「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!
2002年12月1日
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」の審議に関わる議員の皆さま
多摩あおば病院
精神科医 中島 直
TEL:042-393-2881FAX:042-393-2880
E-mail:CZX00547@nifty.ne.jp私は、去る7月9日の法務委員会厚生労働委員会連合審査会に参考人として呼ばれ、若干のレポートをさせていただいた中島と申します。精神科医で、日本精神神経学会・精神医療と法に関する委員会の委員もしています。「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」は前回の国会で継続審議となりましたが、今国会で審議されており、「修正案」なるものが出され、場合によっては採決がなされる可能性があるとのことで、大変危機感を持っています。以下に私の見解を述べさせていただきます。
7月9日に私が述べた点については、何ら反論もなされず、「修正案」でも考慮されていません。お持ちかとも思いますが、別メールで送る、7月9日の私のレジュメ、および速記録をご覧いただければ一目瞭然かと思います。そこに出席していた他の精神医学者も、私の方からは論議を求めたにもかかわらず、それをあえて避け、別の論点を主張するだけで逃げていました。
繰り返しますが、そこで私が主張したのは、一つは「再び対象行為を行うおそれ」の判定は不可能であり、欧米の研究をもとにしても、「真の対象者」より多くの「本当は対象でない者」を拘束することとなるということですし、もう一つは、新法案は、迅速な医療が保障されず、また医療の継続性が寸断されるなど、医療面でもマイナス面が大きく、本人のためという視点でも、あるいは仮に再犯予防という視点に立つとしても、現行より改悪となるものであるということでした。
「修正案」では、「入院をさせて医療を行わなければ心神喪失または心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」を「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合」に改めることとしていますが、「同様の行為を行うことなく」と限定付きの「社会に復帰」を目指す以上、やはり再犯予測およびその予防が求められている点では全く変化のないものと言わざるを得ません。
現行の措置入院において「自傷他害のおそれ」が判定できているのだから、本法案における再犯のおそれも判定できるのだ、とする主張も見受けます。しかし、この両者は別物であることを、すでに私は7月9日に述べています。そもそも、この法案が必要であることを主張する人は、現行の措置入院で不適切な退院があることをその論拠の一つとしているのであり、それにもかかわらず上記のような主張をするのは矛盾と言わずして何でしょう。
また治療に際して重視すべき迅速性、地域性は、この法案に基づく医療では破壊されます。修正案が「この法律による医療」という文言を入れながら、その内容を明確にしていないことは、さらにこの問題の深さを示すものです。
現在の精神科医療には種々の問題があります。司法と関連する領域にも大きな問題があります。私は精神医療審査会の権限強化と司法・医療双方にわたる調査を提案していますが、厚生労働省は精神障害者の人権に関して無頓着であり、また精神科医療全体の充実を怠っています。法務省・厚生労働省はいろいろな口実をつけて情報を出すことを拒みます。このまま新しい制度ができれば、さらに情報は閉ざされることが容易に予想されます。国会への報告義務をつけても、プライバシーに関わるからと重要な点が報告されないことになることは明らかです。
今以上に精神科医療をひどくしないために、諸先生方のご理解とご協力を切に求めます。
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