全国精労協Home>資料庫>国会審議等

「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!


2002年11月11日

心神喪失者等医療観察法案の妥協案への批判

富田 三樹生(日本精神神経学会・精神医療と法に関する委員会委員長)

 この所、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」(心神喪失者等医療観察法案)に関し、これが強い批判にさらされていることを受けて、幾つかの妥協案が出て来ている。精神医学の世界からは、

私は極めて危険な動向として注目しており、これらの動向に明確に批判しておく必要があると考えている。以上(1)〜(4)につき、論点ごとにコメントを加えていきたい。

1.法の目的、または対象について。
 まず、(3)は、42条第1項一号等の「再び対象行為を行うおそれ」を「重大な他害行為を行うおそれ」にするというが、これはせいぜい単なる言い換えにすぎず、修正と呼べるものではない。(1)は再犯予防は結果に過ぎず、目的は「疾患の再発防止」であるとするものであるが、そもそも法の目的に「同様の行為の再発の防止」(第一条)と明確に謳われている以上、これは強弁以上の何物でもない。(4)も、入院要件として「再犯のおそれ」ではなく「重大な他害行為を行うおそれ」とするというのは上述したとおり言い換え以上のものではあり得ず、また「手厚い専門的な医療が必要な者」というのは「手厚い専門的な医療」がどんなものであるかが明確にされて初めて議論に値しうるものであり、これが全く明らかにされていない以上、議論することは全くできないと言うしかない。
 もし、本当に法の対象者を変更するつもりなのであれば、第一条(目的)、第37条(対象者の再犯予測鑑定)、第42条(裁判所での入院等の決定)、第49条(指定入院医療機関の退院、入院継続の申し立て)、第52条(対象者の退院・入院継続の再犯予測鑑定)、第54条(保護観察所の長の処遇の終了、または通院期間の延長申し立て)、等を始め、多くの条文を全部修正しなければならない。もしそうであるならば、この法案は修正という程度のものではない。これを一旦廃案にして、一から出直して議論するのでなけらばならない。
また、もしそうなら、裁判所−保護観察所関与(行政−都道府県ではなく裁判所−国)を除けば、措置入院と異ならないものとなろうから、精神保健福祉法−措置入院制度はどうなるのか。精神科医療の枠組み全体の問題である。
 私たちは怒りをもって訴える。国会議員−政党は闇の中の取引ではなく、国会の開かれた場所で議論をすべきである。

2.裁判所−合議体の役割、有り方、再犯予測について。
 (2)の要望項目の3、(3)の「現状の問題点」の@などである。しかし、再犯予測は不可能であることは、日本精神神経学会・精神医療と法に関する委員会が「再犯予測についての報告」(http://www.jspn.or.jp/9ken.html)で詳細に指摘した。国会の議論の枠組の水準で云えば、再犯を犯すとされるものの八割が犯さないという推測がなりたつ。「おそれ」の推測は丁半賭博よりももっと確率が落ちるのである。できないことを役割を変え、医師の責任軽減のため((3))に他の人を加えても、できないものはできないのである。再犯予測がかかえる問題とはそういうものなのである。

3.人格障害(精神病質)等が法案の対象とならいか。
「論点整理」では、人格障害「のみ」では、対象にならない、としている。しかし、犯罪白書や判例を見れば、人格障害、ないし精神病質のみを有する者が多数、心神喪失や心神耗弱とされ不起訴、減刑等とされていることが明らかである。政府は虚偽の答弁をしているのである。(1)も(2)も、治療適応性のない知的障害、薬物中毒はこの法の対象にならないよう「要望」している。しかし、「心神喪失」「心神耗弱」は治療適応性とは直接関係のない概念である。また、再犯予測は、人格障害を要素とした場合にようやくいくらかの数値(それでもとうてい「予測できている」とは言えないが)を残すことができるものであり、これを除くとさらに低い数字しか示せないのである。

4.現状の問題点について。
精神科医療について

 (3)の論点整理において、「法案の必要性について」で現状の措置入院制度の問題点をあげつらっている。こういうのを無責任というのである。措置入院の制度と運用を含む精神科医療全体の無残さを作ってきたのは政府自らであって、この法案のようなものが無かったからでは全くない。精神科医療の「底上げ」は、このような法案とは関係なく行うべきものである。
司法制度とその運用について
 検察が不起訴等にするその、起訴前の種々の問題点については論点整理では全く触れていない。矯正施設についての問題も全く触れていない。報じられているような矯正施設での人権抑圧、刑事司法の人権抑圧について、多くの批判がなされて来たが法務省は殆どまともに取り上げたことがない。司法の無謬主義、秘密主義が矯正施設の医療にも直結して問題が指摘されてきたことである。この法案は、これらの無残な問題を温存する。
 (2)は、なるほどこの問題に「7」として触れている。しかし何らの具体的な問題点の指摘や提言を含むものではなく、むしろこれらの問題に言及すれば法案の成立を絶対支持する、と表明しており、司法の現状に迎合するものでしかない。


2002年11月6日 入手

法務省・厚生労働省

【論点整理】
【心神喪失者等医療観察法案の必要性について】
【民主党提案の内容について】
【指定入院医療機関への入退院の判定について】
第154回国会衆議院法務委員会・厚生労働委員会連合審審査会議事録 (人格障害関連)

法務省・厚生労働省の「論点整理」を批判する!

2002年11月6日 

その1「論点整理」について 弁護士 大杉光子 
その2 論点整理ペーパーの批判 「再び対象行為を行うおそれ」を「重大な他害行為を行うおそれ」へ変更することについて 吉岡隆一

2002年11月7日 

その3「法務省・厚生労働省ペーパー」について 日本精神神経学会・精神医療と法に関する委員会委員 中島 直 



「心身喪失者医療観察法案」 国会審議等

池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)


精神医療ニュースへ

全国精神医療労働組合協議会

事務局 : 〒604-8854 京都市中京区壬生仙念町30-2

ラボール京都4F 京都民間医労連気付

Tel/Fax: 075-811-5672

E-mail zenkoku@seirokyo.com

全国精労協ホームページ