「心神喪失者医療観察法案」強行採決弾劾! 法案は廃案しかない!
平成15年6月4日
内閣総理大臣 小泉純一郎 殿「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」 に関する強行採決を抗議し、同法案の廃案を求める要請書 障害と人権全国弁護士ネット
代表者 竹 下 義 樹昨年の通常国会に提出された「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」は、当事者団体、家族会、精神科医療団体、法律家団体等の反対によって一旦は継続審議となりましたが、昨秋の臨時国会では衆議院で強行採決されました。さらに、参議院法務委員会においても、与党はいったんは採決の提案を撤回したにもかかわらず、まだ十分に審議も尽くされていない状態のまま、突然の緊急動議により強行採決されました。
この法案は、殺人、放火、強姦、強制わいせつ、強盗、傷害にあたる行為を行い、心神喪失又は心神耗弱により、不起訴処分又は無罪等とされて刑務所に行かないことになった者について、裁判官1人と精神科医1人の合議により、強制入通院の決定を行うというものです。
このうち、矯正入通院を決定する要件については、「精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合」を「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合」に変更するという修正がなされました。しかし、「同様の行為を行うことなく」という文言や裁判官関与の構造が維持されている点からすれば、再犯予測が必要とされる点は何ら変わっていません。不可能な再犯予測を無理に行うことによって、間違って拘禁される人を必然的に生み出すという問題点も全く変わっていません。
しかも、事実認定手続きには反対尋問権などの当事者としての権利がなく、遡及処罰の禁止、二重処罰の禁止など憲法上保障されているはずの適正手続きも保障されていません。
そもそも、精神障害者の犯罪率・再犯率 は、それ以外の人の犯罪率・再犯率よりも低いとされています(精神障害者の再犯率は15%程度ですが、一般の受刑者では55%を上回ります)。それにもかかわらず、精神障害者に対してだけ再犯予防のための特別な立法をすること自体が差別であり、「精神障害者は危険である」という偏見に基づくものといえます(精神障害者は一般人口の中に2〜3%存在しますが、犯罪で検挙された者の中には0.6%しかいません)。このような立法によって生じるのは、ハンセン病患者に対する「らい予防法」の場合と同じく、無期限の強制隔離による「人生被害」(現在でも33万人以上の人が拘禁され、14万人以上の人は5年以上拘禁され、約10万人の人が入院の必要がないのに拘禁されています)であり、差別・偏見のさらなる助長です。
今必要とされているのはこのような法案ではなく、医療法特例の撤廃と精神科医療の質の向上による一般科医療への統合とともに、閉鎖病棟ではなく地域で生活できる福祉の充実です。
私たちは、精神障害者に対する社会の理解深まるとともに、すべての精神障害者の尊厳が保障され、誰もが安心して暮らすことのできる社会の実現を目指し、この法案を廃案にすることを強く求めます。
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