2002年11月1日
厚生労働省 社会保障審議会 障害者部会 精神障害分会
精神障害分会 報告書(案) 1. はじめに
○我が国の精神保健医療福祉施策は、昭和62年の精神衛生法改正において、精神医療における人権の確保及び精神障害者の社会復帰対策が位置付けられて以来、一定の向上が図られてきている。
○しかし、我が国の精神保健医療福祉の状況については、依然として次のような課題があることが指摘されている。
・人ロ当たりの精神病床数が諸外国に比べて多いこと
・医療技術の進歩等により、最近入院した者については短期の医療が定着しつつあるにも関わらず、長期入院の者が減らず、またいわゆる社会的入院者が減らないこと
・精神病床の機能分化が進んでおらず、効率的で質の高い医療の実施が困難であること
・入院患者の社会復帰や、地域における生活を支援するための施設やサービス等の整備が十分進んでいないこと
・精神疾患や精神障害者に対する国民の正しい理解が十分とはいえないこと
○ このように、我が国の精神医療福祉が施設処遇を中心として発達してきた背景には、歴史的に、私宅監置等の自宅や地域における処遇の問題を改善するために施設処遇が進められてきたという経緯がある。
○ しかし、今後は、上に掲げた課題の解決を図りつつ、ノーマライゼーションの考え方を踏まえ、当事者中心の精神保健医療福祉へ転換を進め、精神保健医療福祉施策全般の充実向上を図ることが重要である。
○ このため、今後の進むべき方向を明示した上で、計画的に各種施策の推進を図ることが必要である。
○ なお、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案が国会において審議中であるが、与党における検討の過程で、こうした新たな施策の推進とともに精神保健医療福祉施策全般の充実向上が不可欠として、ともに重要な課題であることが指摘されている。同法案が円滑に施行されるためにも、社会復帰対策を始めとする精神保健医療福祉施策全般の充実向上が不可欠となる。
○ 本分会においては、平成14年1月28日の第1回会議以来、○回の会議を重ね、精神保健医療福祉施策全般の充実向上のための基本的な考え方及び具体的な方策について検討を進めてきた。この検討結果が、障害者基本計画及び障害者プランに可能な限り盛り込まれ、順次実現が図られることを期待するものである。2. 基本的考え方
今後の精神保健医療福祉施策を進めるに当たっては、まず、精神保健医療福祉サービスは、原則として、サービスを要する本人の所属する地域で提供されるべきであるとする考えに立ち、その上で、入院医療・施設福祉主体から、地域における保健・医療・福祉を中心としたあり方へ転換するため、各種施策を進めることが重要である。
具体的な対策を推進するに当たっては、各施策に共通する視点として次の事項を常に念頭に置くべきである。
@「受入れ条件が整えば退院可能」な入院患者の退院・社会復帰等により、入院患者の減少、ひいては精神病床数の減少を図ること
A良質な精神保健医療福祉サービスの提供とアクセスの改善を図ること
B当事者が主体的に選択できる多様なサービスの提供を行うこと
C精神疾患、精神障害者への正しい理解の促進を図ること
Dさまざまな心の健康問題の予防と早期対応を図ること
E客観的指標に基づく施策の進捗状況の評価と、施策推進過程の透明性の確保を図ること厚生労働省においては、今後、ここに掲げた各種施策について進行状況を本分会に定期的に報告し、施策の評価・再検討を行うことが重要である。また、各種施策を効果的に推進するため、障害者施策を担当する都道府県、市町村等においても、地域の実情を踏まえ、計画的に諸施策を推進することが期待される。
3. 具体的な施策のあり方について
1)精神障害者の地域生活の支援
@在宅福祉サービスの充実
〈現状>
・精神保健福祉法改正により、居宅生活支援事業を平成14年度から市町村単位で実施することとなった。
・社会復帰施設等の利用に関する相談、あっせん、調整業務の市町村実施に合わせて、精神障害者ケアガイドラインを一部改正(平成12年度)。
〈方向>
・精神障害者ができる限り地域で生活できるよう、居宅生活支援事業の普及を図るとともに、ケアマネジメント手法の活用を推進する。
・特に、今後10年間で、「受入れ条件が整えば退院可能」な者の退院・社会復帰を目指すため、必要なサービスを整備する。
・退院・社会復帰を目指すために必要なサービスの整備にあたっては、精神病床数の減少の状況をみつつ、進めていくものとする。
〈具体的な対応等>
・平成14年度から市町村単位で実施することとなった居宅生活支援事業については、早急に、全ての市町村において受け入れ体制を整えることが必要である。
・地域において生活する精神障害者のうち、居宅生活支援を必要とする者にサービスを提供できるよう、サービス提供量の充実を進める(数値目標を引き続き検討)。
・短期入所事業(ショートステイ)について、介護等に当たる者が一時的に不在となる場合のほか、精神障害者本人が一時的に休息する場合の利用を可能とする方向で必要な対応を検討する。
・都道府県及び市町村の障害者計画において、精神障害者に関する事項を記載するとともに、在宅福祉サービスの確保、精神疾患-精神障害への正しい理解の普及等に関する記載を充実するよう要請する。
・ケアマネジメント従事者(三障害)養成研修事業を推進する。
・社会的入院患者等の退院を促進するため、ケアマネジメント手法を活用した支援を行うことを検討する。
・多職種による訪問支援を活用したケア体制について、諸外国で実施され成果を上げていることを踏まえ、厚生労働科学研究事業の活用等により検討を進める。A地域における住まいの確保
<現状>
・平成8年度から、精神障害者保健福祉手帳1,2級の所持者について、公営住宅入居に関し収入要件緩和による優遇措置が行われている。
<方向>
・住まいの確保は、精神障害者の社会復帰、地域生活への移行の促進に当たって重要な課題の一つである。退院後、直接、又は精神障害者社会復帰施設等を経て、地域で生活しようとする精神障害者が、円滑に住まいを確保できるような支援策を推進する。
<具体的な対応等>
・引き続き、グループホームの確保を推進する(数値目標を引き続き検討)。
・住まいの確保に関する支援方策について、厚生労働科学研究事業の活用等により検討を進める。
・地域における日常生活上の支援を踏まえ、公営住宅の優先入居やグループホームとしての活用等について、関係部局との連携を図る。B地域医療の確保
<現状>
・精神障害者の地域生活への移行及び心の健康問題への早期対応を図る観点から、地域における精神医療への適切なアクセスの確保や、医療機関間の連携強化が重要な課題となってきている。
・精神病床は、都道府県の区域ごとに整備されることとなっているが、都道府県内及び都道府県間において地域偏在がみられる。また、精神科診療所は増加しているものの、精神科間の病診連携や、精神科と他科の連携は不十分な状況にある。
・一方、精神障害者の訪問看護利用は徐々に増加している。
<方向>
・地域医療を確保するため、二次医療圏では、精神保健・医療の一般的な需要(一般的な身体合併症への対応を含む。)に対応し、三次医療圏では、重大な身体合併症を有する精神障害者の医療等、専門的な精神科医療に対する需要に対応できるようにすることが望ましい。
・精神病院と一般病院、精神病院と精神科診療所、精神科診療所と他科(内科等)診療所等の連携を進めることが必要である。
<具体的な対応等>
・精神医療における地域医療の考え方、二次医療圏単位で整備が必要な精神医療の機能及びその確保方策(身体合併症治療のあり方を含む。)、精神病床の基準病床数算定式について検討会を設置して検討を進め、早急に結論を得る。
・一般医療における高次救急医療機関においても精神科的介入を要する患者が多くみられることから、精神科との連携等によりこれらの患者への対応の充実を図る。
・訪問看護師養成講習会の活用等により、精神疾患にも対応可能な訪問看護者の増加を図る。C精神科救急システムの確立
<現状>
・精神障害者の地域生活への移行及び心の健康問題への早期対応を図る
観点から、精神科救急システムの整備が重要な課題となってきている。
特に、措置入院等の非自発的入院を要するような重症例への対応だけでな<、自らの意思で医療相談や受診をしようとする者に対応する体制の重要性が指摘されている。
・厚生労働省においては、精神科救急医療システム整備事業を実施しており、1県のみ未整備となっている。また、救急医療システムを拡充し、緊急的な精神医療相談等に対応するため、「24時間医療相談体制整備事業」を開始している。
<方向>
・措置入院等の非自発的入院を要する場合から、相談への対応のみの場合まで、さまざまな救急二一ズに対応できるよう、地域の実情に応じた精神科救急システムの整備を推進する。
<具体的な対応等>
・行政による精神科救急システムを充実するため、都道府県一指定都市における「精神科救急医療システム整備事業」及び「24時間医療相談体制事業」への取組みを推進するとともに、精神科初期救急医療施設(輪番制)の整備に着手することを検討する。
・行政による精神科救急システム以外にも、かかりつけの医療機関、地域生活支援センター等、地域の多様な資源による支援が重要であることから、各機関が期待される役割を果たすとともに、互いに連携を図ることが必要。D地域保健及び多様な相談体制の確保
〈現状>
・精神保健福祉センター、保健所、市町村等の行政機関において、精神保健福祉に関する相談・指導、組織育成、社会復帰支援等を実施している。
・地域生活支援センターにおいて、職員による相談支援のほか、利用者間の相互支援を実施している。
<方向>
・精神障害者及び家族の二一ズに対応した、多様な相談・支援体制を構築する。
<具体的な対応等>
・精神保健福祉センターによる、技術指導・援助、精神保健福祉相談、組織育成等の活動を推進する。
・保健所による相談・指導、自助グループ等の組織育成、広域的・専門的な調整及び市町村への技術的支援、社会資源の開発等を推進する。
・当事者による相談活動(ピアサポート)に取り組む市町村を支援することを検討する。
・精神障害者のうち介護保険サービスの利用を希望する者に対しては、精神障害者の社会復帰支援に当たる者や介護保険事業者において、相談支援、情報提供等、適切な援助を実施する。E就労支援
<現状>
・精神障害者の福祉的な就労支援策として、社会復帰施設の設置・運営のほか、社会適応訓練事業が実施されている。
<方向>
・授産施設等における活動から一般就労への移行を促進する。
<具体的な対応等>
・一般就労への移行に向けた訓練の場としての機能を十分に果たすべく、授産施設等の福祉的な就労支援策の適切な実施を図る。
・障害者就業・生活支援センターにおける支援事業、職場適応援助者(ジョブコーチ)事業について推進を図る。
・法定雇用率適用のあり方について、「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」において検討する。2)社会復帰施設の充実
<現状>
・平成8年から開始された現行の障害者プランに基づき概ね目標を達成している。
<方向>
・精神障害者の社会復帰を支援するため、精神障害者社会復帰施設を計画的に整備し、その適切な活用を推進する。
・特に、今後10年間で、「受入れ条件が整えば退院可能」な者の退院・社会復帰を目指すために必要な施設を整備する。
・社会復帰施設の整備等にあたっては、精神病床数の減少の状況をみつつ、進めていくものとする。
<具体的な対応等>
○社会復帰施設整備の考え方
・整備等に関する各類型別の考え方は、次のとおり。
・生活訓練施設は、比較的若年で社会復帰訓練を要する者の通過施設として、引き続き整備する。
・福祉ホームは、生活の場として引き続き整備する。
・通所授産施設は、将来就労を希望する者の作業訓練の場として、引き続き整備する。
・入所授産施設及び福祉工場については、施設から地域生活へという流れを踏まえ、現状維持とする。
・地域生活支援センターについては、引き続き整備が必要。
・小規模作業所については、その運営の安定を図るため、小規模通所授産施設への移行を促進する。
・なお、数値目標の設定に当たっては、「受入れ条件が整えば退院可能」な者の退院1社会復帰を目指すことを念頭におき、入院者の態様に応じて、それぞれ次の点を留意する。
・症状性を含む器質性精神障害を有する者については、精神保健福祉施策と介護保険等との連携による対応が望ましい。
・その他の精神疾患を有する若年者(概ね55歳未満)で、比較的短期の入院(概ね5年未満)のものについては、一部が生活訓練施設を経ることとなるが、大部分は直接、在宅又はグループホームでの生活を送ることができるよう支援を行うことが望ましい。
・その他の精神疾患を有する若年者(概ね55歳未満)で、比較的長期の入院(概ね5年以上)のものについても、一部が生活訓練施設を経ることとなるが、その他は直接、在宅又はグループホームでの生活を送ることができるよう支援を行うことが望ましい。ただし、比較的短期入院の者の場合と比較し、生活訓練施設における訓練を要する者が多いと想定される。
・その他の精神疾患を有する高年齢者(概ね55歳以上)については、心身の障害程度、自宅の保有状況等に応じて、在宅、グループホーム、福祉ホーム等での生活を送ることができるよう、支援を行うことが望ましい。また、介護保険のサービスの利用を希望する者については、適切な援助を実施する。
・医療法人が自ら、又は別法人を設立して精神障害者社会復帰施設を設置する場合の整備費の補助について、病床削減と関連付けることを検討する。
○都道府県・指定都市の役割
・施設整備の推進に当たっては、都道府県の積極的な取組みが欠かせないことから、都道府県障害者計画において、施設整備、精神疾患一精神障害への正しい理解の普及等に関する記載を充実するよう要請する。
・都道府県一指定都市に対し、地方障害者施策推進協議会の活用等により、いわゆる社会的入院一長期入院の改善方策について検討するよう要請する。
○今後さらに検討を要する課題等
・地域生活支援センターについては、地域で生活する精神障害者を支援する身近な施設であることから、他の障害者施策との関連、これまでの活動実績の評価等も考慮し、検討会等の場でそのあり方をさらに検討する。
・入院は要さないが介護や医療に対する二一ズの比較的高い精神障害者の処遇に適する施設のあり方について、既存の病棟施設を居住性を高めて活用することも含めて、検討会等の場でさらに検討する。
・授産施設等については、一般就労への移行に向けた訓練機能を果たすよう、適切な運営を図る。3)適切な精神医療の確保
@精神病床の機能分化
<現状>
・精神病床の人員配置基準については、平成13年に「大学附属病院等の精神病床」と「その他の精神病床」という2種類の人員基準が規定されたところである。
・平成12年12月13日の公衆衛生審議会報告において、「精神病床の機能分化や長期入院患者の療養のあり方を含め、21世紀の精神医療の方向性について別途、検討を開始し、人員配置に関する経過措置の期間とされている医療法施行後5年の間に一定の方向を示すべきである」とされている。
・精神病床の約3割は、急性期医療、老人痴呆等の特徴をもった病床となっている。
・診療報酬においては、人員配置、対象となる患者、医療内容等に着目した点数が設けられている。この結果、精神病院の約7割で看護配置が4=1以上となっている。
<方向>
・今後10年間で、「受入れ条件が整えば退院可能」な者の退院・社会復帰を目指すこと及び最近の入院期間短縮化の傾向からみて、入院患者数は今後減少する見込みである。これらに伴う精神病床の集約化を踏まえ、人員配置を含めた精神病床の機能分化を推進する。
<具体的な対応等>
・精神病床の機能分化について、検討会を設置し、前回医療法改正に伴い新設された「大学附属病院等の精神病床」と「その他の精神病床」の2種類の人員配置基準について、それぞれ適用すべき精神病床の範囲等に関しさらに検討を進め、早急に結論を得る。その際、3.2)社会復帰施設の充実の項で指摘した、入院は要さないが介護や医療に対するニーズの比較的高い精神障
害者の処遇に適する施設のあり方についても留意する。
・機能分化を推進するため、医療法上の精神病床の区分に加えて、引き続き、診療報酬によりきめ細かく対応を行う。A精神医療に関する情報提供
<現状>
・本年4月に医療法に基づく広告規制が緩和された。
・(財)日本医療機能評価機構が第三者評価を実施しており、この結果については、広告可能となっている。
<方向>
・患者・家族による医療機関の選択に資するよう、精神医療や精神病院に関する情報の提供を推進する。
<具体的な対応等>
・原則として、良質の医療を提供する医療機関がその情報を積極的に提供することにより、患者・家族に選択されるというあり方が望ましいため、個々の病院、病院関係団体等による自主的な情報公開が推進されることが期待される。
・併せて、日本医療機能評価機構による評価の受審を促進する。個々の病院又は病院関係団体において、積極的な受審、その結果の公開等の取組みがなされることが期待される。
・医療機関を利用する者の評価に基づいた情報提供が有用であることにも留意すべきである。
・改善が認められない等の問題を有する精神病院に対し、精神保健福祉法に基づき国の立入検査が行われた場合は、その結果について公表を原則とする。
都道府県等の立入調査結果、任意の実地指導で改善が認められない場合には、その事実については公表が望ましいという考え方をとる。
・精神医療におけるインフォームドコンセントの推進方策については、本分会で引き続き検討を行う。
・「医療提供体制の改革の基本的方向」で示された対策の一環として、精神病院についても、インターネット等を通じた公的機関等による適切な情報提供の充実-促進を図るとともに、電子カルテ、レセプト電算処理等のIT化の推進を図る。B根拠に基づく医療の推進と精神医療の安全対策の検討
<現状>
・根拠に基づく医療の推進方策の一つとして、厚生労働科学研究事業において、
精神分裂病(統合失調症)及び気分障害の治療ガイドライン並びに電気痙攣療法のガイドラインの策定に向けた調査研究を実施している。
・平成14年4月「医療安全推進総合対策」が策定された。
<方向>
・精神医療の質の向上を図るため、治療研究の推進とともに、治療ガイドライン等の作成・普及を進める。
・「医療安全推進総合対策」に基づく安全対策を実施するとともに、精神医療に特有な安全対策を推進する。
<具体的な対応等>
・平成15年度終了予定の厚生労働科学研究事業「精神疾患治療ガイドラインの策定等に関する研究」の成果等を踏まえ、根拠に基づく医療の普及のために必要な対応を進める。
・「医療安全推進総合対策」において、国として当面取り組むべき課題とされた事項を着実に実施する。また、自傷、他害、無断離院、隔離・拘東等、精神医療に特有な課題もあることから、精神医療の特性を踏まえた安全対策の必要性やあり方について、平成15年度から厚生労働科学研究事業の活用等により検討を進める。C精神医療における人権の確保
<現状>
・専門性・中立性等の観点から、精神医療審査会の事務を、都道府県・指定都市本庁から精神保健福祉センターに移管した。
・精神医療審査会の機能については、退院請求の処理期間等からみて、不十分な点がある。
<方向>
・引き続き、精神医療審査会の機能の充実と適正化等を図る。
<具体的な対応等>
・都道府県・指定都市に対し、審査件数に対応した適切な数の合議体を設置する等、精神医療審査会の機能の充実-適正化を図るよう要請する。
・厚生労働科学研究事業の活用等により、精神医療審査会機能の評価を行う。
・精神保健指定医に対する研修の充実等により、措置入院や医療保護入院の要否の判断等の一層の適正化を図る。4)精神保健医療福祉関係職種の確保と資質の向上<現状>
・精神科を標榜する医師数、精神病院に勤務する看護職員数(常勤)は増加している。精神保健福祉士は、平成9年に資格制度が創設されて以来、順調に増加している。
<方向>
・精神保健・医療・福祉に携わる医師、看護職員、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理技術者等について、その確保と資質の向上を図る。
<具体的な対応等>
・医師臨床研修の必修化により、精神疾患を含むプライマリケアの基本的診療能力の向上を図る。
・精神保健指定医の資格審査を引き続き厳正に実施するとともに、指定医研修内容の充実により、資質の確保向上を図る。
・看護基礎教育及び卒後教育の充実等により、看護職員の資質の向上を図るとともに、看護職員の確保を図る。
・社会復帰施設職員に対する研修を引き続き実施する。5)心の健康対策の充実
@精神障害及び心の健康問題に関する健康教育等
<現状>
・保健所、市町村において、心の健康づくりに関する知識や、精神障害に対する正しい知識の普及・啓発を実施している。
・小・中学校、高等学校における体育・保健体育に関する学習指導要領において、「心の健康」について記載され、これに沿った教育がなされている。
<方向>
・精神障害及び心の健康問題に関する正しい知識の普及・啓発を推進する。
<具体的な対応等>
・引き続き、保健所、市町村や職域における啓発事業等を通じ、心の健康問題、精神疾患及び精神障害者に対する正しい理解の推進を図る。
・精神障害者社会復帰施設における「住民開放-交流スペース」の普及を図り、地域ぐるみで精神障害者の自立と社会参加への理解と支援を促す。
・文部科学省と連携して、児童等の健やかな心の成長を促す一助として、精神障害への正しい理解を進め、差別・偏見の解消を図る手法について開発を進める。当面、厚生労働科学研究事業(「精神保健の健康教育に関する研究」)を活用して、検討を進める。
・精神保健福祉センターにおける薬物関連問題相談事業等を通じ、引き続き、薬物乱用による精神障害について、知識の普及等を行う。
・厚生労働科学研究事業を活用し、青少年のための飲酒・アルコール問題に関する健康教育プログラムの作成を進める。A自殺予防と「うつ」対策
<現状>
・自殺による死亡者は、平成10年に、前年の23,494人から急増して、3万人を超え、その後も横ばいの状態である。特に中年男性の自殺死亡数が増加しているが、若年者の自殺も近年、増加している。高齢者の自殺死亡数も従来から多く、人ロの高齢化を考慮に入れると今後も増加が懸念される。
・自殺には多くの背景が関与しているが、自殺者の多くがその前に心に悩みを持っていたり、抑うつ状態、うつ病等の精神医学的な問題を有したりしていると指摘されている。
・自殺防止対策有識者懇談会の「中間とりまとめ」では、自殺予防対策の理念が確認され、うつ病等対策及び心の健康問題に関する国民への普及一啓発が早急に取り組むべき対策として位置付けられた。
・厚生労働科学研究事業においては、地域等におけるかかりつけ医、保健師等による自殺防止のための介入手法等の検討や、自殺や自殺防止の実態把握が行われている。
・職域においては、「事業所における労働者の心の健康づくりのための指針」の普及を通じ、メンタルヘルスの充実が促されている。
<方向>
・自殺防止対策有識者懇談会の検討を踏まえ、「うつ」対策を中心とする自殺予防に着手する。
<具体的な対応等>
・自殺を予防するためには、自殺を考えることや、抑うつ状態、うつ病などの心の健康問題は、誰もが抱えうる身近な問題であることを国民一人一人が認識することが重要であることから、この点について国民への普及・啓発を実施する。
・「うつ」対策として、抑うつ状態、うつ病等を早期に発見し、早期に適切な対応ができるように、地域保健医療福祉関係者向けマニュアルを作成・普及することを検討する。
・職域における心の健康づくり体制の整備及び自殺予防マニュアルの普及等を推進する。
・引き続き、厚生労働科学研究事業の活用等により、適切な自殺予防対策の基盤として、自殺死亡、うつ病の有病率、相談内容等の自殺に関する実態把握を行う。
・これらの自殺防止対策を、国立研究機関等が中心となって、精神保健福祉センター、保健所、救命救急センターを含む医療機関、事業場等との連携により多角的に推進する。B心的外傷体験へのケア体制
<現状>
・被災者・被害者の身近な地域において、災害・事件等の性質に応じ、関係者が連携して、PTSD、(心的外傷後ストレス障害)等に対する精神的ケアを実施している。
・通常の地域精神保健医療体制では対応困難な場合には、関係省庁等の連携のもと、スーパーバイズ等を行う専門家の派遣、各方面への応援要請などが適宜実施されている。
<方向>
・種々の災害・事件等が生じた際に、適切に精神的ケアを実施する対応体制の確保を進める。
<具体的な対応等>
・犯罪被害者や災害被災者のPTSD等に対する専門的なケアを行う人材を確保するため、医師、看護職員、精神保健福祉士等を対象とするPTSD専門家養成研修を引き続き行うとともに、研修修了者の名簿を関連する行政機関に配布し活用する。精神保健福祉センタ「保健所、医療施設等でこれらの専門家を活用する。
・厚生労働科学研究事業により、地域精神保健医療従事者向けの対応マニュアルを作成中であり、その普及に努める。
・広域、大規模又は特異な災害や事件等であって、通常の地域精神保健医療体制では対応が困難な事例の発生時において、当該地域の専門家の活動に対する技術的支援・助言・研修などの実施、他地域からの専門家応援の調整、活動状況の評価、PTSD等に関する正しい知識の普及-啓発等、機動的で適切な体制を確保するため、組織・人材活用等のあり方について、厚生労働科学研究事業の活用等により、引き続き検討する。C睡眠障害への対応
<現状>
・睡眠に何らかの問題を持つ人は、成人の約20%とされる。
<方向>
・健康日本21で掲げられている「2010年までに睡眠によって休養が十分にとれていない人の割合(1996年23.1%)、及び眠りを助けるために睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の割合(14.1%)を1割以上減少」という目標に向けた取組みを推進する。
・睡眠に問題を持つ人のうち、特に治療を要する者に対する適切な相談体制の確保を進める。
<具体的な対応等>
・睡眠に問題を持つ人のうち治療を要する者が適切に治療に至るように、厚生労働科学研究事業の成果を活用し、地域精神保健医療従事者用マニュアル等の作成及び普及を行い、保健指導の充実を図る。D思春期の心の健康
<現状>
・「社会的ひきこもり」、「キレる子」、「被虐待による心的外傷」、「不登校」、「家庭内暴力」など、思春期児童等の心の健康問題が、社会的問題と関連して注目されている。
<方向>
・児童思春期の心の健康問題に係る専門家の確保、地域における児童思春期精神医療・保健・福祉等に関わる相談体制の充実を図る。
<具体的な対応等>
・思春期の心の健康問題に対応できる専門家を確保するため、医師、看護職員、精神保健福祉士等を対象とする思春期精神保健対策研修を引き続き行うとともに、研修修了者の名簿を関連する行政機関に配布し、活用する。精神保健福祉センター、保健所、児童相談所、学校、医療施設等でこれらの専門家を活用すること等により、各施設において思春期の心の健康問題に対する相談への対応の充実を図る。
・精神保健福祉センター、保健所、児童相談所、市町村、警察、学校等、思春期の心の健康問題に関連するさまざまな機関の効果的な連携を推進するため、平成15年度をめどに「思春期精神保健ケースマネジメントモデル事業」の結果を基にした事例集を作成し、各地域に普及する。
・厚生労働科学研究事業の成果を基に、平成14年度中に、「社会的ひきこもり」の人を抱える家族に対するパンフレットを作成するとともに、平成15年度の初めには、地域精神保健分野における対応の指針として、10代・20代を中心とした「社会的ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン(最終版)を普及する。6)精神保健医療福祉施策の評価と計画的推進
<現状>・精神病院の状況については、厚生労働省精神保健福祉課と国立精神・神経センター精神保健研究所の協力により、毎年調査を実施し、その結果を公表している。
・地域の有病率については、厚生労働科学研究事業(こころの健康に関する疫学調査の実施方法に関する研究)において、WHOの推進する国際的な精神・行動障害の疫学共同研究プログラム(WMH)に準拠した疫学調査の実施について検討中である。
・地域や国の精神保健医療福祉の水準を継続的に評価する手法(指標)は未開発である。
・精神保健医療福祉施策の推進のため、必要な研究への補助を行っており(厚生労働科学研究事業)、平成14年度には、「こころの健康科学研究事業」を新設した。
<方向>
・客観的指標に基づき、現状や施策推進状況を評価する。
・施策の策定及び推進の過程を公開する。
<具体的な対応等>
・厚生労働省において、ここに掲げた各種施策の進捗状況を定期的に取りまとめ、本分会に報告することとし、本分会は必要に応じて施策の見直しを検討する。当面、平成14年度に実施中の、「精神障害者社会復帰サービスニーズ調査」がまとまりしだい、報告を受けることとする。
・WHOの推進する国際的な精神・行動障害の疫学共同研究プログラム(WMH)に準拠した疫学調査を、厚生労働科学研究事業に声いて検討中であり、これを引き続き推進する。
・厚生労働科学研究事業の活用等により、地域や国全体でみた精神保健医療福祉の水準を評価する手法(指標等)の開発を推進する。
・既存の統計資料については、都道府県・指定都市別の比較可能な形で提供を進める。
・引き続き、厚生労働科学研究事業(こころの健康科学研究事業等)により、精神保健医療福祉施策に資する研究を推進する。
-都道府県・市町村における精神保健医療福祉施策についても、客観的な指標を活用した計画的な推進や、企画・立案の場への当事者の参画等による当事者の意見の十分な反映について必要な助言等を行う。
【参考資料】
○制度面では、法改正等により次の対応が行われてきた。
・精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)の法定化、精神障害者社会復帰促進センターの設置(平成5年精神保健法改正)
・障害者基本法の施策対象である障害者の範囲に、精神障害者を明確に位置付け(平成5年障害者基本法)
・法律の名称変更(「精神保健法上を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法という。)」に改正)、地域精神保健福祉施策の充実、精神障害者保健福祉手帳制度、精神障害者福祉ホーム等の創設(平成7年改正)
・障害者基本計画(平成5年)及び障害者プランの策定(平成7年)
・精神保健福祉士法の制定(平成9年)
・精神医療審査会の機能強化、精神保健福祉センターの機能拡充、精神障害者地域生活支援センターの創設、在宅福祉事業に居宅介護等事業(ホームヘルプ)と短期入所事業(ショートステイ)の追加、福祉サービスの利用に関する相談助言等を市町村中心とする仕組みに変更(平成11年精神保健福祉法改正、平成14年度施行分)○患者数、施設数等の状況は次の通りである。
・精神障害により医療を受けている者の数は、長期的に増加傾向にあり、平成11年に204万人(患者調査をもとに、厚生労働省障害保健福祉部において精神障害者の状況を総患者数推計の手法で推計。)。
・精神病床入院患者のうち、約7万2干人が「受入れ条件が整えば退院可能」とされている(平成11年、厚生労働省・患者調査)。
・この7万2干人の内訳は、次のように推計される(平成11年患者調査をもとに、厚生労働省障害保健福祉部において算出したもの)
・症状性を含む器質性精神障害を有する者約8千人
・その他の精神疾患を有する若年者(概ね55歳未満)で、比較的短期の入院のもの(概ね5年未満)約1万9千人
・その他の精神疾患を有する若年者(概ね55歳未満)で、比較的長・期の入院のもの(概ね5年以上)約1万1千人
・その他の精神疾患を有する高年齢者(概ね55歳以上)約3万4千人
・精神保健福祉手帳被交付者は、1級53,250人、2級127,847人、3級38,057人、計219,154人(平成13年度末現在)。
・精神病床数は、平成5年をピークに漸減し、平成13年10月に357,385床(厚生労働省-医療施設調査)。
・精神科標榜診療所数は増加しており、平成11年に3,682ヶ所。
・精神科を標榜する医師数(重複計上した者を含む。)は12,363人、医療施設に従事する医師数に占める割合は5.1%で徐々に増加している(平成12年、厚生労働省医師・歯科医師一薬剤師調査)。
・精神病院に勤務する看護職員(常勤)は、平成12年6月30日現在、看護師51,249名、准看護師50,062名で、平成10年(看護師49,976人、准看護師48,924人)に比して増加している(精神保健福祉課調べ)。
・精神保健福祉士は、平成9年に資格制度が創設されて以来、順調に増加し、資格取得者は11,825名となった(平成14年4月末現在、精神保健福祉課調べ)。○障害者プラン関係
・社会復帰施設は、現行障害者プランによって大幅に増加し、平成14年度(見込み)で、生活訓練施設5,440人分(達成率91%)、福祉ホーム2,860人分(同95%)、授産施設5,980人分(同66%)、福祉工場480人分(同27%)、地域生活支援センター397ヶ所(同61%)。
・居宅生活支援事業についても、現行障害者プランによって大幅に増加し、平成14年度(見込み)で、ショートステイ施設218人分(達成率145%)、グループホーム5,225人分(同103%)。
・平成14年5月に都道府県等を通じて調査したところ、事業開始済み又は平成14年度中に実施予定の市町村数は、全市町村数3,242のうち、居宅介護等事業(ホームヘルプ)2,286(70.5%)、短期入所事業(ショートステイ)1,459(45.0%)、地域生活援助事業(グループホーム)1,373(42.4%)。
・公営住宅を活用したグループホームは、全国で44戸(平成13年度)である。
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