2002年 厚生労働省交渉要望書
2002年5月27日
厚生労働大臣 坂口 力 殿全国精神医療労働組合協議会
代表 山本 真一要 望 書 貴省の日頃のご健闘に、心から敬意を表しますとともに、先般4月22日の事前交渉開催を深く御礼申し上げます。
私達は当協議会の大きな活動の主軸の一つである「誇りある精神医療労働を獲得する」を実現為る為、発足当初より一貫して「精神障害者の人権の保障と適正な医療を受ける権利」を求めて、精神医療を改革すべく、努力を重ねております。
さて、今国会に上程された「心神喪失者医療観察法案」は、精神障害者に対してのみ、科学的に判断不可能な「再犯のおそれ」をもって、不定期で長期にわたる拘禁を可能とする保安処分とも言える法案であり、その内容は医療より治安上の目的が主であると考えざるをえず、精神障害者への重大な人権侵害となるものです。
また、法案が成立すれば、精神障害者への差別と偏見を助長する事も明らかであります。3月法案の公表の後、数多くの団体から次々と反対声明や意見書が提出されています。私達全国精労協も、4月27日、反対の声明を出しております。私達の仕事は、安心してかかれる精神医療の提供であり、治安の為の隔離ではありません。
これほど廃案や慎重審議が求められている中で、論議検証も尽くさず、制定を急がれていることに私達は重大な危惧を抱いております。それは精神医療の充実とノ−マライゼ−ションに逆行し、貴省と私達が、長年に渡る交渉によって積み重ねてきたものを、根底から崩してしまうものであります。
この様な状況の中、貴省におかれましては、精神障害者の権利の擁護と精神医療の充実のために、今後一層の改革を推し進めて頂きたく、以下の事項を要望させて頂きます。
記 1.入院者の処遇と権利の保証及び通信面会の自由について。
1)「心神喪失者医療観察法案」について
今年3月19日、精神障害者団体などの新法制定反対署名提出の際、松本精神保健福祉課長が、「将来にわたる再犯の予測」について、「法案37条の2項の条件があれば一定の範囲で再犯の予測が可能」と発言しているが、「一定以外の範囲では再犯予測が困難」とも述べている。科学的な根拠に基づかない「再犯のおそれ」で隔離収容することは「保安処分」であると考える。以下の見解をお聞かせ頂きたい。
a.一般刑事犯の再犯率よりはるかに低い精神障害者にだけ、なぜ特別な法律を作り処分を行わなくてはならないのか。
b.再犯を科学的に判断できるとする根拠はあるのか。
c.予防拘禁で無いという根拠はなにか。
d.「指定入院医療機関での特別な専門治療」とは隔離拘束と管理強化以外に何を考案されているのか。
2)現状の司法施設での精神医療が保障されていないと聞き及ぶ。貴省の見解をお聞かせ頂きたい。
3)「心神喪失者医療観察法案」は「精神障害者は危険」という差別的偏見を助長するものである。これは、生活地域での治療の保障などを求めた国連原則1993年の「『差別・区別をしない』『地域でともに暮らす』『一般医療と同等に』」に反してはいないか。貴省の見解をお聞かせ願いたい。
4)精神障害者に対する司法と精神医療の問題では、安易な簡易鑑定や起訴便宜主義の問題が指摘されているにもかかわらず、その運用の見直しさえされていない。
又、精神科特例と隔離拘束の、日本の差別的な精神医療政策が膨大な社会的入院と毎年発覚する不祥事に見られる人権侵害を生み出している。
今、正に必要なことは、貴省もこの間、率先して取り組み、努力して来られた、地域を含む精神医療と福祉の充実であると私達は考えます。
「心神喪失者医療観察法」はこれらの事に全く逆行するものであり、廃案にするよう、貴省が働きかけを行うことを求めます。
5)病院不祥事の防止について
a.人権擁護に関する監査では、予告しての立ち入りでは、実態隠しによって、その把握が困難であるため、予告無しの立ち入り検査や精神科オンブズマン制度の普及 を進めて頂きたい。
b.東京都町田市の上妻病院の問題について、その後の経過を報告して頂きたい。
6)精神医療審査会について
精神保健福祉法の人権擁護システムである精神医療審査会は、権利の告知と公示とともに、公衆電話が自由に利用できることが必須の条件である。ところが閉鎖病棟の8.7%に公衆電話が設置されていない。これは違法状態に等しい。前年度報告の6%より更に後退している。
a.根本的な解決として精神病棟内には公衆電話の設置を義務化とし、未設置の場合 診療報酬をマイナスするなどペナルティ−を科して頂きたい。
b.以前未設置の病院名を公表して頂きたい。
c.病棟内の公衆電話の設置は、ナ−スステ−ションとは離れた、ホ−ル等、通信内容のプライバシ−が守れる場所での設置の義務化を行うこと。
d.この間一貫して取り組んできた、カ−ドが使用出来る公衆電話の普及に更に強力 に取り組んで頂きたい。
e.精神医療審査会の電話は他の業務と兼用とせず、専用線とし、専任者を置くこと。
f.精神医療審査会の審査期間が申請から30日以内に行われるよう、指導すること。
7)今回の診療報酬改定で「精神科救急」については「都道府県あるいは精神科救急エリアでの4分の1以上の受け入れ」を条件としている。これは救急対応よりも措置入院対応を求めていると受け取らざるを得ない。
これは、特別立法の特別病棟への誘導ではないのか。こうした政策は、精神科をその他の医療から遊離させ、総合的医療からますます隔絶させてしまう。むしろ精神科救急では合併症への対応が求められるケ−スも多く、総合病院に精神科を併設することや、充実させることが求められている。しかし、各地の総合病院では精神科を廃止する方向も出てきていると聞き及ぶ。
貴省の見解をお聞きかせ願いたい。8)今年2月、東京の陽和病院に外来通院する患者さんが、沖縄旅行中に精神障害を理
由に「全日空」の復路の搭乗を拒否された事件が起きた。航空各社の運行規則に、同様の精神障害者への差別条項があると聞く、貴省はこの実態をご存じであるか。
事態を調査し、差別条項撤廃に向けて働きかけて頂きたい。2.精神科特例の撤廃について。
1)精神科の人員配置基準に、5年間の猶予期間が設けられたのは、「人手が集まらない」と言う理由であると聞き及びます。
何故、他科に比べて看護者が集まり難いのか、それにつき、どの様に考え、どの様な方策をとれば良いのか。貴省の考えをお聞かせ願いたい。
2)薬剤師の配置基準は、他科が70床につき1名なのに対し、精神科では150床につき1名という差別構造は、実際の薬局業務を行うさいには非現実的な数字であります。
この特例の撤廃を要求致します。3)看護助手の人員数に対する、現在の診療報酬は、経営者の観点からすると、常勤雇
用からパ−ト化を促進し、利潤を追求する格好な口実となっています。精神科における看護助手は、他科の助手業務以上に患者さんとの関わりが重要な仕事の一つであり、パ−ト化されることでの不安定雇用の弊害が患者サービスの低下に結び付くことは自明であり、重大な問題であります。
さらには、労働問題としても、患者さんへの責任は同一な勤務をしていながら、賃金・待遇は差別されているという矛盾を生み出しており、この事態を「労使の問題だ」と片付けてしまわれるのは、患者さんに適正な医療の提供を指導する貴省の立場からすると、誠に不十分な所為であると言わざるを得ません。
つきましては、昨年に引き続き、常勤で雇用でき得る診療報酬に改正して頂く事に併せて、「看護助手の雇用については常勤雇用が原則」もしくは望ましい、と言う指導を行って頂ける様、重ねて要望いたします。
3.社会復帰政策について
1)生活訓練施設入所者の利用料について
「生活保護を受給しながら生活訓練施設を利用している人が入院した場合、利用料の扶助はできない」と言う見解を出されたと聞き及んでいます。
この見解は、利用者が入院した場合は、入院中の保護基準しか支給されず、日用品費の中から利用料を捻出しなければならず、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に抵触していると考えざるを得ません。
この様なケースの場合、利用料の支給をして頂く事を要望いたします。2)平成14年度は「障害者プラン」の達成年度でありますが、目標数値に対しての進展状況について、又、今後の方針についても、具体的にお聞かせ願いたい。
3)精神科ケアマネージメント事業について、平成15年度より行うことになっていますが、具体的にどの様な事業をしていくのか、お聞かせ願いたい。
4)市町村の事業として、ホ−ムヘルプサービス、ショートスティ、グループホームが本年度より行われることになっていますが、その進行状況をお聞かせ願いたい。
5)精神科デイケア・精神科作業療法について。
a.精神科デイケアを開く際には、専用の施設を用意することが義務付けられており、利用者一人当たりに用意する広さが定められている(大規模デイケアーは一人当たり4.0m2、小規模及びナイトケアは3.3m2)。
東京都の指導によると、この基準は、専用施設内の各小部屋等の利用法にも適用され、その結果、例えば12m2の部屋には一時に3人以上入ってはいけない、とされると説明を受けた。
このような適用であれば、小グループ活動を行う際には、誠に実情に合わない不適当な制約を受けざるを得ない。この様な指導は、貴省が行って居られるのか。見解を含めお聞きしたい。
6)4月22日に行われた事前交渉で確認した「精神科リハビリテーションの一環としての喫茶プログラム及びバザープログラム等のガイドラインを再度確認をいたしたい。
a.取り扱われる金銭が、プログラムを行う施設(病院等)の収益にならないこと。
b.医療行為の一環として位置付け「労働」にはあたらないこと。
c.外出プログラムを行うにあたって考慮すべきことは、個々の利用者の精神科リハビリテ−ション上の必要性であり、「一周間に一回程度に止どめなければいけない」などの制約は無い、との理解で良いか。
7)精神保健福祉士について
現在精神保健福祉士に求められている業務が、診療報酬上に適切に反映されていない。又、長期にわたる社会的入院者を減少させる為にも、精神保健福祉士を必置として頂きたい。貴省の考えをお聞かせ願いたい。
8)心理職に関して
a.「臨床心理技術者」の総数の推移を年度別に示して頂きたい。
b.「臨床心理技術者」の定義とその職種に求めるものをお聞かせ願いたい。
c.いわゆる「心理職」の精神科に於ける必要性、役割をどう見ているのか、お聞かせ願いたい。
4.病院の食事について
1)1,920円の内訳についてお聞きしたい。
2)患者負担額の780円の根拠についてお聞きしたい。
3)「収益事業」としての委託業者が医療サービスに入ることは、薬剤業者の問題として取り沙汰されている「薬価差益」と同等と認識するが、如何なものかお聞かせ願いたい。
以上
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