ、ほかの障害者に聞かれた。「どんな病気? 幻聴幻覚あった?」。「おれは幻聴幻覚の意味わがんねぇだけんど、なんだ?」。素直に聞き返した。
 「幻聴ってのは聞こえることで、幻覚ってのは見えること」。説明を聞いて驚いた。「わも聞こえるんだよ」。病院で医者や他の患者に聞いても、病気のことは何一つ分からなかった。「みんな同じ仲間だと知った瞬間、わも幻聴や幻覚があったと知った瞬間、心が開いたな。わは分かったのさ。一人じゃないって」
 SANNetを一緒に開いた根本俊雄さん(50)ともここで知り合った。根本さんは別の作業所で働く健常者だった。「俊雄さんに『仲間と一緒なら何でもできる』って教えてもらったのさ」
 荒関さんは昨年7月、青森大で自身の体験を講演した。小学校の時からの学校嫌い。最初は嫌だったが、当日、大学でチャイムを聞くと妙に心が落ち着いた。「自分も学校に行けるんだ」。仲間と一緒にいてわいた勇気をかみしめた。
 荒関さんは今、SANNetを母体に精神障害者自身が運営する団体「セルフヘルプセンター」を作ろうとしている。「わが知った『仲間がいるんだ、仲間と何でもできるんだ』っていうことを、他の人に知ってほしい」からだ。2002年7月27日
 セルフヘルプセンターは仲間同士が助け合い、社会に参加する方法を自分たちで考えていく団体だ。医療や福祉サービスの受け手でしかなかった青森の精神障害者が、自分たちの言葉で自分たちのための取り組みを始めようとしている。

つづく

情報は→毎日新聞社青森支局


<2002年7月30日毎日新聞青森

連載[こころを閉じ込めないで 『病者』たちが問う社会/4 受け入れの場 
◇裏切らない人がいる

 青森市の溝江直樹さん(39)が「救われた」と語る体験がある。大学生時代、初めて統合失調症で入院した時、実習で来ていた看護学生の女性と、病院の外でデートをしたことだ。「『普通の人に認められている』と感じることが、その時の自分に、いかに大事なことだったか」という。
 入院前、バレーボールの試合中に、自分が味方、敵、観客のどれに属しているのか分からなくなった。「一度に全部を演じようとして混乱した」。入院当初は、日記を書いているうちに日本語が書けなくなった。英語に切り替えたが、英語のスペルもでたらめになった。
 溝江さんは自分の病気を「言葉と精神が分離する病気」と考えている。精神が生きていても、それが外部とつながらなくなり、苦しむ。もがけばもがくほど周囲との溝が大きくなってゆく。「治らなくては」という重圧に、さらにもがく。
 「自分から世捨て人になる人はいない。『お前は要らない』と言われて世を捨てるんだ」と、溝江さんは語る。「犯罪に走る障害者もいる。でも、社会に要らないって言われたら、玉砕覚悟で立ち向かうしかないでしょ。前はこんなこと言える場もなかったんだけど」 「こんなこと言える場」が青森市のフリースペース「アエル」だ。NPO「SANNet青森」が99年7月、青森市新町に開いた。毎日十数人が通い、日常の悩みや喜びを分かち合う。 SANNet代表の根本あや子さん(53)はかつて、ある精神障害者の言葉に胸を突かれる思いがしたことがある。
 「私たちは、たくさんの人に裏切られてきた。家族に、医者に、そのほかの人に」長年、障害者とともに活動してきた根本さんにとって、重い言葉だった。
 必要なのは、手を差し伸べることではなく、徹底して障害者の立場に立つこと。「障害者が誰かに『抗議しに行く』と言う時も、説明せずに『やめろ』とごまかさず、ちゃんと話を聞く」 抗議したいという相手のところに、一緒に行くこともある。溝江さんも「『誰か絶対に裏切らない人がいる』と信じられれば、大丈夫なんだ」と話す。
 SANNetには、特別な社会復帰のプログラムがない。日常的に何か作業するわけでもない。その代わり、障害者が自分の経験を語り合ったり、一般の人に講演したりという活動に重きを置く。その過程で、障害者は「初めて仲間に出会った」「病気と向き合えるようになった」という。
 溝江さんは「病院ではみんな治るための競争に駆り立てられていて、自分のことしか見えない。社会の縮図なんだ」と振り返る。根本さんが「前に進むことしか教えない世の中で『後ろ向きに進んでもいいんじゃない』って言うのがここの役目」と言葉をつないだ。

つづく
情報は→毎日新聞社青森支局



<2002年7月28日毎日新聞青森
連載[こころを閉じ込めないで]  『病者』たちが問う社会/3 長期入院

◇隔離で失う人生

 「退院、させませんか?」 その初老の男性は、30年近くを病院で過ごしていた。だが、症状は安定している。華園寿英さん(55)は「この人は、なぜ入院し続けているのか」という疑問がわき、唐突に退院を提案した。 家族は仰天した。「えっ……退院できるんですか。じゃ、きょう連れて帰ります」。それまで医師にも、家族にも、「退院」という発想はほとんどなかった。
 19年前の出来事だ。華園さんは当時、秋田県の大館市立病院の勤務医。そこでは20年以上の入院患者3人を退院させた。青森県最大の県立つくしが丘病院(青森市)では、担当した病棟に1年以上入院していた48人中32人、秋田・青森時代を通じ100人以上を退院させたという。
 殺人事件を起こした人も退院した。ケースワーカーや家族が連携して状態を週1回チェックし、一人で暮らしている。
 本人がしぶるケースもある。社会に出た経験のある人ほど嫌がる。退院が決まった後、自殺した例もある。それでも華園さんの「社会で生活する方が自然」という信念は変わらない。今はJR青森駅前に医院を開き、地域に戻った患者を診ているが、大半の人は「退院してよかった」と話す。
 日本の精神医療はつい最近まで、治療より「隔離収容」の色彩が濃かった。昨年6月末現在、県内の精神科入院者4225人中688人が20年以上の長期入院。1年以上では2880人に上る。 背景には制度上の問題もある。医療法では、内科などの一般病棟は16床に医師1人だが、精神科は長期療養病棟と同じ48床に1人。制度自体が長期入院を前提としているように見える。
 その定数すら、多くの病院が満たしていない。つくしが丘病院も定数9人に対し7人。ある医師は「患者一人一人と話す時間がなさ過ぎる」と嘆く。退院した人のケアなど望むべくもない。
 「社会で苦労させるより、入院の方がいい」という言い分もある。入院前のトラブルや退院後の不安もあり、「入れっぱなし」になりやすい。長期入院は本人の生活能力を奪い、悪循環になる。
 10年ほど前からは隔離収容を反省する機運が芽生え、家族や患者の運動もあって社会復帰施設が増えてきた。県内の精神科の平均在院日数は311・3日(全国376・5日)で47都道府県中41位。それでも経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国平均の約50日には遠く及ばない。
 「患者の高齢化で長期入院者は減っていく」という見方もあるが、入院で失われた人生は戻らない。政府は昨年、ハンセン病患者の隔離収容政策を謝罪した。無期限入院につながる心神喪失者医療観察法案が通れば、同じ過ちが繰り返されかねない。
つづく

情報は→毎日新聞社青森支局


<2002年7月22日大阪読売新聞>

責任能力不足不起訴の事件 22%は鑑定行わず 厚生科学研究班 処遇法案に問題提起

 刑事責任能力の不足を理由に検察官が起訴しなかった事件のうち、22%は精神鑑定しておらず、簡易鑑定したケースでも、鑑定医と検察官の判断が食い違う比率が約9%にのぼることが、厚生科学研究班の報告書でわかった。研究班の日本精神神経学会員へのアンケートでも、措置入院患者の診療経験を持つ医師の27%が「不起訴は不適切だと思ったことがある」と回答。法務省は、触法精神障害者の処遇をめぐる法案の国会審議で「鑑定の質や検察の事件処理に大きな問題はない」としていたが、実態が改めて問われそうだ。

 「措置入院制度のあり方に関する研究班」が法務省から提供を受けた資料によると、二〇〇〇年までの五年間に心神喪失・心神耗弱と検察が判断して起訴しなかった三千百五十七人のうち、六百九十一人(22%)が鑑定なしで、殺人も五十四人(非鑑定率9%)あった。鑑定なしの比率は容疑者が入院中で39%、通院中で28%と高かった。

 一方、二〇〇〇年の簡易鑑定は二千四十二人で、完全責任能力49%、心神耗弱26%、心神喪失21%。
 しかし、鑑定医が完全責任能力と判断したうち二十一人は検察官が心神喪失・心神耗弱として起訴せず、逆に鑑定医が心神喪失とした八人が起訴されるなど、計百三十九人で両者の判断が食い違っていた。
 検察官が鑑定に従う義務はないが、「その他の不起訴」などを除外した食い違い率は9%で、正式鑑定の2%より高かった。
 人格障害を心神喪失とした鑑定も十四人あった。

 学会員への調査では、簡易鑑定経験者の17%が「結論と異なる刑事処分をされたことがある」、措置入院患者の診療経験者の27%が、「不起訴が適切でないと思ったことがあった」と答えた。

情報は→Yomiuri-On-Line


<2002年7月29日毎日新聞>
判決 氏名不詳の男に有罪 「記憶喪失だが責任能力ある」と

 氏名不詳のまま窃盗罪で起訴された男に対する判決公判が29日、倉敷簡裁であり、武内和夫裁判官は「名前など過去の生活のすべての記憶を喪失しているが、車を運転して逃げており、識別能力をすべて欠いているとは言えない」として、刑事責任能力を限定的に認定し、懲役8月、執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。

 判決によると、男は昨年2月12日深夜、岡山県倉敷市内のコンビニエンスストアの駐車場で、乗用車(時価70万円相当)を盗んで逃げ、逮捕された。取り調べで住所、氏名を特定できず、倉敷区検は「笠岡警察署留置番号6号」として男を起訴した。

 男は30歳前後とみられ、裁判官らの質問に「分からへん」を繰り返し、自分のことを「6(ロク)さん」と呼んでいた。

 弁護側は起訴事実を認めたうえで、刑事責任が問えない心神喪失状態を主張。検察側は「刑事責任を免れるための詐病」としたため精神鑑定され、「一時的に記憶や判断能力を失う解離性障害」との鑑定が出た。武内裁判官は「犯行時は心神耗弱状態だった」とした。弁護側、検察側とも控訴しない方針。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月27日毎日新聞青森>

こころを閉じ込めないで 『病者』たちが問う社会/2 強制入院 

法律が奪う未来
 5年前、青森市の田中暁彦さん(30)は両親の留守中、自宅に放火して強制入院させられた。それまで3日間、幻聴や妄想が続き「寝たら親に襲われる」と一睡もできなかった。自室に火を放った後、タクシーに乗って自首した。
 鍵のかかった閉鎖病棟で、清掃中もベッドから離れることを許されず、強い薬でひたすら眠らされた。症状が落ち着いた約1年後、医師に「親にわだかまりはあるか」と質問され、「ない」と答えると退院できた。
 その後、青森市のNPO「SANNet青森」と出会い、メンバーになった。同じような経験を持つ者同士が「いらいらする時どうするか」「どんな人間関係に悩んだか」など、病気との向き合い方を話し合う場だ。
 「仕事のことや社会復帰ばかり考え、自分の中の病気を排除してきた」という田中さんは、ここで病気と和解して生きていく道もあると知った。現在は役員として、講演や他県の障害者団体との交流に活躍している。
 田中さんの入院は、精神保健福祉法に基づく「措置入院」。2人の精神保健指定医が「自傷他害の恐れがある」と認めると、強制的に入院させられる。措置の解除を決めるのは1人の指定医だ。
 国会で審議中の心神喪失者医療観察法案が現行制度と違うのは、入退院の判断に医師だけでなく裁判官が加わることと、将来も含め「再犯の恐れがなくなる」まで無期限で入院させる点にある。
 裁判所の関与で、医師は措置解除に伴う重圧感が緩和されるように見えるため、青森市の30歳代の精神科医は「医師の負担が軽減される」と、法案を評価する。
 だが、将来も再犯の恐れがないと判断するのは極めて困難だ。法案は、少しでも「危険」と目される人を閉じ込めておく「保安処分」につながる要素をはらんでいる。
 青森市の精神科医院「はなぞのクリニック」の華園寿英院長は「医者は予言者じゃない。大抵の医者は『疑わしきは入れっぱなし』にするしかなくなる」と懸念する。青森大社会学部の永長昌之教授(精神保健福祉)は「『入院しても裁判を受ける権利がある』という声が患者にもある。医療刑務所を充実すべきだ」と指摘する。
 田中さんは、社会に出て自分の病気と和解する道を見つけた。だが、強制入院はその機会を奪う。「病気と格闘していたから、あんなことをした。放火なんてこりごりだ」と今、振り返る。
 「法案が通ったら、彼は退院できなかったかもしれない。措置入院で社会は面倒を免れるかもしれないが、その人の問題は放置されていいのか」。SANNet青森事務局の根本俊雄さん(50)の問いかけに、法案を推進する政府や与党はどう答えるのだろうか。=つづく

情報は→Yahoo! News


<2002年7月26日毎日新聞青森>

こころを閉じ込めないで 『病者』たちが問う社会/1 共同作業所 

復帰拒む世間の壁
 「精神障害者」と呼ばれる人々がいる。その人々が重大な事件を起こしたら無期限で病院に収容するという「心神喪失者医療観察法案」が今、国会で審議中だ。一般には論議が高まっておらず、今秋には成立するかもしれない。「危ない人を病院に入れるのは当然」と思う人も少なくないだろう。だが、あなたはその人々と会ったことがあるだろうか。地域の中で生きようと模索する姿を見たことがあるだろうか。考えてほしい。だれかを閉じ込めることで守られる、私たちの社会こそが問われているということを――。【鈴木英生】

 「世間は、自分がおかしくないと思っている人ばかり。だから冷たい。ここには『なんで失敗したんだ』と怒る人がいない。仲間がいる」
 青森市の共同作業所「ハートフレンド」。40歳代のその女性は、ホタテ養殖のカゴ作りをしながら、そんなことをつぶやいた。
 作業所を出たら、働ける場はなかなかない。仲間の一人、20歳代の男性は以前、ある洋品店に就職したいと思った。だが、相談した友人は言った。「店の人もおめえの病気のこと知ってる。使ってくれねびょん」
 アルバイト先の新聞店で、思い切って障害のことを話した。笑いものにされただけだった。「年を取るごとに選択肢は減って、ここしか来るところがなくなった」とうつむく。
 作業所は93年4月、障害者の家族会が開いた。無報酬に近い条件で働く7人の職員は家族会員。職員の家族で、ここに通所できる状態の人は1人しかいない。それでも「自分が死んだ後、誰が面倒を見るのか」(花田恵美所長)という共通の思いがあるから、必死で維持してきた。本人にとっても、家族にとっても、ここは同じ悩みを持つ仲間と出会える場所でもある。ある職員は「ここで他の人と話して、この病気が何なのか初めて分かった」と話す。
 しかし、作業所の維持は容易ではない。養殖カゴ以外の仕事は見つからず、通所者に払えるのは月にわずか3000円。県と市から年約490万円出ていた補助金も、設立10年目の今年度を最後に打ち切られる。
 県内には共同作業所や授産施設などの「社会復帰施設」が59カ所ある。人口比では全国トップレベルだ。県は今年度約11億円の関連予算も組んでいる。だが、その金だけで「社会復帰」につながるのか。
 青森大の永長昌之教授(精神保健福祉)は「作業所の自立を支援せず、ただ金を与えてきた。市町村が作業所と組んで名産を開発するとか、県が経営のノウハウをアドバイスすることが必要」と指摘する。
 さらに、それ以前の問題がある。「差別がなく、その人に合った職場があれば、ここは要らない」(花田所長)。作業所の中でしか就労を許さない社会の側が「復帰」を拒んでいる。=つづく

情報は→Yahoo! News


<2002年7月26日奈良新聞>

施錠・拘束に初の内規

重症心身障害児病棟「家族の承認得る」 郡山の国立療養所

 大和郡山市小泉町の国立療養所松籟荘(奥田純一郎院長)が、法的根拠を持たずに27年間、重症心身障害児(者)病棟80床を施錠して患者を隔離していることに対し、同病院は「家族の承認を得て施錠・身体拘束する」などの内規を初めて設けたことが分かった。入院者の人権に配慮した対応だが、親権者らに身体拘束を代理承認する権限はなく、外部チェックの体制を伴う法整備が急がれそうだ。

 病床は、重度の知的障害とてんかんなどの行動障害がある18歳から57歳までの男女が入院。昭和50年、精神科病棟から分離されて一般科病棟となり、施錠や患者隔離の法的根拠が失われた。

 療養所の医師ら職員によると、他の重症障害児施設と比べて著しく動きが激しい患者を受け入れており、暴行や器物破損、自傷行為などから、「患者本人および医師、看護師、職員の安全」のため、病床入り口を施錠したり個室を施錠して隔離してきた。

 松籟荘を含む全国8カ所の国立療養所でも、法律によらない施錠や隔離が行われている。

 しかし、新潟県内の精神病院で無意味な身体拘束を受けた患者が死亡した事件が起きたことを機に、8国立療養所は平成12年度から「施錠と隔離」をテーマにした研究班会議を発足させ、統一的な「施錠・隔離マニュアル」の検討を進めている。

 松籟荘も今年4月、障害児病棟の開設以来初めて「家族の承認を得て施錠や身体拘束を行う」という内容の内規を定めていた。

 一方、松籟荘に入院する児童は児童福祉法上、奈良県や大阪府などの府県や政令市の措置となり、法的根拠のない施錠や隔離などの人権問題が「国まかせ」になりがちでよいのか、今後の課題になりそうだ。

 松籟荘・重心病床は最長で27年間入院している人がおり、精神病院から転院を求められて入院する患者が多い。常に満床状態で待機者16人の中には5年以上待つ人もいる。

 加藤佳也・松籟荘精神科医長は「重症心身障害児病棟の施錠・隔離は正しいことではないが、開放処遇は非常に困難な現実だ」と話している。

情報は→奈良新聞


<2002年7月25日毎日新聞>
池田小殺傷事件 大量殺人は84年に思いつく 宅間被告

 大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)の乱入殺傷事件で、殺人罪などに問われている宅間守被告(38)の第12回公判が25日、大阪地裁(川合昌幸裁判長)であり、前回に引き続き、弁護側が宅間被告に本人質問した。宅間被告は、大量殺人を最初に思いついたのは、84年に強姦(ごうかん)事件を起こした際の拘置所内だったことを初めて明らかにした。

 弁護団はこれまで、「宅間被告は過去に統合失調症(精神分裂病)や人格障害などさまざまな診断を受けており、事件当時の精神状態に関し慎重な検討が必要だ」と主張しており、本人の入・通院歴などから事件に至る心境などを質問した。

 弁護団は94年の診療録に宅間被告のことばとして、「大量に人殺しするまでの辛抱」との記載があったことについて質問した。宅間被告は「仕事を失うなどしたら、むちゃくちゃやってやろうと思っていた」と述べ、大量殺人に飛躍する理由を、「自分の人生の幕引きをする時の道連れが欲しかったから」とした。そのうえで「(84年の事件で)逮捕された時、拘置所で(大量殺人を)考えた。大型免許を持っているので、ダンプの会社に面接に行って、(ダンプを)持ち逃げして、大阪・ミナミの商店街に突っ込もうと思ってたが、行動には移さなかった」とした。

 同日午後も引き続き、宅間被告への質問が行われる予定。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月25日毎日新聞>
付属池田小事件 宅間被告の再度の精神鑑定申請へ 弁護団

 大阪教育大付属池田小学校の乱入殺傷事件で殺人罪などに問われている宅間守被告(38)の公判で、弁護団は25日、9月12日の第14回公判で、宅間被告に対する再度の精神鑑定と心理鑑定を申請する方針を明らかにした。再鑑定の申請は「より慎重な判断を求めたい」との理由といい、検察側も申請に同意するとみられる。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月24日毎日新聞>
自殺者統計 経済・生活苦が動機 過去最高の6845人

 昨年の自殺者が3万1042人(前年比915人減)と4年連続で3万人を超えたことが24日、警察庁の集計で分かった。経済・生活苦が動機とみられるのは6845人(同7人増)で、統計を取り始めた78年以降で最も多く、長引く不況の影響を反映している。 

 昨年の自殺者は男性2万2144人、女性8898人。年齢別では60歳以上が1万891人で約35%を占め、50歳代7883人▽40歳代4643人▽30歳代3622人と続き、中高年の割合が多かった。職業別では、無職1万4443人▽サラリーマン、公務員などの被雇用者7307人▽自営業4149人▽主婦・主夫2705人など。

 動機で最も多いのは健康問題の1万5131人で、経済・生活問題6845人▽家庭問題2668人▽勤務問題1756人▽男女問題743人▽学校問題227人と続く。前年より増加したのは、経済・生活問題だけだ。

 経済・生活問題は10年前の91年は1660人だったが、97年には3556人にまで増えた。長引く不況やリストラが深刻化した翌98年に6058人に急増し、その後、漸増を続けている。

 自殺者は98年に3万人を突破し、99年には過去最高の3万3048人に達した。00年からは微減となっているが、3万人台が続いている。 

情報は→Yahoo! News


<2002年7月21日京都新聞>

精神障害者救急医療システム 22日からスタート

 精神障害者の体調の急変に二十四時間体制で対応するため、京都府と京都市が準備を進めてきた「精神科救急医療システム」が、二十二日から府南部地域でスタートする。

 これまで、精神障害者は体調が急変した場合、保健所へ連絡するか、一一九番通報で対応していたが、病院が休診となる夜間や週末は、受け入れ先を確保するのに苦労していた。

 スタートする救急医療システムは、園部町と日吉町、美山町以南の京都市を含む府南部地域が対象。緊急時には、京都市こころの健康増進センター(中京区)に開設する専用電話Tel:075(323)5280へ連絡し、同センターが受け入れ先となる府立洛南病院(宇治市五ケ庄)との連絡や調整を行う。

 専用電話の開設時間は平日が午後五時から翌朝八時半で、土、日曜と祝日は二十四時間対応する。平日の日中は従来通り保健所で相談などを受け付ける。

 同システムは、府北部では昨年四月からスタートしている。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月21日毎日新聞>
放送中止 NHKが「ER6・緊急救命室」2話分を 

 NHKは、19日夜に総合テレビで予定していた海外の人気ドラマ「ER6・緊急救命室」の第13話の放送を急きょ中止し、第15話に差し替えた。26日に予定していた第14話も取りやめ、第16話を放送する。NHKは「精神に障害のある患者が医師を刺すシーンがあり、病気に対する誤解や偏見を助長する恐れがあると判断したため」と説明している。

 中止された2話は、医学生がナイフで刺され死亡、医師も重傷を負い大きなショックを受ける――との内容。放送中の第6シリーズの見せ場で、前週の予告編でも取り上げられていた。19日は番組前に放送予定の変更と、中止する2話のあらすじを簡単にテロップで紹介しただけで、中止した理由の説明はなかった。

 ただ、中止の2話は衛星第2とハイビジョンでは、昨年から今年にかけて計3回放送されていた。NHKは「当時は議論を尽くしていなかった」と説明している。

 「ER」は米ワーナー・ブラザーズ・テレビジョン制作で、救命医療に携わる医師や看護師を描いた社会派医療ドラマ。

情報は→Yahoo! News



<2002年7月20日毎日新聞>

心神喪失者法案 消えぬ問題点 医療、司法も意見二分

揺れる「再犯」予測 課題多い心神喪失者法案

 重大事件を起こしながら心身喪失で不起訴処分などになった精神障害者に、裁判所が強制入院や通院を命じる「心神喪失者医療観察法案」をめぐり、国会審議を通じて三つの課題が鮮明になった。法案は継続審議となる見通しだが、政府・与党は、次期国会で成立させたい構えだ。一方、民主、社民や法案に反対する市民らは、廃案に向け活発な動きを続けている。審議は第2ラウンドを迎える。【精神医療取材班】

医師、刑法学者も二分

◆強制入院◆

 「事件を起こした患者は国の予算、国の責任でみるべきだ。非常に宿題の多い法律だが、今後、育てればいい」

 9日の衆院法務、厚生労働両委員会の連合審査会。与党側の参考人の日本精神病院協会の仙波恒雄会長は、同法の一日も早い成立を強く求めた。

 法案は、心神喪失で刑事責任を問えない精神障害者らに「再犯の恐れ」がある場合、医師と裁判官の判断で、強制治療(入院、通院)を受けさせるというものだ。本当に「再犯の恐れ」が判断できるのかが、審議の最大の争点になった。

 9日の審査会で、与党側の参考人の医師と刑法学者は「『再犯の恐れ』の判定は、現在の措置入院で必要とされる『自傷他害の恐れ』の判断と同じ。既にできているのだから不可能ではない」と繰り返した。

 これに対し、野党側の参考人は「『自傷他害の恐れ』は急性期の患者について、現在の症状から近い将来に病状が悪化するかどうかの判断。『再犯の恐れ』はもっと遠い将来のことで、全く異なる」と反論した。

 刑務所での勤務経験のある中島直医師は英米の研究を根拠に「10回に6回は間違う」という試算を発表し、不要な入院を強制する恐れを強調した。坂口力厚労相が「『再犯の恐れ』の判断は可能」とする根拠としたオックスフォードの精神医学教科書についても、「多くの患者を誤って危険だと判断することになる」などの記載から、むしろ予測の困難さを検討したものであると指摘した。

 司法関係者の意見も、真っ二つに分かれた。与党の参考人で京都学園大教授の川本哲郎氏は「裁判官が『再犯の恐れ』を判断できないというなら、研修をすればいい」と主張。野党側の関東学院大の足立昌勝教授は「司法機関が入院を決定すれば保安処分にほかならない。50年後に精神障害者の人たちに謝罪しなければならないかもしれない」と、法案成立に警鐘を鳴らした。

 審議では、与党側委員からも「こんなにも意見が違うのか」と、戸惑いの声が上がった。民主党は地方公聴会を要求。19日、法案を付託されている衆院法務委員会の理事懇談会で、園田博之委員長(自民)は「このまま採決はできない」と話し、次期委員会の日程すら決められなかった。

◆専門治療◆

「人格障害」含む危険

 同法案は「再犯の恐れ」があると判断された精神障害者を「指定医療機関で治療する」と規定。事件を起こしていない精神障害者とは異なる「特別な治療が必要」との考えだ。一方、廃案派は「事件の有無にかかわらず、その人にあった治療が肝要。精神医療全体のレベルアップこそ急務」と主張している。

 11日、衆院第2議員会館で開かれた日弁連のシンポジウム。途中、出席していた水島広子委員(民主)のもとに、厚生労働省の職員が1枚の紙を届けた。水島委員が要求していた同省の指定医療機関での専門治療プログラムの概要だった。

 「暴力の自制能力向上」「内省させ、被害者への共感をはぐくむ」……。出席した医師から「これは(心神喪失より)人格障害の人に対して行うべき医療ではないか」などの疑問が相次いだ。

 精神医療の対象の中でも人格障害は、人間関係における性格の偏りが大きいが、善悪を判断する能力はあるとされる。一方、心神喪失と判断された人は、強い妄想に支配されて事件を起こし、プログラムの「内省」の前提になる犯罪行為を認識できないこともある。

 人格障害と判断された場合、起訴されるのが通常だ。しかし、同法案の医療の中身が見えてきたことで、責任能力が微妙な事件について無罪判決を避けるため、起訴よりも不起訴にして強制入院させる方法を安易に選ぶことへの懸念が強まった。

 北海道立精神保健福祉センターの伊藤哲寛所長は「人格障害の人までも対象にしているとしか思えない」と話した。

政府は見直しに消極的

◆鑑定制度◆

 法案論議の発端は、昨年6月の大阪教育大付属池田小事件だった。児童8人を殺害した宅間守被告(38)に精神科への入通院歴があり、以前に起こした事件で起訴を免れていたことなどから、小泉純一郎首相が「法的不備をただす」と発言した。

 「『戦場におるみたい』とか、幻覚幻聴はないのにあるように言うた。頭おかしい感じにしとけば、しょうもない事件やったら(検察は起訴より)入院を選びよると感じた」

 7月11日、大阪地裁。宅間被告が過去に起こした薬物混入事件で簡易鑑定を受けた時のことを証言した。この事件で捜査当局は宅間被告を起訴猶予処分としていた。本人尋問を通じ、宅間被告が捜査当局の簡易鑑定制度を悪用していた実態が明確になった。

 起訴前の鑑定については、自民党案にも「安易に不起訴にされているという疑念がある」と指摘されており、国会論議でも与野党双方から追及があった。しかし森山真弓法相は「鑑定に重大な問題があるとは考えていない」と、見直しに消極的な答弁をした。

 論議の原点ともいえる鑑定制度の問題点は、置き去りにされたままだ。

◆ことば◆

「心神喪失者医療観察法案」

 心神喪失者状態で不起訴・無罪などとされた精神障害者の再犯を防ぎ、治療と社会復帰を促進するのが目的。裁判官と精神科医の2人とも「再犯の恐れ」があると判断した場合、裁判所が入院、通院を命じる。入院先は国公立病院。退院も同様に裁判官と医師の判断で、裁判所が決定する。

情報は→Mainichi INTERACTIVE


<2002年7月20日毎日新聞>
精神保健法 「統合失調症」に変更するよう労働省に要望

 日本精神神経学会は20日、理事会を開き、「精神分裂病」という表記を「統合失調症」に変更するよう、厚生労働省に法改正を要望することを決定。「統合失調症」が公文書でも使用できるようにするためで、他の医学分野でもこの名称が使用されるよう、関係学会に協力を求めていく方針を決めた。23日に要望書を提出する。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月19日毎日新聞>
精神医療 「患者隔離より医療充実を」 東京でシンポジウム

 政府の心神喪失者医療観察法案に反対し、精神医療の充実を求めて結成された「超党派・市民と議員の会」の第3回シンポジウムが19日、東京都千代田区の参院議員会館で開かれた。統合失調症(精神分裂病)で心神喪失状態になった息子に夫を殺された京都府の女性(58)が、重大事件を起こした患者を隔離するよりも精神医療を充実させることが大切だと訴えた。

 この女性の息子は高校卒業後に発病し、90年、自宅で父親を包丁で刺し殺した。心神喪失で不起訴となって府内の病院に措置入院となった。

 事件前、息子の様子がおかしかったため、入院させてくれるよう頼んだが、病院側から「空きベッドがない」と断られた。措置入院後にも息子は病院の5階から飛び降りて重傷を負い、女性は精神医療の充実の必要性を痛感したという。「政府の法案は患者を隔離するだけでかえって、病気を悪化させかねない。国は、最初の事件をどう防ぐかをもっと考えてほしい」と話した。 【精神医療取材班】

情報は→Yahoo! News


<2002年7月19日毎日新聞>

和歌浦病院で入院患者殴られ死亡 偶発か構造的問題か 県、立ち入り調査へ/和歌山

 医療法人旭会和歌浦病院(和歌山市和歌浦東3)で、統合失調症(精神分裂病)で入院中の男性患者(52)が看護助手に殴られ、死亡した事件で、県健康対策課は19日、精神保健福祉法に基づき、患者の処遇が適切に行われているかどうか同病院を立ち入り調査する。
 事件は、同病院勤務の奥野正夫容疑者(45)が、17日午前6時15分ごろ、患者が指示を守らないとして顔を殴打、転倒させて死亡させた疑い。和歌山西署は同日夜、奥野容疑者を傷害致死の疑いで逮捕した。
 19日は、精神保健指定医や弁護士など精神医療審査会のメンバーらが立ち会い管理体制も調査。不備があれば改善命令を出す。同課は「偶発的な事件なのか、構造的・体質的なものなのか見極めたい」と話している。また、県は18日、県内の入院できる13精神病院の管理者あてに「入院患者の適正な処遇の確保」を求める通知を出した。
 一方、和歌浦病院の篠田博之院長は18日朝、報道陣の取材に応じた。警察への通報が、事件発生から約14時間もかかったことについて、「亡くなった患者は過去に何度か自分で転倒しており、(自分で倒れたという)職員の話を信じてしまった」と話し、事件隠ぺいの意図はなかったことを強調した。奥野容疑者は勤務ぶりはまじめで、過去に患者に対する暴力事件などは起こしていないという。 

情報は→Yahoo! News


<2002年7月19日朝日放送>
和歌山 看護助手による者傷害致死事件で立入検査

和歌山市の病院でおととい、看護助手が入院患者を殴って死なせたとして逮捕される事件があり、和歌山県がきょう、病院の立ち入り検査に乗り出しました。

立ち入り検査を受けたのは、和歌山市にある精神病院の「和歌浦病院」です。事件はおととい、病院の看護助手である奥野正夫容疑者(45)が、指示を守らない患者の顔を殴って死なせたとして、傷害致死容疑で逮捕されたものです。けさの立ち入り検査には、精神医療に詳しい医師や弁護士、県職員らが参加し、事件の原因が、看護助手の個人的な資質よるものか、病院の組織運営によるものかを見極める方針です。事件を受けて、県はきのう、病院内での態勢の再点検や、入院患者の適正な処遇などを求める通知を13の病院に出しています。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月18日時事通信>
入院患者殴り死なす 看護助手を逮捕 和歌山西署

 和歌山市の医療法人旭会和歌浦病院で、看護助手奥野正夫容疑者(45)=同市坂田=が精神科に入院していた男性患者(52)の顔を殴り、患者が転倒して死亡していたことが18日、分かった。和歌山西署は同日までに、傷害致死の疑いで同容疑者を逮捕した。奥野容疑者は「指導に従わなかったので殴った」と供述しているという。
 調べによると、男性患者は統合失調症(精神分裂病)で同病院精神科に入院していた。17日午前6時15分ごろ、男性が別の患者の歯ブラシなどを持っていたのを奥野容疑者が見つけ、返すように注意したが、従わなかったため、男性の顔を殴った。男性は転倒して頭を打ち、間もなく死亡した。 

情報は→Yahoo! News


<2002年7月18日読売新聞

患者を殴り死なす 容疑の看護助手逮捕

 精神病院内で入院患者を殴って死なせたとして、和歌山西署は十七日夜、和歌山市和歌浦東、和歌浦病院の看護助手、奥野正夫容疑者(45)(同市坂田)を傷害致死の疑いで逮捕した。病院側は当初、奥野容疑者からの「患者が倒れている」との報告をうのみにし、殴ったことが判明後も県にいったん相談するなど、同署への届け出は死亡から約十三時間もたってからだった。
 調べでは、奥野容疑者は十七日午前六時十五分ごろ、精神科の病棟一階廊下で統合失調症(精神分裂病)で入院中の男性患者(52)の顔を殴って転倒させ、同七時ころ、脳挫傷で死亡させた疑い。
 奥野容疑者は「患者の態度を注意したが、言い返され、かっとなった」と容疑を認めている。


<2002年7月18日朝日新聞

入院患者をなぐって死なせた疑い 和歌山・看護助手逮捕

 精神病院に入院中の男性患者(52)を殴って死亡させたとして、和歌山西署は17日夜、和歌山市和歌浦東3丁目、医療法人旭会「和歌浦病院」(篠田博之院長)の看護助手奥野正夫容疑者(45)=同市坂田=を傷害致死の疑いで逮捕した。

 調べによると、奥野容疑者は同日午前6時15分ごろ、病院1階の廊下で患者が注意に従わないことに腹を立て平手で1回ほおを殴り、患者を転倒させ、死亡させた疑い。患者は倒れた際、頭を強く打ったとみられる。

 同容疑者は患者が別の患者の歯ブラシなどを持ち出すなどしたため、注意していたという。
 同病院は精神科と神経科と心療内科があり、患者は統合失調症で入院、治療を受けていたという。


<2002年7月18日読売新聞

准看、通信教育で正看資格 厚労省導入方針

通信教育で正看に、准看の資格取得へ厚労省方針

 厚生労働省は17日までに、准看護師(准看)が看護師(正看)になるための養成課程に、大学や短大などの通信教育を導入する方針を固めた。医療現場で働きながら無理なく資格を取得できるようにするもので、2004年度にもスタートさせる。

 准看は、中学卒業以上を対象にした都道府県の資格で、全国で約42万人。仕事の実態は国家資格である正看とほとんど変わらない一方で、待遇格差などの問題が指摘されており、同省は正看の資格取得を促進する方針を打ち出した。

 しかし、現状では看護師学校養成所に2年間(定時制は3年)通った上で国家試験に合格する必要があり、医療機関に勤務している准看には負担が大きいため、改善を求める声が出ていた。

 新方式は、2年間の学習期間は変わらないものの、通学が必要ない通信課程での受講が可能になるうえ、一定の就業経験(10年以上など)があるベテランには、実習を免除することも検討している。今後、学校関係者に通信講座の開講を働きかけるとともに、プログラムの開発を支援する。


<2002年7月17日朝日新聞>

「精神分裂病」を「統合失調症」に偏見解消の一歩
上がる治療の効果/正しい知識普及を

 「精神分裂病」を「統合失調症」に。日本精神神経学会(佐藤光源理事長)の理事会と評議員会は、8月の総会での正式決定を待たずに新しい病名の使用を会員に呼びかけることを決め、日本新聞協会にも要請した。これを受けて朝日新聞社は表記を変更することにした。むろん、呼び名を変先ただけで偏見が消えるわけではない。呼称変更を、精神疾患に対する偏見解消の第一歩にしなければならない。(科学医療部・和田公一)

 統合失調症は、脳(神経)の働きが活発になりすぎ、車に例えれば、エンジンがオーバーヒートした状態といわれる。16〜40歳くらいの比較的若いころに発症し、その割合は成人100人に1人弱とされる。地域や性別に関係なく、「だれにでも起きうる」病気だ。
 状態が悪いときに体験する幻視や幻聴を、コンピューター・グラフィヅクスと音声で疑似体験する装置がある。
 米国の総合医療関連用品メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソンが精神科医、看護師、患者の協力でつくり、日本法人のヤンセンファーマが翻訳。医師、看護師の研修や家族会の勉強会などに貸し出している。
 〈診察室。医者が「最近、調子はどうですか」と話しかけてくる。すると突然、頭の上や背後から数人の声が聞こえ出す。「こいつに会うのは時問の無駄だ」「とんでもない医者だ」
 医師は続ける。「週末は何をしていたんですか」。また声がする。「病院に一生監禁するつもりだぞ」。やがて医師の顔がゆがんだり、目が三つになったりする〉
 統合失調症を薬でコントロールしながら仕事をしているKさん(27)は「現実の声が遠のき、幻聴の方がリアルに思える。装置による疑似体験は5分で終わりですが、実際には四六時中聞こえる。私はその状態が2年続いた。苦しさは想像できるでしょ」と話す。

完全回復も増

 ドイツの精神医学者エミル・クレペリンが「早発性痴呆」と呼び、スイスのオイゲン・ブロイラーが「スキゾフレニー疾患群」と名付け、その概念を確立したのが1911年。長く「治らない」と思われていた統合失調症だが、向精神薬の登場で60年代以降、治療は大きく変化した。
 東大と金沢大が戦前から戦後にかけ、発病から3年以上たった患者の治療効果を調査している。
 それによると、38年に74%あった「効果なし」が、83年は18%と大幅に減少。「完全に回復」は17%から26%への増加にとどまるものの、「軽度の症状が残っている」「幻覚、妄想などの症状はほとんどなくなった」割合は、それぞれ5%から35%、4%から21%と著しく増えた。
 世界保健機関(WHO)も昨年、「患者の約3分の1は完全に症状が快復し社会復帰するとともに、初めて発病した患者のほぼ半数が、完全かつ永続的な快復が期待できる」と報告している。

一過性でなく

 こうした状況が、「精神分裂病」という訳語の使用に大きな抵抗感をもたらした。「不治の病」と思われていた時代を反映しているうえに、その訳語には人格そのものを否定するような響きがあり、患者や家族に苦痛を与えている。医学的に「分裂」が病気の中心的な概念ではなくなってきたこともあり、呼称変更の流れが加速した。
 新しい病名は、原語をカタカナ表記した「スキゾフレニア」、人名にちなんだ「クレペリン・ブロイラー症候群」、そして原語を翻訳し直した「統合失調症」の三つから選ばれた。
 日本語で、意味を理解しやすいことが決め手だったが、家族会の人からは「羽毛布団のような名称を期待していたら、出てきたものはせんべい布団だった」という辛辣な感想が出た。
 全国精神障害者家族会連合会の桶谷肇事務局長は「病名が変わったという事実だけを伝えたのでは意味がない。なぜ変えなけれぱならないのか、偏見によって患者や家族がいかに苦しんできたかということまで踏み込んで説明しなけれはならない」と訴える。
 世界精神医学会(WPA)は胎年以来約20カ国で偏見解消に向けた運動を展開している。正しい知識を普及させようと、患者が学校や企業の研修の場に出かける試みを実施している国もある。
 96年から99年までWPA会長を務めたジュネーブ大精神医学科教授のノーマン・サルトリウス氏は「偏見を打破する活動は一過性のキャンペーンであってはならない。患者や家族、精神医療関係者が連携を図りながら長期にわたって取り組んでいくべき運動だ。病名変更は、日本でのそうした運動の第一歩であってほしい」と語っている。

1896 クレペリンが統合失調症にあたる「早発性痴呆」の概念を確立
1911 ブロイラーが「スキゾフレニー疾患群」を提唱
1913 日本にブロイラーの概念が紹介される
1919 初の邦訳「精神離背症」
1933 不統一だった訳語の統一が提唱される
1937 日本精神神経学会用語統一委員会が試案「(精神)分裂病」を提出
1959 同学会精神医学統用語集に「精神分裂病(精神分裂症)」
1970 同学会精神医学用語集に「(精神)分裂病、(精神)分裂症」
1989 同「(精神)分裂病」
1993 全家連が呼称変更を求める意見書
1995 同学会に「呼称を検討する小委員会」設置
2000 同学会理事会で呼称変更の方針了承。同小委員会は「呼称を変更する委員会」に
2001 同委員会が三つの呼称を提案
2002 学会理事会、評議員会が「統合失調症」を了承。8月の総会で正式決定へ



<2002年7月17日毎日新聞>

社会的ひきこもり、自助グループ創設へ 県精神保健センターが家族教室 /大分

 ◇一人で悩まず参加しよう−−きょうから
 県精神保健福祉センター(大分市玉沢)は、精神疾患が原因でない「社会的ひきこもり」の対策事業に今年度から取り組む。第1弾として、ひきこもり家族教室を17日から3回にわけて開く。
 センターによると、昨年度、ひきこもり(不登校を伴うものを含む)に関する来所相談が延べ123件あった。長期に及んだり、家族全体がひきこもりがちになったりという複雑なケースが目立ったという。
 教室は、高校生以上の年齢の社会的ひきこもり者を抱える家族が対象。17日午後1時から同センターで、ひきこもりの基礎知識を学んだり、家族同士で交流する。第2回の8月28日、第3回の11月13日には、体験報告や意見交換なども予定している。仲間意識を高め、自助グループの創設を目的としている。
 県内のひきこもり者数や実態は不明。担当者は「自分たちだけで悩まず、まず参加してみて」と話す。申し込みは同センター097・541・6290へ。無料。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月17日(水)20時15分

424人のヒマリオン 県弁護士の活動 鎌田哲夫弁護士に聞く /兵庫

高齢者・障害者総合支援センター・「たんぽぽ」運営委員長、鎌田哲夫弁護士に聞く
 介護保険制度が導入されるなど、社会福祉分野は大きな変革期にある。黙っていても行政がやってくれる「措置」の時代から、自ら選択・決定する「契約」の時代になった。契約に慣れていない高齢者の不安は尽きない。「財産はきちんと管理できる?」「介護認定は的確なの?」「ぼけてしまったらどうしよう」……。障害者の権利擁護の課題も多い。昨年4月に発足した高齢者・障害者総合支援センター「たんぽぽ」について、同センター運営委員長の鎌田哲夫弁護士(54)に、話を聞いた。 【藤田文亮】
――センターの役割は?
 高齢者や障害者に特有の問題について、あらゆる法律的な相談に応じ、適切な機関の紹介なども行います。弁護士はこれまで、社会福祉分野にかかわることが少なかった。しかし、政府の社会福祉基礎構造改革で「契約」の意識が進みつつあるなか、求められる役割が増えた弁護士も勉強している最中です。
――相談内容は?
 主に四つ。従来からある「財産管理支援」。豊田商事事件など高齢者をターゲットにした悪徳商法を契機に、高齢者の権利保護の柱となりました。次に「介護、福祉支援」。不的確な介護認定や、介護サービスへの不満などのトラブルを解消します。「成年後見支援」は、信頼できる後見人を定めるための支援をします。そして、「精神保健支援」。精神病院での処遇改善や退院が適切に行われるよう、入院者らの相談に応じます。
――高齢者の財産管理の問題点は?
 これまで「財産管理」というと、悪徳商法などから高齢者の資産を守ることがほとんどすべてと思われていました。でもそれは少し違う。高齢者のより良い生活のためには、財産保全だけでなく、高齢者本人のためになるお金の使い方が重要。子どもらの思惑や、本人の子どもへの気兼ねなどで、自由な活動を阻害されるのは、高齢者の人権を侵すことになると考えます。
発足1年、低い知名度“中間層”の相談伸びず
――相談件数はどのくらい?
 昨年度47件。発足1年なので知名度が低いこともあるが、それでも少ない。自己決定できる人は支援が不要で、逆にまったく自己決定できない人には行政などの援助がある。問題は、その中間のグレーゾーンの人で、この層が最も多いはず。どうしたらいいのか迷うことが最も多いのもこの層。弁護士のニーズも多いはずなのに、実際の相談件数がそれに追いついてこない。
――利用者への一言を
 大きな変革期であることが、市民だけでなく、社会全体がまだ理解できていないと感じる。これまでは、「最後は行政に頼ればよい」で何とかなったが、これからは、それがますます難しい時代になる。「たんぽぽ」に声を掛けることで、自己決定の一助としてほしい。


来館か自宅訪問で
 県弁護士会館(神戸市中央区)での来館相談と、自宅(原則、阪神〜姫路間)への訪問相談がある。来館相談日は第2、4月曜日で、相談費用は約40分で7000円。訪問相談の費用は1万円と交通費。いずれも電話予約が必要。予約や問い合わせは同センター(078・341・0550)。

情報は→Yahoo! News



山口県立病院の女性患者不審死問題/厚労省が改善命令
<2002年7月15日大阪読売>

 山口県宇部市の県立精神病院「静和荘」で一昨年五月、入院中の女性(当時二十七歳)が不審死した問題に関連し、厚生労働省が精神保健福祉法に基づく九項目の改善命令を出していたことがわかった。改善命令は人権上、重大な問題がある場合に出されるもので、全国で七例目、国公立病院では二例目。他の患者の処遇に問題事例が目立つことも指摘している。
 女性は九九年十月、家族の同意で強制入院し、翌年五月、閉鎖病棟の個室で死亡。主治医は明確な根拠がないのに、死因を「窒息」と死亡診断書に記載、警察には届けなかった。両親は入院から半年間、面会を拒否され、容体急変で駆けつけた時も入室を拒まれた。
 改善命令は今年三月二十六日付。「死亡に至る経過に重大な問題は確認されなかった」としながら、「面会制限は短期間で足りたと思われる。主治医の認識が足りず、カルテへの記載など適正な手続きもとっていなかった」と批判した。
 他の患者についても▽任意入院なのに退院に応じない▽保護室隔離や身体拘束をした理由が不明▽身体拘束中なのに一日一回しか診察がない、と問題点を列挙。食堂の配ぜんや掃除を当番で患者にさせる使役労働などにも改善を求めた。
 女性の死後、父親は真相解明と医療内容の改善を要求したが、県医務課は「問題ない」と主張。同省の要請で県健康増進課が調査に入り、二月八日に面会制限などの改善を命じた。しかし同省は「県立病院を県が調べるだけでは客観性に欠ける」と同十五日に直接立ち入り調査していた。
 女性の主治医だった今泉潤一副院長は「国の指摘に応えて改善している」、県医務課は「通常でない患者死亡は、今後すべて警察へ届ける」としている。

<関連記事>

<2001年12月31日大阪読売>

入院女性“不審死”届けず 山口の県立精神病院 根拠なく死因「窒息」と診断

 山口県宇部市の県立精神病院「静和荘」で昨年五月、入院中の女性(当時二十七歳)が個室内で急死し、主治医の副院長が明確な根拠がないのに死因を「窒息」としたうえ、医師法に基づく警察への届け出を怠っていたことがわかった。副院長は「死因の診断に自信はなく、(解剖は)しのびなかった。今考えれば届けるべきで、反省している」などと言っている。
 病院の説明によると、女性は一九九九年十月、家族の同意で強制入院。最初の一か月余りは保護室に隔離され、その後は同じ閉鎖病棟内の個室にいた。
 亡くなった日は午後四時半すぎ、心肺停止状態でベッドにうつぶせに倒れているのを看護婦が発見。蘇生(そせい)を試みたが回復せず、五時二十分に死亡と判断した。
 女性の両親は五時前に駆けつけたが入室を拒まれ、会えたのは死後処置を終えた後の七時すぎだった。副院長は死亡診断書に直接死因を「窒息」と記載。その原因は「精神分裂病による昏迷(こんめい)状態」で「水のような吐物を吸引」とした。死因の分類欄は「不慮の外因死」にマルをつけた。
 読売新聞の取材に副院長は、窒息の根拠を「(皮膚が青くなる)チアノーゼがみられた」、吐物吸引の根拠は「人工呼吸の時、肺でゴボゴボと音がしたから」と説明したが、口内にも吐いた跡はなかったという。
 医師法は、異状死体を診た医師に二十四時間以内の届け出を義務づけ、怠ると罰金刑の対象。厚生労働省は「外因死やその疑いがあれば届け出対象。死因が不明確なら幅広く考えるべきだ」としている。
 日本法医学会理事長の塩野寛・旭川医大教授の話「当然届けるべき異状死だ。若い人が水を飲んで死ぬとは思えないし、溺死(できし)でも肺で音はしない。死因は不可解と言うほかない」

<2002年1月13日大阪読売>

女性不審死、山口の精神病院 両親の面会を半年間拒否 死亡後カルテも開示せず

 山口県立精神病院「静和荘」(宇部市)で一昨年五月、入院中の女性(当時二十七歳)が不審死した問題で、女性の両親が入院から半年間も面会を拒否されていたことがわかった。家族の同意に基づく強制入院(医療保護入院)だったが、病院側は死亡後のカルテ開示も「県の方針で遺族は対象外」と拒否していた。
 女性は九九年十月に入院。最初の一か月は保護室に隔離され、「動物じゃないからオリに閉じこめないで」と連日訴えていた。
 両親は週一―三回、病院を訪ねて面会を希望。しかし主治医の副院長は、女性が病室に移った後も「もう少し様子を見てから」と渋り続けた。
 翌年四月の初面会で女性は両親に抱きつき、手を離さなかったが、一か月後に急死した。カルテは閲覧に限って一日だけ応じた。
 父親は「治療を受けさせる責任を家族に負わせながら納得できない」と閉鎖性を批判。副院長は「他の患者と接した時の病状が不安で隔離が長引いた。面会は強く禁止する気はなかったが、ずるずる遅れて反省している」と話している。


<2002年7月12日毎日新聞>

近畿圏ニュース カメラマン、故岡村昭彦さんの作品展 18日から大津・滋賀里病院

 ベトナム戦争の写真などで知られるカメラマン、故・岡村昭彦氏の作品を集めた写真展「精神科病棟開放・こころの豊かさを求めて――フォトグラファー&ジャーナリスト岡村昭彦展」(毎日新聞大津支局など後援)が18〜20日、大津市滋賀里の滋賀里病院療養病棟で開かれる。栗本藤基院長が、「心の傷ついた人が癒やされる環境を作るため、岡村氏の作品に触れ、精神医療への理解を深めてもらおう」と企画した。
 岡村氏は1929年東京生まれ。85年に死去するまで、ベトナム戦争のほか、人間の生と命をライフワークに、世界各地のホスピスなどで取材し、作品を残した。病棟ホールや廊下に、戦争と子どもをテーマにした作品など百数十点を展示。精神医療にも影響を与えた岡村氏の思想を紹介する。 

情報は→Yahoo! News


「心神喪失者医療観察保護法案」に反対します 衆議院議員 川田えつこ(2002年7月5日 )


『これ以上放置できない、日本の精神医療・福祉の現状 ちょっと待った、新処遇法案!』No.3

主催・精神医療福祉の充実を求める市民と超党派議員の会  

7月19日 午後3時〜5時 参議院議員会館 1階

★『現場の声よ、とどけ』 ( 一人20分〜30分)


(1)現場の精神医療をみつめてきた患者の声
        「信頼できる治療関係とは」
(2)事件の家族となった方の声
        「わたしの体験から思っていること」
(3)精神科救急病棟の現場から
        「わたしの医療現場で行なっていること」
(4)精神科ソーシャルワーカー
        「地域での退院生活支援の中から」

    発題者・森ちさとさん(京都)
        平田豊明さん(千葉)
        三橋良子さん(埼玉)ほか
        

注:森ちさとさんは、「精神障害者」に対する特別立法について考える緊急市民集会(京都弁護士会主催)で(2002年4月6日)発言されています。森さんは約10年ほど前に、精神病の息子さんが心神喪失状態で、父親を殺害してしまったという大変な経験をなさいました。その結果、森さんは、被害者の妻であり、加害者の母という立場におられます。こういった公の場で、発言をなさるまでには、いろいろな思いがあったことだと思います。

平田豊明さんは日本の精神科救急のパイオニアである千葉県の精神科センターの医師です。


7・18国会デモのご案内
・保安処分新設を許さない
・すべての精神障害者差別立法を許さない
・予防拘禁法案を廃案へ

日時 7・18(木)18時から集会 19時から国会デモ
   国会デモからの参加も歓迎します。
場所 星陵会館(千代田区永田町2−16−2 でんわ03-3581-5650
   地下鉄永田町駅(6番出口)国会議事堂駅(5番出口)
   下車徒歩5分日比谷高校裏
主催 予防拘禁法を廃案へ! 6.23集会実行委員会
連絡先 陽和病院労働組合 03-3924-6646
    救援連絡センター 03-3924-6646
呼びかけ人
足立 昌勝(関東学院教授)、
市野川 容孝(社会学者)、
大賀 達雄(目黒精神保健を考える会)、
岡田 靖雄(精神科医)、
高山 俊吉(弁護士)、
多田 道夫(「処遇困難者専門病棟」新設阻止共闘会議)、
内藤 隆(弁護士)、
中島 直(全国精神医療従事者連絡会議事務局)、
針生 一郎(評論家)、
森 泰一郎(全障連関東ブロック)、
龍眼(陽和病院患者協会会員)


2002年7月18日京都でハンスト

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」

の国会審議に抗議、廃案を求めてハンストを決行します !


 

 今国会に上程されている「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」は現在衆議院法務委員会で審議されていますが、近く採決がなされようとしています。私たちは政府与党案についても、又、民主党案についても、ともに賛同できません。両案ともに精神しょうがい者の人権を奪い、特定施設(病院)への長期拘禁・隔離を目論むものであり、まさに精神しょうがい者に対する人権侵害法であると強く抗議します。


 私たちは5月26日に約80人の参加者とともに京都の地(洛陽教会)で抗議集会を開き、参加者一同の抗議文を採択し、各関係団体に送付しました。抗議集会後、京都地裁前まで抗議デモを行ない市民にも法案廃止を呼び掛けました。
 しかしながら、法務委員会での国会審議を見ていますと、精神しょうがい者が社会のなかで差別と偏見に日々苦悩している現実や、医療と福祉の貧困のなかで命と向き合いながら葛藤して生きている実態を充分に認識したうえで審議が進められているとはとうてい思われません。かつて、今も社会防衛を目的として精神しょうがい者が病院に隔離・拘禁させられ、その医療現場においてどれほど多くの病者が命を奪われていったかわかりません。精神しょうがい者の人権を守り、社会で共に生きることを願う当事者や市民の声を無視して、早急に法案を成立させようとすることは絶対に許せません。私たちは「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の法案に強く抗議し、ハンスト行動をもって法案廃止を要求し、みなさんに賛同と支援をお願いします。

決行日   2002年7月18日(木)午後5時より19日(金)午後5時迄の24時間
決行場所  めぐみホーム 京都市伏見区銀座1丁目360

ハンスト決行者&支援者募集!
ハンスト決行の趣旨に賛同して、ハンストを実施してくださる人を求めています。さまざまな都合で、めぐみホームで決行できなくとも、自宅や職場でハンストを決行してくださる人も募っています。「ハンスト決行者の抗議声明」に名前をつらねてください。
 また、ハンスト決行中に大手筋商店街において、ビラまきも実施します。抗議行動に支援してくださる方を求めています。当日、めぐみホームに来てくださっても結構ですが、できれば前もって主催団体の連絡先にファックスでお知らせください。

ハンスト突入集会 7月18日(木)午後7時 めぐみホームにて

主催団体:京都精神しょうがい者の人権を守る会
TEL&FAX 075−605−4210


7月11日、大阪府へ向けた「障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議」の総決起集会とデモ行進があります。そこで、ぼちぼちクラブで、3月の国会前すわりこみ抗議行動の際に使った横断幕をもって、大阪市立中央青年センター前を午後4時に出発し、大阪府庁前までデモ行進に参加することにしました。午後5時半頃解散の予定です。
 国や各自治体で新たな10ケ年計画が策定される重要な年のオールラウンド交渉(住宅・作業所・自立支援・労働・教育など)にむけた集会が午後1時〜。森之宮と難波宮跡の中間の場所です。

7月22日(月)午後1時30分〜4時30分


 自立生活支援センター・ピア大阪(東住吉区南田辺・早川福祉会館)の2002年度第1回人権講座で、『心身喪失者医療監察法案について』の講演会(学習会)があります。
 講師は、北野さん,池田直樹さん,など4名です。
 近くの方で参加できそうな方は、どうぞ、お待ちしています。(参加費用は無料です。)




<2002年7月13 日産経新聞>
16年末まで少年院収容 神戸児童殺傷家裁決定 加害者、20歳に

 神戸家裁は十二日、平成九年の連続児童殺傷事件で少年院に送致した加害者の元少年(二〇)=犯行当時(一四)=の収容を平成十六年十二月三十一日まで継続する決定をした。審判を開いて元少年に収容継続を告知し、決定要旨を公表した。

 井垣康弘裁判官は「仮退院後の保護観察期間も合わせて、成人になって二年半は継続して少年院に収容するのが相当」との決定理由を示し、少年院在院中から贖罪(しょくざい)行動を開始させる方針も明らかにした。こうした方針や決定の詳細な公表は異例。当初の五年半の更生プログラムでは、収容は来年四月までだったが、現在収容中の中等少年院が継続を申請していた。

 決定要旨などによると元少年は昨年後半から中等少年院で、出院準備教育課程に編入。被害者への謝罪や贖罪の気持ちを持つようになり、集団生活で対人関係のスキルを学んでいる。しかし、仮退院すれば心理的に大混乱を来し、不測の事態を引き起こす不安があるとした。このため収容を継続して将来の就労先や精神科医などとの信頼関係構築や、両親との宿泊訓練などによる親子関係の調整などが必要という。

 少年院法では、中等少年院収容者はおおむね十六歳以上二十歳未満。今月二十歳になった元少年の収容を継続するには少年院長が申請し、少年院に送致した家裁の決定が必要とされる。

「仮退院なら大混乱」

 「仮退院すれば大混乱を来す不安がある」−。神戸家裁が十二日、成人後も少年院収容の継続を決めた連続児童殺傷事件の加害者の元少年(二〇)。家裁が公表した処分決定要旨からは、平成九年の入院から矯正教育を受けてきたものの、現在も社会への適応に不安がある現状が浮かび上がる。

 要旨によると、元少年は長期間の処遇計画のうち最終段階の出院準備教育課程に編入され、経過は今のところ順調。現在は集団生活にとけ込み、対人関係のスキルを具体的に学んでいる。

 しかし、これらは少年院での経験で、仮退院すれば多方面からの刺激的な情報にさらされることは必至であると家裁は指摘している。

 一方、審判時に問題となった精神疾患については、現在まで兆候がなく、反社会的価値観、性的サディズムについても明らかに改善。今後は、熟達した精神科医により、本人の内面に深く分け入ったアプローチを行い、少年院在院中に確定判断をなす必要があるとしている。

 母子関係については、少年院在院中から母子に対するカウンセリングを開始。出院準備教育の中で、本人と両親との宿泊訓練などを実施し、仮退院後も保護観察所と連携してカウンセリングを続けるべきだ、としている。

 家裁が今回、決定要旨をあえて公表したのは、社会に衝撃を与えた事件の特異性や被害者遺族への配慮に加え、この事件などをきっかけに、刑事処分対象を十四歳以上に引き下げる改正少年法が平成十三年に施行されたことが考慮されたとみられる。

 家裁は平成九年十月に元少年の医療少年院送致を決定した際も、処分内容だけでなく精神鑑定にあたった医師の所見、出生してからの両親との関係、精神状態の変遷、事件直前の心理分析まで公表していた。

 加藤久雄・慶応大教授(刑事政策)の話 「いたずらに収容期間を延ばすのではなく、社会復帰に向けた治療などを施すのであれば、法律で保障された手続きであり、十分に評価できる。重大事件の場合、少年刑務所で刑罰を受けるようにすればすっきりするし、少年たちにとっても、世間から罪を償ったと思われずに中途半端な形で社会に出るよりいい」

 【連続児童殺傷事件】神戸市須磨区で平成9年2月、小学6年の女児2人が殴打され、3月には小4女児が死亡、小3女児が負傷する連続通り魔事件が発生。5月には小6男児の切断遺体が見つかった。男児の頭部には「さあ、ゲームの始まりです」という言葉ではじまる「酒鬼薔薇聖斗」名の挑戦状の紙片が残されていた。

 須磨署捜査本部は6月に一連の事件を起こしたとして14歳の中学3年の少年を逮捕。神戸家裁は10月、医療少年院送致の保護処分を決定。少年は関東医療少年院に収容された後、原則20歳未満を対象とした中等少年院に移送されていた。
情報は→ichimy


<2002年7月12日毎日新聞>
心神喪失者医療観察法案 今国会での成立は困難に

 重大事件で心神喪失などを理由に不起訴や無罪になった人の処遇を定めた「心神喪失者医療観察法案」について、政府・与党は、今国会での成立を見送る方針を決めた。法案は、同日の衆院の法務、厚生労働両委員会で連合審査が行われたが、採決に至らず、残り期間で衆参両院の審議を終えるのは困難と判断した。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月12日朝日新聞

起訴前簡易鑑定、各地検で格差 不起訴率28〜90%超

 刑事責任能力が疑われる容疑者の処分を決める際に行われる「起訴前簡易鑑定」の運用に、各検察庁で大きなばらつきのあることがわかった。法務省がまとめたもので、こうした調査は初めて。年間100人を超す容疑者の鑑定を、1人の精神科医に依頼していた地検もあった。精神障害と診断された人が不起訴となる率にも、地域によってかなりの違いが出た。

 心神喪失・耗弱者の処遇については、その決定主体や入通院制度の整備とあわせて、起訴前鑑定のあり方が焦点になっている。調査結果はこの問題をめぐる今後の論議にも影響を与えそうだ。

 調査は、00年の1年間に30人以上に簡易鑑定をした16の地検を対象に行われた。

 目を引くのが不起訴率の違いだ。新潟は28%、大阪は34%だったのに対し、京都と札幌ではいずれも90%を超えた。

 起訴・不起訴の処分をめぐっては、かねて「判断がまちまち」「裁判で責任能力が認められずに無罪になるのを恐れて、安易に不起訴に流れている」との批判があった。法務・検察当局は「事件に応じて慎重に判断しており、問題はない」としてきたが、明確な指針がないまま、国民にとってわかりにくい運用がされていることが今回の調査で裏付けられた形だ。

 また、東京と近畿圏を中心に特定の医師に鑑定をゆだねる傾向が強いことも浮かび上がった。神戸では106人を1医師が、大阪では257人を2医師が担当した。緊急の場合もあるため、少数のなじみの医師に頼みがちになるという。

 鑑定の経験がある中島直医師は「簡易鑑定はその適否をチェックされる機会がないのが問題だ」と話す。別の医師は「地検側から『こうは判断できないか』と再考を求められたこともある」と、特定の医師に集中する危うさを指摘する。

 法務省刑事局は不起訴率のばらつきについて「サンプルが少なく、単純に比較はできない」としながらも、「鑑定医の流儀に影響されている部分もあるようだ。いい医師に頼むにはどこにいったらいいのか分からない面もある」と話している。


<2002年7月12日毎日新聞>
池田小殺傷事件 宅間被告、エリート校襲った動機など述べる

 大阪教育大付属池田小学校の乱入殺傷事件で殺人罪などに問われている宅間守被告(38)の公判が11日大阪地裁であり、宅間被告は動機について「恵まれた子供も、いつ殺されるか分からないという不条理さを世の中に分からせたかった」と屈折した心情を明らかにした。池田小を選んだ具体的な理由が初めて明らかにされた。

情報は→Yahoo! News


<2002年 7月11日毎日新聞>
池田小事件 宅間守被告が離婚の経緯を明かす 大阪地裁

 大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)の乱入殺傷事件で、殺人罪などに問われた宅間守被告(38)の第11回公判が11日、大阪地裁(川合昌幸裁判長)であり、前回に続き弁護側が宅間被告本人への質問を行った。

 事件では、3番目の元妻との離婚トラブルが動機の一因とされており、弁護団は離婚に至る経緯などを質問。宅間被告は「(妻に)屈折した執着があった。今になってみると、何で離婚した時に、妻に仕返ししなかったのか悔しくてたまらない」「役所の仕事に執着があって(仕返しに)ブレーキがかかった」などと述べた。

 一方で、宅間被告は「これまでで一番つらかったことは」との弁護人の質問に「(99年3月に兵庫県伊丹市の小学校でお茶に薬物を混入した)しょうもない薬物事件で役所の仕事を失ったこと。元妻との離婚は、(悔しさの順番では)三つより後ろ」との心境も明らかにした。

 宅間被告は97年、この元妻と結婚したが、宅間被告の暴力などが原因で翌年、調停離婚。しかし、その後も調停の無効確認を求めて裁判を起こすなどし、昨年6月の乱入殺傷事件の直前まで争っていた。

 この日の公判には、40席の一般傍聴券を求めて、初の本人質問のあった前回を上回る270人の傍聴希望者が集まった。

情報は→Yahoo! News


<2002年7月11日時事通信>
元妻に屈折した心理 宅間被告「殺しておけば」−池田小児童殺傷事件・大阪地裁

 大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件で、殺人罪などに問われた元小学校職員宅間守被告(38)の公判が11日、大阪地裁(川合昌幸裁判長)であり、前回に引き続き、弁護側の被告人質問が行われた。同被告は犯行動機に結び付くとされる3番目の元妻との関係を問われ、「役所の仕事に執着し、殺したりできなかった」などと供述した。
 弁護人から元妻との離婚などについて聞かれると、宅間被告は「今思えば殺しておけばよかったが、屈折した執着心があった」と淡々と答えた。その一方で、「面白くない人生だが、公務員だから乗り切れ、75歳まで生きられると思った。職を失いたくなかったから嫌がらせにとどめた」と話した。 

情報は→Yahoo! News


<2002年7月7日 北海道新聞> 

不起訴率に大きな地域差 被疑者の責任能力判断 精神科簡易鑑定 

 刑事事件の被疑者の刑事責任能力を精神科医が診断する起訴前簡易鑑定で、一人の医師が担当する人数や鑑定に基づく不起訴率が地域によって大きく異なることが、法務省が六日までにまとめた初の実態調査で分かった。中には、医師一人で年間百人以上を鑑定していた例も。簡易鑑定をめぐっては「検察官の起訴・不起訴の判断が、特定の精神科医による短時間の鑑定に依存しているのは問題」との指摘があるが、調査結果はそんな懸念を裏付けた形で、鑑定のガイドラインづくりを求める声が高まりそうだ。

 二○○○年に三十人以上の鑑定を行った札幌など全国十六地検の実態を調べた。
 まとめによると、簡易鑑定を担当する医師の数は神戸地検で一人、大阪、水戸地検で各二人だったのに対して、千葉地検は三十一人、横浜地検は二十八人。医師一人当たりの鑑定人数も、神戸と大阪では年間百人を超えたが、千葉は二人、横浜は六人だった。札幌地検は、医師六人で三十九人の鑑定を行っていた。

 鑑定を受けた人のうち精神障害者と診断された人の割合は、最低で41・9%(京都地検)、最高で93・0%(新潟地検)と大きな差があった。精神障害者と診断され検察官が不起訴処分にした人の割合も京都は95・5%、札幌では92・0%と不起訴になったが、新潟では27・5%だった。
 十六地検全体では、業務上過失致死傷事件を除く刑法犯三十七万七千八百二十六人のうち、簡易鑑定で精神障害者と診断された人は0・39%、千四百八十三人。七百八十九人が不起訴になった。

 今国会では、重大事件を起こしながら不起訴・無罪となった精神障害者の処遇を定める心神喪失者医療観察法案を審議中。法務省刑事局の小川新二参事官は調査結果について、「母数が小さく単年度の調査なので分析は難しい」としながらも、「医療観察法が成立すれば鑑定により厳密さが求められる。今後、専門家の意見を聞きながら勉強したい」と話している。

◇精神科医・中谷陽二筑波大教授の話 
 今回の調査で一番注目されるのは、各地域の医師数のばらつきだ。一般的に、医師数が少ないと担当医師の診断傾向が結果に出やすい。例えば年間の簡易鑑定人数が百人以上で医師数が1〜3人の大阪、京都、神戸地検を比較すると、大阪、神戸では不起訴率が50%未満だが京都はほぼ全員が不起訴と、地域により異なる診断傾向が、調査でも顕著に表れている。

 大阪、神戸では、一人で年百件以上の鑑定を担当しているのにも驚く。一件にどれだけ時間をかけているのか、疑問を感じる。検察官が恣意(しい)的に起訴・不起訴を決めているという批判があるが、検察側が精神科医の診断を無視するとは考えにくく、やはり、診断の在り方が処分の結果に大きく影響していると言わざるをえない。

◇簡易鑑定
 精神障害の疑いがある刑事事件の被疑者に対し、検察官が起訴前に精神科医に依頼し任意に行う精神鑑定。裁判所の命令で被疑者・被告を留置して行う起訴前、起訴後の「本鑑定」と違い、留置を伴わない。本鑑定は通常2、3カ月、簡易鑑定は30分から1時間で診断するといわれる。東京、大阪両地検は「精神診断室」を設けて非常勤の医師に委嘱、千葉地検では、地元の精神科医の鑑定グループが引き受けている。他地検は検察官がその都度、精神科医に依頼している。


<2002年7月10日読売新聞

触法精神障害者の処遇法案、今国会成立を断念

心神喪失者医療観察法案 今国会成立を断念

 政府・与党は9日、触法精神障害者の処遇を裁判所が決める心神喪失者医療観察法案の今国会成立を断念し、継続審とする方針を固めた。法案に反対する野党が慎重審議を求め、会期中の成立が困難となったためだ。政府・与党は、法案は修正しない方針で、今秋に想定される臨時国会で成立を目指す考えだ。

 同法案は、殺人や放火など重大犯罪を起こしても刑事責任を問えない触法精神障害者について、裁判官と医師の合議体が「再犯の恐れ」を基準に入院・通院の処遇を決め、国の責任で治療を行い、保護観察所が退院後の社会復帰を支援するという内容。

 衆院法務委員会では、5日に厚生労働委員会との連合審査、9日に参考人質疑が行われた。 だが、野党側は、法案提出のきっかけとなった池田小児童殺傷事件を踏まえ、大阪で地方公聴会の開催を求めるなど慎重審議の姿勢を崩していない。与党側は採決を強行した場合、「参院で審議中の医療制度改革関連法案の審議に悪影響を及ぼしかねない」とし、継続審議はやむを得ないと判断した。

 この法案を巡っては、野党の一部や医療関係者は「患者の隔離差別につながる」などと主張。民主党が現行の措置入院制度を改善する精神保健福祉法改正などの対案を提出しているほか、社民、共産両党も政府案に反対している。




<2002年7月9日朝日新聞

「精神分裂病」 「統合失調症」に改称 学会、新聞協会に要請

 「精神分裂病」の呼称を「統合失調症」に変更することを決めている日本精神神経学会(佐藤光源理事長)は8日までに、日本新聞協会に対して新聞記事などでの呼称変更を文書で要望した。
 「人格を否定するような響きがある病名は変更してほしい」という患者家族会の要請を受け、同学会は95年以降、内部に専門の委員会を設けて呼称変更の可否や、呼称を変更する場合に新病名をどうするかなどを検討してきた。
 昨夏までに新病名を三つに絞り込み、公聴会を開くなどしたうえで今年1月、理事会が新病名を「統合失調症」とすることを決め、6月の評議員会でも了承された。
 正式には8月に開く総会で決定されるが、同学会はそれを待たずに、臨床の現場などで「統合失調症」を使用することを会員に呼びかけると同時に、広く社会に病名の変更を訴えていく。

おことわり
 日本精神神経学会が精神分裂病の呼称の変更を日本新聞協会に要望したことを受け、朝日新聞社は今後、原則として「統合失調症」と表記し、必要に応じて「統合失調症(精神分裂病)」などと併記します。


<2002年7月10日読売新聞

今日のノート 統合失調症

 日本精神神経学会は先月末に開いた臨時評議員会で、「精神分裂病」の病名を「統合失調症」に変更することを決めた。
 患者や家族から「分裂病の病名は人格全体が分裂しているように誤解される」として変更の要望が出ていた。そこで、学会内に「呼称の変更に関する委員会」を設け、
(1)スキゾフレニア (2)クレペリン・ブロイラー症候群 (3)統合失調症の三つの候補に絞って検討した。
 スキゾフレニアは原語を片仮名表記したもので、一般人にはわかりにくい。偏見の心配は少ないが、意味を補うため「昔の分裂病」と書かれる恐れがある。
 クレペリンとブロイラーはこの病気の研究者でハンセン病などと同じ命名法。ただ、人格検査(クレペリン検査)や、鶏肉を連想するのが難点だ。
 原語の意味を解釈し直したのが統合失調で、一つの病気というより、いろんなものが集まっているということから「症」をつけた。
 三つの候補のうちどれがよいかを、患者・家族の会がアンケートしている。最も多かったのが統合失調症で四割強、とくに患者家族は半分以上が支持した。二位がスキゾフレニアで一割強だが、患者本人は一・五割とやや高い。クレペリン・ブロイラー症候群支持は一割未満。その他の名称をあげた人も四割弱いた。
 学会の決定はこの結果を踏まえている。新しい病名は、古い病名を告げられてショックを受けた患者の気持ちを和らげることができるだろうか。


日本精神科救急学会のホームページに「心神喪失者医療観察法案」についての理事長見解が掲載されました。

未だ法案の骨子が公表される前の時点での論評です。

理事長の計見和夫医師は、日本の精神科救急のパイオニアとして有名な千葉県精神科医療センターの所長です。

目次→理事長寄稿「不幸な事態と精神科救急」


<2002年7月6日大阪読売新聞>

「医療観察法案」宅間被告は対象外 衆院委で森山法相
 重大事件を起こした精神障害者の処遇をめぐる「心神喪失者医療観察法案」について衆院法務、厚生労働委員会の連合審査が五日、行われた。大阪教育大付属池田小で昨年起きた児童殺傷事件との関係を問われた森山法相は「(事件当時)仮に法案が成立していても、池田小事件の被告は対象にならない」と答弁した。
 同法案は心神喪失、心神耗弱と認定されて実刑にならない者が対象だが、池田小事件の宅間守被告について大阪地検は「精神病ではなく、十分な責任能力がある」として起訴した。

 質問した民主党議員らは「責任能力の認められる人格障害による犯罪と、精神病による事件を区別できていない小泉首相の無知による放言から出発した法案で、ピントはずれだ」と批判したようです。


8月31日に日本臨床心理学会で開くヒアリング・ヴォイシィズ講演会があります。


「精神障害者はほとんど不起訴」というような言い方が、法案推進側からも、法案反対側の一部からも、よく出てくるし、日精協などはいまだに機関誌などで誤解した記述をしていますが、ともかく正確な実態に即して議論すべきです。
もちろん、さらに詳しい事件処理状況を法務省は明らかにすべきです。
また、データから確実に言えることの1つは、拘禁・矯正施設内の精神医療の重要性が従来の印象より、かなり高いということです。


<2002年7月3日大阪読売新聞>

精神障害者「不起訴9割」は誤解/ 法務省資料 起訴率45% 一般と大差なし

 検察庁の鑑定で精神障害と診断された容疑者の起訴率はすべての事件で45%、殺人でも50%で、一般と大きな差はないことが三日、法務省の資料からわかった。精神障害者の刑事事件は、犯罪白書をもとに「九割が不起訴」と言われてきたが、検察庁や裁判所で心神喪失・心神耗弱と認定された者だけを母数にした比率。実際は、責任能力があるとして処罰されるケースが多いわけで、触法精神障害者の処遇をめぐる法案の国会審議に影響しそうだ。

 法務省の集計によると、二〇〇〇年に全国の地検が精神鑑定した容疑者は二千百九十一人(93%は簡易鑑定)で、うち精神障害と診断されたのは千六百六人。検察庁の処理は正式起訴41%、略式起訴4%で、不起訴・起訴猶予は54%(うち心神喪失19%、心神耗弱18%)だった。
 一方、交通事故を除く刑法犯の全容疑者(約二十九万人)では正式起訴23%、略式起訴7%、不起訴・起訴猶予22%、家裁送致48%。少年の家裁送致を分母から除外すると、起訴率は精神障害者46%、全体58%となる。
 殺人、殺人未遂の起訴率も精神障害者50%、全体58%。
 また各種のデータを総合すると、起訴された精神障害者の八―九割は、一審判決で完全責任能力を認定されている。

 同省は、精神鑑定の実施件数や精神障害と診断した人数を、国会質疑に備えて初めて集計した。犯罪白書は、精神障害者を心神喪失・心神耗弱と認定された者と同じであると、誤認しやすい記述になっている。

 検察庁の事件処理について森山法相は「現在の精神鑑定のあり方に重大な問題があるとは考えていない。捜査を尽くして適切な処分を行うよう努めている」と心神喪失者医療観察法案の国会質疑で答弁した。

 伊賀興一・日弁連精神保健問題小委員長は「精神障害者なら罪に問われないというのは大きな誤解だ。しかし短時間の簡易鑑定がほとんどなのは問題で、安易な不起訴が目立つ一方、世間を騒がせた事件では無理な起訴もある。詳しい実態
を調査分析し、起訴前鑑定の適正化を図るべきだ」と話している。

◇カラー円グラフ
 殺人・殺人未遂事件の検察の処理状況
 (2000年、法務省資料から)

◇精神障害者   =184人  ◇全体   =1471人
起訴       49・5%   起訴    58・1%
心神喪失で不起訴 43・5%   不起訴   34・4%
心神耗弱で起訴猶予 1・6%   起訴猶予   2・4%
その他の不起訴   2・2%
家裁送致その他   3・3%   家裁送致   5・1%




森山真弓法務大臣、坂口力厚生大臣は直ちに辞職せよ


               全国「精神病」者集団会員 長野英子

 今国会で、「心神喪失者等医療観察法案」が審議されている。この法案は「再犯のおそれ」を要件として「再犯を防止すること」を目的に、犯罪にあたる行為をし、心神喪失等で不起訴や無罪などとされた人を対象とし、予防拘禁しようとする法案である。この法案の対象とされ特別の施設に収容されれば、「再犯のおそれのなくなるまで」おそらく終生の拘禁が予想される。かつて反対運動で頓挫した刑法保安処分新設と同質の保安処分であり、手続き的にはそれ以上に問題のある法案である。
 7月5日の法案の法務厚生労働連合審査において、森山大臣および坂口大臣は到底見逃しがたい答弁を行った。
 佐藤議員は再犯予測ができるのか、といった再犯予測可能性をめぐる質問をし、100%というのはできないだろうという坂口大臣の答弁を引き出した。その流れで、佐藤議員はもしこの法案が動き出して、それによって被害が出たとしたら、それに対して大臣は責任が取るのか、と追求したところ、坂口大臣は、被害というのはどういうことか分からないとした上、この法案の対象者は重大な犯罪を犯した人であって、その人たちに治療を提供するのだから迷惑をかけるなどということはない、むね答弁した。
 一方森山大臣も、十分なケアをし、社会復帰を目指すのだから、被害というのは分からない。人権上の問題を指しているとしたら人権問題が全くないよう、人権保障は大前提としている、と答弁した。
 すなわち「再犯のおそれ」鑑定が誤り、「再犯のおそれ」のない人を処分の対象として拘禁しても、これは「医療と社会復帰を目的」としているのだから、なんら不利益を与えないのだ、という論理である。
 開き直りとしかいえない答弁である。法案対象者とされた人には人権なしという宣言である。
 この論理では法の目的さえ「医療と社会復帰」であれば、その法に基づき強制収容され、いかなる医療を施され、実りあるべき人生を奪われても、なんら被害ではない、ということになる。私たち「精神病」者には人権なし、という論理だ。
 精神保健福祉法においてもその目的は「医療と保護および社会復帰」となっている。しかしながら、この国の精神病院では医療的に入院が不要でありながら、行き場がないために精神病院での暮らしを余儀なくされている人たちが7万とも10万とも言われている。その中にはかつて精神外科手術を受け、新たな障害を押し付けられ苦しんでいる仲間もいる。これらの方は高齢化し一刻も早い救済がなされなければならない方たちである。ハンセン病訴訟で語られた強制隔離による人生被害を受けた方たちである。
 厚生労働大臣、法務大臣の今回の答弁によれば、法の目的が社会復帰と医療である以上、これらの方たちも一切被害を受けていないということになる。国は何もしない責任もとらないという宣言とさえ受け取れる。長期入院者の社会復帰や
ら精神医療福祉の充実という厚生労働省の言葉の欺瞞が今明確になった。
 人権を擁護すべき法務大臣、「精神病」者の医療福祉に責任ある厚生労働大臣として、あってはならない答弁であり、私は直ちに両大臣の辞職を求める。

 この法案廃案の闘いをになう皆様にも訴えたい。両大臣の辞職を求める手紙、ファックス、メールを集中していただきたい。

文例 
7月5日「心神喪失者等医療観察法案」の審議において坂口力厚生労働大臣および森山真弓法務大臣は、この法対象者の「再犯予測」が誤り、特別病院へ強制収容されたとしても、この法の目的が「適切な医療提供と社会復帰」であるので、その強制収容も一切被害ではないと答弁した。
 法対象者ひいては精神障害者全体には人権なし、という宣言であり到底許容できない。私は両大臣の即座の辞職を要求する。

要求先
坂口力厚生労働大臣 
 〒100-8981
千代田区永田町2−2−1 衆議院第一議員会館 617号
  ファックス 03-3508-3617 E−mail g02158@shugiin.go.jp

森山真弓法務大臣
 〒100-8981
千代田区永田町2−2−1 衆議院第二議員会館 543号
 ファックス 03-3597-2753 


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