「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!
国会審議の幕引きに反対する−長期収容にならない指定入院医療機関は存在しない 京都大学医学部精神医学教室
吉岡隆一現在参院審議中の心神喪失者等医療観察法案の採決が6/3にもくろまれている。
155国会修正案の与党側からの説明=条文の棒読みにひきつづき、また、詭弁と虚偽が重ねられている。
「不当な長期入院にならない」という政府側の「確信」は、政府さえ確信できない筈のものであることを、法案推進者の発言から証明しよう。1 長期入院は本法案下では要請され、現実化され、合理化される。
再犯予測が措置と同様に政府の言うとおり可能ならば、措置入院の現状中20年以上の措置1/4が存在するその結果もまた引き継がれねばならず、同じ長期入院となる。厚生科学研究が示したように(措置入院制度のあり方に関する研究)すでに重大犯罪を行なった者の措置入院日数はそれ以外よりも長くかつ他の入院形態で入院継続がほとんどである。
立法理由は重大犯罪に心神喪失耗弱者が多く含まれることにおかれている(155国会)。
日精協は、現在の措置入院は重大犯罪者を厄介払いなどしていない、短期に不当な退院をさせていないと述べた。(精神神経学雑誌104巻1号)岩井参考人は156国会で、対象者の30%に比較的最近の措置入院歴があることを説明して、措置入院は再犯防止には短期過ぎると示唆した。
したがって本法案下の入院は、措置入院ではまかなえない長期入院を要請されており、再犯予測は措置入院と同じく可能なのでそうなる現実性しかなく、それが措置入院の長期の現状からまた合理化されるのである。
2 長期入院は本法案下でも諸外国と同じくもたらされる。
保安処分を持つドイツで入院5-6年と聞きドイツで再犯予測は可能と聞いたと何度も答弁した坂口大臣はなぜ日本の現状に立って率直な答え(わが国措置入院の現状は本法の長期入院を正当化する、20年以上も可能である)をしないのか。
3 法案のシミュレーションは破綻している
対象者の6割程度が現状で措置になり本法案入院者の対象者数はそれを参考にできる旨の答弁から、少なく見積もって200を入所させるとしよう。現在予定のの整備病床数は300程度である。1.5年で満杯になる。現在でも重大犯罪行為者の全入院期間(措置とそれに続く他の入院期間)は、1.5年より長いものを多く含む。(厚生科学研究では措置入院期間は半年を超えその多くが後に別の入院になることが示されている。)
結局病床は満杯につづき増設しなければならず、増設しなければ、通院医療機関のケアに移され、そこでの再犯(残念ながらこれは数学的に不可避である。精度の高いという再犯予測でも偽陰性者は存在するから)は再び増設の圧力の嵐を生むしかない。日本の心神喪失者耗弱者の大多数(8-9割)は精神障害に基づく再犯をしない。(山上の論文を参照せよ。)彼らをこの法案の元に処遇することは、危険性の観点からさえ不当な拡大と過剰収容を招く。
塩崎委員は156国会で、対象者以外の入院者を本法案の処遇に置くことを考える旨発言した。増設に告ぐ増設はここからも必然になるだろう。
4 予算案には重保安病院の箱物への財政投下ばかり突出している。
本法案のもたらす地域ケアは、裁判所との書類のやり取りというノウハウをもつ社会復帰調整官という名前と住居指定や再入院の強制枠組みしかもたない。
これは長期入院のインセンティブでしかない。
予算案はどうなっているのか?現在の長期入院に対するコミュニティケアの欠如がそのままで、短期化するわけはない。
入院者のセーフガードを整備した精神保健福祉法によって、長期入院が減少したのではない。入院中の治療の充実は、それだけでは地域ケアには結びつかない。
同じことがこの法案でも起きるのだ。5 本法案の処遇下に置かれない対象者の問題
再犯の危険因子のうち最も再犯に関係するのは諸外国の研究を見てわかるとおり、精神病質や犯罪歴である。精神病質に基づく犯行を行ったものは本法案に入り込まざるを得ない。これらの因子を持つものを対象者から選抜することは、再犯予測という言葉を避けたいものにとっても、本法案の元では、必然的なものである。
指定入院医療機関はこれらのものによって埋め尽くされるだろう。やがてイギリスと同じく、施設内での不祥事も起こるかもしれない。
選抜の結果本法案の処遇に入らないとされた対象行為を行ったものや処遇終了者は、一般医療で処遇されるのか。それも不明である。一般医療で処遇しなければ、ますます過剰収容や重保安病院の増設は避けられないはずである。1-4に見た入院長期化がそれを促進するだろう。一般医療で引き受けるには日精協の「協力」が必要である。
議員諸氏は、この点を厚生労働省にぜひ問いただすべきである。面白い答えが聞けるだろう。
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