「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない! 心神喪失者等医療観察法案に関する自民党・与党法案修正(案)ペーパーを受けて
平成14年11月15日
日本精神神経学会 精神医療と法に関する委員会委員長 富田三樹生
本日、衆議院法務委員会理事会で自民党が法案に関して修正案ペーパーを出し、与党は了承済みとのことです。結論を先に言えば、この修正案は修正案足りえず、かえって事態を悪化させるものです。
1 「第42条第1項第1号等に規定する入院決定の要件等について」
この修正案の最も重要な点であり、「入院をさせて医療を行わなければ心神喪失または心神耗弱の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」を「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合」に修正するとされています。この修正が、42条以外の33条(検察官による申し立て)37条(鑑定)49条(指定入院医療機関の管理者による退院・入院継続申し立て)51条(退院または入院継続の確認の決定)52条(退院・入院継続に関する鑑定)54条(保護観察所の長による処遇の終了または通院期間の延長の申し立て)56条(裁判所による処遇終了または通院期間延長の申し立て)57条(56条に関する鑑定)59条(保護観察所の長による再入院申し立て)61条(裁判所による再入院決定)62条(再入院に関する鑑定)64条(抗告)などその他にどう反映するか不明なままでは、修正案というに値しません。
何より本質的にこの文言は「同様の行為を行うことなく」とされており、基本的には理事会・当委員会が指摘してきた不可能な再犯の予測が含意されているばかりではなく、その予防という更に困難な課題を要求するものとなっています。
修正後の案では「医療を受けさせる」と更に治療可能性については全く考慮していない表現となっています。
すなわち、この修正案は、実際には改悪というべきです。2 上記以外にも、本修正案には以下のような問題が指摘され、到底修正案とはいえないものです。
第1条関係(目的)
修正案は第1条第1項を修正しておらず、再犯の防止を目的としていることは不変です。
第13条関係(合議において意見を述べる義務)
修正案第1項の裁判官の意見は何に関する意見であるのか不明です。
修正案第2項精神保健審判員の意見は何に関する意見であるのか不明です。
結局、合議体の目的及び責任性をあいまいにする結果となっています。
第20条関係(精神保健観察官)
修正案は「精神保健観察官」を「社会復帰調整官」と置き換えただけであって、その本質は全く変わっていません。
第30条関係(付添人)
修正案で弁護士である付添い人が付される場合がわずかに拡大しますが、本質的な変更はありません。
第31条関係(審判期日)
修正案で一見精神障害者の状態に関する配慮が広がったようですが、31条全体を見れば、実質は、本人不在で審判が進められる機会が広がるに過ぎません。
第42条関係(入院等の決定)
1において述べました。
第50条・第55条関係(退院許可等の申し立て・処遇の終了の申し立て)
修正案で申し立て禁止期間はなくなりましたが、地方裁判所への申し立ては、精神医療審査会への現行の申し立てに比べて、迅速に進められるとは到底考えらません。
第81条関係(医療の実施)
修正案は言わずもがなの美辞麗句に過ぎません。
附則関係
この法案の対象とならない精神医療全般の水準の向上をこの法案の附則で謳うことに何の意味もありません。
この附則は精神医療改善に対して政府を拘束するものになりません。
刑事手続きに関わる精神障害者の問題に関しては、司法と医療の現状の問題点についての七者懇の指摘にも実質的な回答を与えないまま、施行5年後の法案の整備その他所要の措置は「必要があると認めるとき」にその検討を限っています。3 本修正案は我々が指摘してきた重要で本質的な問題を一切考慮していません。
1)予測不能性の問題
1で問題をすり替えしたに過ぎないことは既述しました。
2)検察官の起訴前責任能力判断の問題
全く考慮されていません。精神病質が完全責任能力であるという154国会での答弁は犯罪白書と判例、厚生科学研究から虚偽です。
3)治療可能性の問題
法案(と修正案)の構造からは元来問題外におかれています。
4)矯正施設の実態の密室性と治療の拡充の問題
七者懇が一致して求めた、矯正施設の実態の開示と治療の充実は全く顧慮されていません。
自民党修正案PDFファイル 衆院法務委員会理事会(2002年11月15日) 要望書 国立精神療養所院長協議会(2002年10月23日) 要望書 精神医学講座担当者会議 (2002年10月28日)
2002年11月6日 入手法務省・厚生労働省
- 【論点整理】
【心神喪失者等医療観察法案の必要性について】
【民主党提案の内容について】
【指定入院医療機関への入退院の判定について】
第154回国会衆議院法務委員会・厚生労働委員会連合審審査会議事録 (人格障害関連)法務省・厚生労働省の「論点整理」を批判する!
2002年11月6日
- その1「論点整理」について 弁護士 大杉光子
- その2 論点整理ペーパーの批判 「再び対象行為を行うおそれ」を「重大な他害行為を行うおそれ」へ変更することについて 吉岡隆一
2002年11月7日
- その3「法務省・厚生労働省ペーパー」について 日本精神神経学会・精神医療と法に関する委員会委員 中島 直
「心身喪失者医療観察法案」 国会審議等 池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案) 精神医療ニュースへ 全国精神医療労働組合協議会 事務局 : 〒604-8854 京都市中京区壬生仙念町30-2 ラボール京都4F 京都民間医労連気付 Tel/Fax: 075-811-5672 E-mail zenkoku@seirokyo.com
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