「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!
心神喪失者等処遇法案に対する刑事法学者の意見
2003年6月3日私達は、昨年5月20日付で「心神喪失者等処遇法案に対する刑事法学者の意見」を発表し、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」(以下、「法律案」という)に対する刑事法学的観点からの憂慮の念を表明した。
この法律案は、現在、参議院法務委員会で審議されている。これは、政府提案の原案が衆議院で修正されたもので、「継続的な医療を行わなくても心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれ」という文言を、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要」と修正した。
これについて、提案者は、医療の必要性を強調したものであるというが、「再び対象行為を行うおそれ」という再犯の予測は科学的に不可能であるとの強い批判をかわすために行われたものである。
この修正は、そのまま、処遇決定の三段階すなわち検察官による申立て、鑑定入院命令及び処遇決定の要件とされることになった。すなわち、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要」が明らかにないとの判断を、申立てを行う検察官や鑑定入院命令を発する地方裁判所の裁判官(判事補でも可)が行うことになる。医療従事者でもない検察官や裁判官にそのような判定を行う能力はないといっても過言ではない。彼らは、何を根拠に医療の必要性を判断するのであろうか。
又、法律案は、医療の必要性を強調し、重大な他害行為を行った者に対しては十分な医療を施すというが、これは、精神障害者を差別するものであり、すべての障害者に同等な医療を行うべきである。十分な医療が保障されるのであれば、精神の障害は改善されるであろう。
私達は、刑事法を専攻する者として、精神障害者の問題は、刑法の問題ではなく、医療や社会の問題であることを2002年5月20日の「声明」で強く訴えた。この観点は今でも有効である。それに加えて、上記のような重大問題を内包する法律案には反対せざるを得ない。
理性の府である参議院は、多数者の権利を振り回すことなく、精神障害者という少数者の人権に配慮した「あるべき社会のあり方」を追及すべきであり、この法律案については、いったん廃案とし、改めて「あるべき社会」の観点から根本的に考え直すべきである。
以上、表明する。呼びかけ人
大阪市立大学教授 浅田 和茂
関東学院大学教授 足立 昌勝
専修大学教授 小田中總樹
龍谷大学教授 村井 敏邦
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