「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!
2003年6月2日
法務委員会そして厚生労働委員会の委員の皆様へ
長野英子
たびたびのメールで失礼いたします。精神障害者本人の長野英子と申します。
ご承知の通り今参議院で、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法案(以下「法案」とする)」が審議されております。
私(たち)は精神障害者本人の立場として、この法案を決して認めるわけにはいかないと考え法案廃案を目指したたかってまいりました。各地の仲間はそれぞれ必死の闘いを続けています。私は衆院の法務・厚生連合審査においても参考人として反対意見を述べました。
ところが私たちの声を全く無視した形で参議院では審議が急速にすすみ、すでに与党は6月3日に採決をと主張していると聞きます。
この法案は私たち精神障害者を人間でない、人権はない、と宣言するものだと私は考えます。精神障害者のみを「再犯防止」を目的として「再犯のおそれ」を要件として予防拘禁することは差別以外の何ものでもありません。国際的にも障害者人権条約作成に向け国連が動いているときに、ただでさえ国際的批判を浴びているこの国の精神障害者の隔離状況に屋上屋を架し、新たに隔離の差別立法をすることは決して許されることではありません。
今国会議員の皆様に問われているのは、精神障害者差別を許すのか否か? 新たな差別立法を認めるのか否か?という問いかけです。
元ハンセン病患者の隔離に対して立法の不作為を問われた国会が、今再び差別ゆえに私たちを隔離し予防拘禁する差別立法を行おうとしているのです。
国会議員の皆様も私たち精神障害者は人間である、人権があるという認識をお持ちのはずです。その見識にたちまずこの法案を廃案にすることを私(たち)は求めます。
付記 法案体制下では精神医療は医療ではなくなってしまいます。
漏れ聞くところによるとこの法案により対象者を収容する施設は塀と堀に囲まれ、全室独房という重警備施設であり、完全に独立した特別病院となるとのことです。
29日の参院法務委員会で、「修正案」提出者の塩崎恭久議員は恐るべき法案運用方針を以下のように発言しています。なぜ措置入院があるのにこの法案を作るのか、といわれれば、私は厚生労働省にもこの新法と措置入院が有機的に一体化するよう話してきた。またこの法案の施設での手厚い医療は新法の対象者だけではなくて、重い患者さんもこの法案の手厚い医療を受けられるようにするべきである。この法も対象者以外の人のこの施設入院を制度的に排除していない。(中継を見ながらの長野メモ)
この病棟が措置入院患者も受け入れるとすれば、措置入院患者のうち法対象とならないもの(たとえば出獄したもの、軽微な犯罪にあたる行為をしたもの、さらにはなんら犯罪にあたる行為をしていないものも)もこの重警備の隔離施設に監禁されることになります。
おそらく一般の精神病院で少しでも「厄介な患者」とされた人はここに追放されることになるでしょう。そしてどの精神病院でも入院患者は「逆らえば特別病院送り」と脅されるようになるでしょう。措置入院患者は入院先を選択する権利がなく、知事の権限で入院先を指定できます。かつて反対運動で頓挫した「処遇困難者専門病棟」そのものです。
1 恐怖の対象としての特別病院
人としての尊厳をもち人権を尊重されることは医療の前提であり回復の前提でもあります。法対象者のみならずこの施設に入れられたものは、不定期の拘禁の脅しの中で医療への信頼などもてるはずもなく、一切の希望をたたれ絶望に絶望を重ねることしかできません。現在ですら入院患者は拘禁下でものも言えず人権の主張すら症状あるいは問題行動と見られがちです。法対象者のみならず、すべての入院患者はこの体制下では精神病院従事者に服従する以外に生きる道がなくなり、私たちの人としての尊厳、人権は完全に否定されます。それは回復への機会を奪うものです。
英国では特別病院は犯罪にあたる行為をしたものだけではなく一般の精神病院で「手におえないもの」とされた人「重度の保安体制が必要なもの」とされた人も収容されています。それゆえ特別病院が満杯となり、その解決のため地域保安病棟が作られましたが、そこに一般精神病院から流れ込む患者が増大し、当初の予定を上回る増床に告ぐ増床が図られ、特別病棟にいる必要のないとされた患者も行き先がなくいたずらに特別病棟に監禁され続けています。
この法案体制下では同様の現象がおきることは明らかです。2 法案指定施設は単なる拘禁施設となる
また政府はこの特別病院は「手厚い医療を保障し社会復帰を促す」と主張していますが、その内容は一切不明であり、また今現在の国公立病院の人員欠員すら解決できないというのに、医療スタッフがそろうとは考えられません。また「強制医療と人身の自由の制限を伴うから」裁判官が関与すると説明していますが、それならなぜ定期チェックのときだけではなく退院の判断にも裁判官が関与するのでしょう。本当に収容者の医療と社会復帰のための施設・制度であるなら、病院の主治医が医療上の判断で退院させればいいだけです。
英国の特別病院でもすでに主治医も病院管理者も入院継続を必要なしとしているのに、裁判所が退院を認めない患者が沢山でてきています。
この国は7万とも10万人とも言われる「社会的入院者」を作り出しましたが、さらにこの法案はいわば「治安的理由による社会的入院者」を作り出してしまいます。医療が入院不要としている人を拘禁し続けて、医療側はいったい何をするというのでしょう。特別病院なるものはここにおいて単なる拘禁施設に成り下がり、医師その他のスタッフは単なる牢番に成り下がってしまいます。
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