全国精労協 第13回厚生労働省交渉 要望書 2001年5月28日
厚生労働大臣 坂口 力 殿
全国精神医療労働組合協議会
代表 山本 真一
要 望 書
貴省の日頃のご健闘に心から敬意を表しますとともに、先般3月12日、4月16日の事前交渉開催を深く御礼申し上げます。
さて、昨年施行となった「改正精神保健福祉法」によって、「精神障害者の人権の保障と適正な医療を受ける権利」が、やっとその一歩を踏み出したとは言え、精神医療現場の実態としては、東京都町田市の上妻病院の問題ゃ埼玉県朝倉病院問題のように、人権侵害の事件は後をたたない状態です。
私達は、この様な状態の大きな原因の一つが「精神科特例」に見られる精神障害者及び精神医療に対する差別的な発想と、それに裏付けされ、且つ差別を助長している制度や法律であると考えます。
貴省におかれましては、今後一層これらの是正を推し進めて頂きたく、以下の事項を要望させて頂きます。
記1.入院者の処遇と権利の保障及び通信面会の自由について
1) 昨年から始まった「任意入院者は開放処遇が原則」がどうすれば実質的に保証されるかは、私達の大きな関心事であり、獲得されるべき目標であります。
旧来の閉鎖的処遇が、法改正によって、どう改善され、入院患者の人権の保障に、実際にどのような効果があがっているのか、現状の把握、及び今後の方策と見通しをお聞かせ頂きたい。
2) 「任意入院は開放処遇が原則」といえば「開放病棟」が当然の形態ではありますが、現状を少しでも改善させようとする貴省の努力は評価を致すところであります。危惧するところを言えば、「個別に開放処遇にしているのだから、病棟は閉鎖のままで良い」と固定化してしまう動きであります。人権の保障の為には、理想の基本形は「医療は開 放病棟で、病状により個別閉鎖処遇」であり、現状はあくまで過渡期的なものと考える べきであります。ついては、以下の事項をお聞かせ願いたい。
- 1.過去「開放病棟化の為の設備費助成」を利用した病院がどのくらいあったのか。
2.その他「開放病棟」化を推進する為の、貴省の方策をお聞かせ頂きたい。3)この間、毎年要望をさせて頂だいている「精神医療審査会の実効性を上げる」ために以下の事項を各都道府県に提案して頂きたい。
1.精神医療審査会の電話をフリーダイヤル(−0120−料金受信方払い)にする。
2.電話を審査会専用とし、かつ審査会先任者を置くなどし、着信の場合遅滞なく対応できる体制を整える。
4)1988年厚生省告示第128号、第130号では「電話機は、患者が自由に利用できるような場所に設置する。閉鎖病棟内にも公衆電話等を設置する」と明記されている。ところが提出された資料によると、閉鎖病棟に公衆電話が設置されていない病院が6%はあるとされている。これは非常に人権侵害の度合いが強い事柄であり、これら病院の名前の公表と、各都道府県に対する、理由の調査及び設置指導を行って頂きたい。
5)「カード式公衆電話の設置の促進と、患者のテレホンカードの所持を保障する」為、
全国精労協としてNTT東日本と交渉を持ちましたが、NTTは「当事者である病院や監督官庁の要請が必要」という内容の返答をしています。
貴省の指導として、各都道府県を通じて閉鎖病棟内の公衆電話の使用方法、使用頻度を監査し、人権に関わる使用制限の理由がカード式(又はICカード式)に改めることで、解消できるのであれば、病院からNTTへ要請させる、などの指導をして頂きたい。
6)昨年来問題の、東京都町田市の上妻(こうづま)病院事件の、その後の調査、監督がどうなっているのか、調査結果とそれについての対応をお聞かせ願いたい。
7)埼玉県朝倉病院の事件について、貴省の調査、監督の内容および今後の対応をお聞かせ願いたい。
8)大阪府真城病院の事件については、どのように把握されているか、貴省の調査、監督の内容及び今後の対応をお聞かせ願いたい。
9)東京都青梅市の「成木台病院」の診療報酬不正請求事件が報道されたが、貴省ではどのように実態を把握されているのか。又、この件についての見解、今後の対策を御聞かせ願いたい。
10)移送について、その制度的不備、矛盾はすでに人権センターなどから指摘されている。以下の点について見解を明らかにしていただきたい。
- 1.厚生労働省は「移送は、患者を治療に結びつけるための最後の手段であって、その前に、精神科救急情報センターの設置・整備、患者本人に関する事前調査、入院等の説得を先行させ、このような努力をしても本人が入院に同意しない場合」と説明している。しかし移送以前の整備は立ち後れている。夜間・休日でも電話で相談できる精神科救急情報センターの都道府県での設置状況について説明をお聞かせ願いたい。
2.移送に対する不服申立権の実質的不存在の問題について。「移送に際してのお知らせ」には、「この移送に不服があるときは、この移送の日の翌日から起算して、60日以内に厚生大臣に対し、審査請求をすることができます。」と書かれている。しかし、この告知書面には、移送する理由や行動制限する理由は何も書かれていない。患者がそれを調べ、審査請求書を作成して厚生大臣に提出することは不可能である。また通常の不服申立手続である精神医療審査会制度は利用できない。2026件の移送の中で、不服申し立てはあったのか。また指摘した制度上の不備に対する厚生労働省の見解を明らかにしていただきたい。
3.「移送の実績」にある措置入院の移送件数で、全国合計1986件に対して、東京都だけで613件(医療保護入院件数はゼロ)という偏りは何ゆえなのか。移送制度が極めて治安的に運用されている結果と考えられないか、厚生労働省の見解をお聞かせ願いたい。
4.「患者移送制度」が昨年より実施されたにもかかわらず民間の警備会社が、病院・家族の依頼で移送を行っている実態がある。「トキワ警備」などは「法改正によって公的に認められた業務」とキャンペーンを行い全国展開しているが、そのような実態を放置しておいて良いものか。又、なぜその様な状態が起きるのか貴省の見解をお聞かせ願いたい。
11)東京都内のある区で「移送事務」に関する「個人情報収集」の対象者として、当事者・当事者の保護者以外に「相談者」なるものがあげられているが、ご存じであるか。
この問題は地域保安処分に関与すると考えられるが、問題ではないのか。
12)「触法精神障害者」問題をテーマに、貴省と法務省が合同検討会を開催していると聞いている。その場に他国の保安処分施設を紹介して「日本にも保安処分施設を造るべし」と言う主張が展開されているとも聞かれる。
- 1.かねてから「保安処分」概念とその施設の新設は、著しい人権侵害を引き起こす
として、多方面からの反対論と反対運動がなされて来たが、ご存じであるか。
2.「合同検討会」で保安処分推進の論が展開されているのは事実なのか。
3.現在の精神保健福祉課の「保安処分」概念に関する評価をお伺いしたい。2.精神科特例の撤廃等について
今般、「医療法改正」によって人員配置基準の変更が行われました。しかしながら精神科は今回も他科と差をつけられ、しかも5年間の猶予期間まで設けられており、まったく納得のいかないものであります。
この間おこっている数々の事件も、「人手不足」を理由に人権侵害が正当化されようとすることが少なくありません。このような実態を私達はけして許すことは出来ません。
1)精神科の人員配置基準に5年間の猶予期間が設けられたのは「人手が集まらない」と言う理由であると聞き及んでいます。なぜ他科に比べて看護者が集まりにくいのか、それについて貴省はどのように考え、どのような方策をとればよいとお考えかをお聞かせ願いたい。
2)薬剤師の配置基準は、他科が70床につき1名なのに対して、精神科では150床につき1名と言う差別構造は、実際の薬局業務を行うさいには非現実的な数字であります。「現状の把握をする」と昨年ご回答を頂きましたが、その結果がどうであったのかも、あらためてお聞かせ願いたい。あわせてこの特例の撤廃を要請いたします。
3)看護助手の人員数に対する診療報酬は、現在、経営側の観点からすると常勤雇用からパート化を促進し、利潤を追求する、格好な口実となっています。
精神科における看護助手は、他科の助手業務以上に患者さんとの関わりが、重要な仕事の一つであり、パート化されることでの不安定雇用の弊害が患者サービスの低下に結び付く事は自明であり、重大な問題であります。
さらには、労働問題としても、患者さんへの責任は同一な勤務をしていながら賃金・待遇は差別されると言う、矛盾を生み出しており、この事態を「労使の問題だ」と片付けてしまわれるのは、患者さんに適正な医療の提供を指導する貴省の御立場からすると、誠に不十分な所為であると言わざるを得ません。
今般の改正医療法の人員配置基準の中でも、基準達成までの猶予期間を、助手の配置で補う形にもなっており、チーム医療の観点からしても、誠に好ましくない状況が増大しております。
つきましては昨年に引き続き、常勤で雇用できうる診療報酬に改訂して頂く事に併せて、「看護助手の雇用については常勤雇用が原則」もしくは、望ましい、と言う指導を行って頂くよう、重ねて要望致します。3.社会復帰政策について
この間の、施設や事業に対する、予算増や小規模作業所などの認可の緩和など、ハード面での前進は評価を致します。
1)「デイケア・OT活動の一環としての院内喫茶店活動『廃止』指導」について、この活動が「労働」にあたるか否かが、指導内容を再検討するポイントとなっているように認識しているが、貴省が旧厚生省と労働省の合併した省となられたので、あらためてこの件についての見解を伺うとともに「指導」の再考を要望致します。
2)「精神障害者生活訓練施設(援護寮)」の利用期間について。
平成14年達成予定の社会資源整備の現状、独立して住居を構える為の保証人制度の問題等も含め、社会の受け入れ態勢の立ち遅れも考慮し、「2年間の利用の後、1年間の延長1回限り」と言う硬直化したものでは無く、もう少しゆとりを持った施策運用を考察して頂きたい。
3)生活保護受給世帯の方が生活訓練施設に入所する場合、生活保護制度の住宅扶助の支給が止められてしまう。施設によって額に差があるが、いわば家賃に相当する「利用料」を支払わねばならず、家計の逼迫は明らかであり、法に定められた「最低生活の基準」すら侵害されている状態がある。この件についての貴省の見解をお聞きしたい。4.栄養課の外部委託について
1)厚生労働省の調査によると栄養課業務を外注化していた病院の19%で業者とのトラブルが発生し、15%の病院で、解約し直営に戻す所が増えてきている。これは委託推進の結果、医療サービスや食事内容の低下が深刻な問題となってきた結果と考える。昨年の貴省の答弁の中では、「なんら問題はおこって居ない」とお答えになっていたが、問題がないのに直営に戻す事例が増えるものなのか、見解をお聞きしたい。
2) 前回、国の規制緩和政策の中で、病院の給食もその範疇に入ったという御返答を頂いたが、「医療サービスの向上」が「外部委託」でなし得るとの御考えなのか。患者さんへの医療サービスのチームに「収益事業」としての委託業者が入って、向上すると御思いなのか。むしろ現状は、薬剤業者との間で問題にされる、「薬価差益」と同様な構造になってしまっていないか。
貴省が「経済政策」ではなく「医療」として「外部委託」導入によって、どのようなところを目指しているのかをお聞かせ願いたい。
以上。
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