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国会審議の論点

2002年5月28日〜6月28日

【政府案】心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案


【民主党案】精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案
      裁判所法の一部を改正する法律案
      検察庁法の一部を改正する法律案

第154回通常国会(2002年)
5/28:衆議院本会議
6/7:衆議院法務委員会
6/28:衆議院法務委員会



氈@現状認識
 1.経緯・背景


【森山法務大臣5/28趣旨説明】
 法務省の調査によると、精神障害によって心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行った者であって、不起訴処分となって、または無罪の裁判を受けたというような者の数が、年間約300数十人いる。これらの者の多くがその行為当時治療を受けていない、あるいは通院による治療も受けていない。


【古田刑事局長6/7答弁】犯行当時必ずしも治療が十分には行われていなかったというケースがしばしばあり、こういう事態が二度と起こらないようなきっちりした医療の継続が確保されるような処遇システムが必要。

【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 昨年6月8日に大阪教育大学附属池田小学校で起こった児童殺傷事件を精神障害によるものと早合点した小泉首相は、事件の翌日には既に刑法の見直しに言及し、日本の各地で精神障害者がさまざまな攻撃を受け、さらなる偏見にさらされる原因をつくった。
池田小学校の事件は、心神喪失などとは関係がないと判断され、犯人は起訴された。それなのに政府は、みずからの誤解と偏見に満ちた決めつけを反省することもなく、さらにその勢いに乗って、短期間のうちに新たな法案まで作成してしまった。
私たちは、池田小学校事件の直後から、政府の対応を見て、危機感を強めていた。当事者、そして当事者を支える人たちの努力の積み重ねによって、少しずつ社会がノーマライゼーションの方向に向かいつつあるときに、すべての努力をぶち壊しにしかねない政府の対応に強く抗議する。
また、いつまでたっても日本社会が精神障害者への差別意識を克服できないのは、精神医療の遅れをたびたび指摘されながら積極的に何も取り組んでこなかった行政の遅れが根本的な原因であるのに、あたかも精神障害者その人に責任があるかのような風潮をつくり出したことにも、大きな憤りを感じる。

【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 この政府案は、そもそも、法務省と厚生労働省で長年取り組んできた課題であり、直接には池田小学校事件とは関係がないとしています。しかし、マスコミの報道や一般国民には、池田小学校事件がきっかけだと認識されています。そのずれをどのように考えているのか。


【坂口厚生労働大臣5/28答弁】
 法務省と厚生労働省におきましては、平成11年の精神保健福祉法改正の際の、「重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方については、幅広い観点から検討を早急に進める」べきとの附帯決議を受けて、合同検討会を設けて、精神障害により重大な他害行為をした者に対して、適切な医療を確保するための方策やその処遇のあり方について検討してきた。その後、大阪の池田小事件が起こり、そのことが影響を与えたことも事実である。

【森山法務大臣6/7答弁】
 精神医療界を含め、国民各層から適切な対策が必要であるという意見がかねてあった。そこで、保岡大臣のころからその必要性を委員会で言っており、2001年1月ごろから専門家の検討会を始めていた。何とか早くその体制を整えたいと考えていたところ、2001年6月に池田小学校の事件もあり、社会的な関心も大変高まったということが背景にあるわけだが、かねての研究を促進し、このような法案となった。

(1) 心神喪失者の重大な他害行為
【古田刑事局長6/7答弁】
 平成8年から平成12年までの5年間に、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつの数(これらは未遂も含む)だが、これに加えて、傷害、傷害致死に当たる行為、こういう行為を行ったと認められる心神喪失者などの数は、大体年間300数十人から400人程度で推移しており、その数には大きな変動は認められない。この5年間において検察庁で受理した人員の中で心神喪失者等の割合は全体としては約0.2%だが、殺人については約7.8%、放火については約8.8%、傷害致死においては約3.4%、強盗においては約0.7%、強姦、強制わいせつについては約0.4%、傷害では約0.3%となっている。
ところで、心神喪失あるいは心神耗弱と認められた者あるいはその疑いがある人による重大な他害行為事案だが、これは罪種にもよるけれども、例えば殺人でいえば親族に対するものが大変多い。それ以外では、例えば平成10年1月、大阪府の堺市内で、偶然通りかかった幼稚園児を包丁で突き刺すなどして一人を殺害し、二人に重傷を負わせるといったような事件。それから、やはり同年9月奈良県で、かねてから自分に嫌がらせをするというふうな邪推をしていて、その邪推から頭をバットで殴り一人を殺害し、一人に重傷を負わせた事件。平成11年8月大阪、通りがかりの書店の店内で、その店主を持っていたペティナイフで突き刺した殺人事件、こういうふうな事件が幾つかある。

2.精神障害者の犯罪予防 
(1) 犯罪率は低いか?

【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 一般的に、精神障害者は犯罪を行いやすいと思われているが、それは偏見。実は、精神障害者の再犯率は一般人よりも低い。例えば、殺人事件の再犯率は、一般人は28%。それに比べて、精神障害者は7%にすぎない。つまり、精神障害者の再犯率は、一般人の4分の1以下。

【古田刑事局長6/7答弁】
 殺人、放火等の重大な他害行為を行った者を含め、心神喪失者等の再犯率については、再犯率というのをどういう基準で計算するか、あるいは、これを考える上では、例えば全くすべての人が治療を受けていない状態に一たんは仮定してやるのか、あるいは、例えば入院している間は非常に再犯は当然少なくなるとか、いろいろな問題があり、その辺の成り行き調査というのが十分できないとこれは不可能。
そういう意味で正確なデータというのは大変把握しにくい状態だが、過去10年以内で、重大な他害行為を行った心神喪失者等のうち前科前歴を有している、こういう割合で見ると、平成8年から平成12年までの5年間の平均で約27.9%。一方、これらの罪で起訴あるいは不起訴となった、要するにかつてそういうことで事件処理が行われた者、これの総数で罰金以上の前科を有する者がどうなっているかというと、42.9%。ただ、計算の基準が必ずしも一致するものではない。ただ、そうは言っても、被害者が親族以外の事件、放火については、対象が自宅という事件、こういうものを除いた重大な他害行為を行った心神喪失者等については、過去10年以内に前科前歴を持っている者の割合が約39.5%ということになっている。

→→前科者の犯罪率
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
 前科がある方の事件発生数が、10年前ぐらいと比べると、パーセンテージとしては何か減っている。当初30%台だったのが最近20%台ぐらいになっている状況。

【古田刑事局長6/7答弁】
 過去10年以内で、重大な他害行為を行った心神喪失者等のうち前科前歴を有している、こういう割合で見ると、平成8年から平成12年までの5年間の平均で約27.9%。精神障害の影響のもとで行われたと考えられる事件数は、長期的に見ると減少傾向にある。一つの仮説として、精神医療が徐々に向上してきて、それによってそういう事件が減っていっているということ
はある。それともう一つは、その治療技術の発達と多分裏腹のことだが、昔に比べると、責任能力に影響があるような、そこまでの重大な事態には精神障害という面から見ても至らないケースもふえてきたのではないか。

(2) 初犯予防策
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 精神医療全体を改善してボトムアップし、精神障害の影響による重大な問題行動ができるだけ少なくなるようにする。

(3) 重大な精神障害とは言えない場合

【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 例えば刑務所で服役するということになれば、その刑の執行中に、そういう問題も十分把握した上で、それに対していろいろな働きかけを行っていくという努力を積み重ねていくことで対応する。

3.精神鑑定の現状 
(1) 簡易鑑定

【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 池田小学校事件のケースでも、被告人が過去、数々の犯罪行為を行ったにもかかわらず、安易な簡易鑑定により起訴されなかった。現行の精神鑑定制度に問題はないのか?

【森山法務大臣5/28答弁】
 検察当局においては、精神障害の疑いのある被疑者による事件の処理に当たり、犯行に至る経緯、犯行態様や犯行後の状況等について、刑事事件として処理するために必要な捜査を尽くし、事件の真相を解明した上で、犯罪の軽重や被疑者の責任能力に関する専門家の意見等の諸事情を総合的に勘案し、適切な処分を行うよう努めている。その際には、事案の内容や被疑者の状況等に応じて、行われるべき精神鑑定の手段、方法についても適切に選択しており、現在の鑑定のあり方に重大な問題点はない。
被告人が過去に起こした事件についても、事案の内容及び軽重、被害者の処罰感情等を考慮した上で、精神診断の結果も参考として、起訴、不起訴の処分がなされたものであり、安易な簡易鑑定により起訴しなかったとの指摘は当たらない。

【平岡秀夫議員(民主党)5/28答弁】
 起訴前の検察官捜査段階での鑑定は、通常、長くても一日で終わってしまう簡易鑑定の件数が多く、しかも、地域によっては、鑑定人を探すのが難しいために、鑑定依頼先が特定の精神科医に偏っていたり、司法精神鑑定の知識や経験が十分でない精神科医に鑑定を依頼していたりするというのが現実である。しかし、このような実態把握は、簡易鑑定が各地の検察庁でばらばらに行われているために、はっきりとはできていない。
また、起訴後の精神鑑定においても、鑑定をした精神科医によって診断名や鑑定意見がしばしば違うなど、適正な精神鑑定が行われているのか疑問が持たれている。そして、起訴前の精神鑑定と同じく、正確な実態把握は、裁判官任せで鑑定が行われているために、はっきりとはできていない。


【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 現在の精神病院の状況は劣悪であると、2000年10月25日の厚生委員会において、山井和則議員の質問に対して、当時の津島厚生大臣が認めている。自分がその立場になったら精神的にも打撃を受けるだろうなと思うという趣旨のことを言っている。
このように、精神医療、精神福祉の現状は非常に不十分。例えば、精神障害者は、精神福祉が不十分なため、社会的入院を強いられています。精神病院の入院患者33万人のうち2割の人は、ほかに受け入れ先さえあれば、退院が可能なのです。

【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 現行の措置入院制度が必ずしもきちんと運用されていないこと、地域における精神保健福祉体制が不十分なため、精神科受診が困難であったり、通院治療を中断するケースが少なくないこと、刑事施設等における精神医学的治療・援助が不十分かつ不適切であること、司法関係者と精神医療関係者の相互の連携協力が不十分であることなどが改善を必要とする。

(1) 精神科救急
【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
 自治体病院協議会の提言においては、「急性の精神症状に際して、どこに電話したらいいのかわからない。電話相談窓口があっても、所定の時間になれば閉まってしまう。警察を経由しなければ受け付けてくれない。精神疾患だけでは救急車も来てくれない。現状では、こうした自治体が少なくないのである」ということが言われている。そしてまた、こうした実態を踏まえて、協議会では幾つか提言をしている。例えば、精神科救急医療圏を定め、24時間対応できる精神科救急情報センターを配備する、地域の基幹的精神病院、または救急救命センターと精神病棟を有する中核的一般病院を精神科救急指定病院に指定をする、また、精神科救急指定病院と他の精神科医療機関との連携システムを構築する。

【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 精神科救急の問題で、非常に自治体からも要望が多かった、休日や夜間にも速やかに入院等のできる医療システム、こういうようなものにつきましては、平成7年度から準備して、現在、46都道府県で動いている。しかしながら、休日、夜間等に当事者等からの救急相談に適切に対応できる電話医療相談体制についてはまだ必ずしも十分ではない。
平成14年度より、精神科救急医療システム整備事業を強化して、精神科救急情報センターにおける24時間医療相談体制の整備を開始している。

(2) 社会的入院
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 条件が整えば退院可能な者は約7万人。

(3) 病床数の異常な多さ
【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 当面、7万床の病床については計画的に削減が可能。このための社会復帰対策をどうやって充実させたらいいか、現在、社会保障審議会障害者部会において検討中。
しかしながら、7万床が削減されたとしても、対人口比では、先進諸外国に比べて多い状態が続くことはまた事実であり、これはさらなる対策が必要。
マンパワーについては、これをどういうふうに評価するかは別として、ここ10年程度、臨床に従事する医師の中で精神科を専攻する医師の比率は徐々に向上しており、今5%ちょっとだが、対人口比にしてみると必ずしも少ないものではない。しかし、同じように対人口比にしてみると、病床数の方はかなり多い。そのために薄く広くて、人手がかかるような専門的医療が必ずしも十分ではない。その点については改善していかなければならない。

(4) 精神科特例
【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
 当然病床を削減して、配置基準も改善させて、今まで手薄だった精神科特例と広い意味で呼ばれてきた制度的なウエートのかけ方の少なさを、例えば診療報酬の問題を含めて直していかなければいけない。

【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 現在、精神病床は、大学附属病院いわゆる総合病院の精神病床とその他の精神病床に分けている。その他の精神病床については、療養病床と類似になっているが、実態としては、診療報酬制度において精神病院の約7割が、看護職員でいうと4対1以上という形で進捗している。
現在、社会保障審議会障害者部会精神障害分会において、精神保健、医療、福祉の総合的な計画を検討している。この一環として精神病床の機能分化を行い、その結果を踏まえて、精神病床の人員配置基準につきましても見直す。
2002年夏に総合計画を策定し、2003年度を初年度する新しい障害者計画の中に盛り込む。

(5) 診療報酬
【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
 従来、精神医療について診療報酬の評価は低いと一般的に言われてきた。14年の改正の概要。

【中村大臣官房審議官6/7答弁】
 2002年4月に診療報酬の改定をした。経済状況が非常に厳しい中、また医療保険財政が厳しい中で、診療報酬改定も史上初めていわゆる技術料についてもマイナス1.3%の引き下げが行われたが、小児医療あるいは精神医療など非常に資源の配分が必要なところについては、そういう状況の中でも配慮をした。
今回、精神医療関係では、主なもの四点の改善を行った。
第一、精神科救急入院料を新設。従来から救急入院料はあったが、特に精神医療については急性期の医療が大事で、一層の充実を図ることが必要なので、重症の精神救急患者を多く受け入れる基幹的な医療機関の評価を充実するために、精神保健指定医、看護師、精神保健福祉士等の配置が十分であり、従来から措置入院等の実績、要件を満たす病棟について、精神科救急入院料を新設して多くの点数を配分する。
第二、児童・思春期の精神医療も大事だから、成人の精神医療に比べてより手厚い医療体制が必要であるということで、看護配置、精神保健指定医の配置、精神保健福祉士の配置のほかに臨床心理技術者の配置なども求め、また、院内に学習室などを設置するという病棟についての要件を満たすところについて、児童・思春期精神科入院医療管理加算というものを新設した。
第三、外来についても重視し、特に精神医療の外来については、初診時と再診時とではその診療密度が相当異なると言われている。そこで、精神保健指定医が行った初診の精神療法については、ほかの点数が引き下げを行っている中で、引き上げをした。
第四、児童・思春期の精神療法患者に対する通院精神療法についても、加算を設けるなど配慮した。
今後も、精神医療の重要性を考えまして、専門家の意見を伺いながら、精神医療に対する診療報酬上の適切な評価というものに努める。

(6) 訪問診療・訪問看護
【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
 例えば、これからは地域で精神障害者の方々も生き生きと暮らしていこうとするわけだから、当然病気になったときには家庭で、在宅で、という方向になる。そうすると、今訪問看護は実は若干精神科の加算はされているが、訪問診療の方には加算をされていない。

【高原障害保健福祉部長6/7答弁】ややもすれば通院が中断しやすい精神障害の患者にとって非常に貴重な資源である。この点についても、充実強化を図る。

(7) 司法精神医療
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 日本では多く見ても20人、30人という程度が専攻している。国際的には、アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、ドイツ、北欧、ニュージーランド、オーストラリアなどについては、いわゆる専門医制度という形で確立しており、一般の精神医学を研修した後、こういった病棟で勤務をし、場合によれば論文を書く、場合によれば口頭試験を受ける、そういう形で専門性を明確にしてきている。

→→医療・地域医療だけで十分か

【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】医療の一環としての司法精神医療の充実強化に努める。

→→医療・地域医療と司法精神医療の優先順位
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 地域医療と専門的な司法精神医療ないしはその他の専門的な精神医療の領域は車の両輪で、どちらが欠けてもうまくはいかない。一般的な医療の能力についても、医師制度、研修制度の改善であるとか、それからさらに精神科領域については、講習会を行ってある程度の専門性を担保しておるとか、さらにその上に、今後必要になってくる司法精神医療の専門家も養成していく。
いわゆる薬についても行動療法といった精神療法についても見られたわけであって、こういうものは迅速に我が国に取り入れて普及する必要がある。

【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
 薬物療法だけでは治療ができない患者もふえている。具体的には、例えばPTSDとか人格障害とか神経性の無食欲症とか、こういった人手をかけなければいけない患者もふえている。

→→司法精神医療専門家の教育
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】
【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
 政府案の第15条には精神保健参与員というような規定が設けられており、医師のみでなく、精神保健福祉士などの専門職についても司法精神医学の素養を有する人材の養成が必要である。こうした多岐にわたる人材の養成の取り組みは?

【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 人材養成は時間もかかるわけで、すそ野を広げるということ、それから、一般の地域医療を強化し、その一般の地域医療の中で精神医療を強化し、その精神医療のある部分として司法精神医療を強化するというシナリオになってそれぞれのパートで進めていく。
司法精神医療については、例えば、我が国でその指導医となって、後進もしくはこれから研究する者、臨床に従事する者のための先生については、我が国で相当の経験を、措置制度で自傷他害のおそれのある患者の診療に従事したドクターも多数いるので、そういった中で希望の方ないしはお願いしたい方を留学してもらい、例えばイギリスでいうと一年制のディプロメートというコースがある。国際的なレベルというと、そのディプロマを持ってから専門医療に従事して論文を書いたり、教職についたり、治療したりということで指導的な位置になるのだが、そこまで一気にできないけれどもスタートさせなければならない。この新法が公布された後2年間の準備期間またはこれからの間に最大限の人的な整備をやる。看護職・ケースワーカーについても同様の研修を行う。
精神科に従事する医師の数ないしは医療施設に従事する医師に占める割合は、着実に増加しており、平成12年末には5.1%となっている。
卒業後教育については、すべての医師が患者を全人的に診ることのできる基本的診療能力を習得することを主眼として、医師臨床研修を平成16年度から必修化する。研修プログラムの具体的な内容等について、現在、精神科領域の問題も含め、検討を行っている。
精神保健福祉士については、平成9年の資格制度創設以来、資格取得者は順調に増加しており、平成14年4月末現在で11,825名が登録されていて、精神病院、社会福祉施設、自治体等において勤務している。

【清水文部科学省大臣官房審議官6/7答弁】
 医師以外の精神科領域のスタッフである精神保健福祉士の養成については、13年度現在、51国公私立大学、入学定員7,247人というところで精神保健福祉士の資格取得のための教育が実施されている。


【森山法務大臣5/28趣旨説明】
 心神喪失または心神耗弱の状態で殺人、放火等の重大な他害行為が行われることは、被害者に深刻な被害が生じるだけではなく、精神障害を有する者がその病状のために加害者となる点でも、極めて不幸な事態。このような者については、必要な医療を確保し、不幸な事態を繰り返さないようにすることにより、その社会復帰を図ることが肝要であり、近時、そのための法整備を求める声も高まっている。
そこで、本法律案は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療の実施を確保するとともに、そのために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もって本人の社会復帰を促進しようとするものである。

【森山法務大臣6/7答弁】
 医療を確保して、病状を改善して社会復帰を促進するということが目的。

【古田刑事局長6/7答弁】
 いわゆる社会防衛を直接の目的とするというふうなものではなくて、あくまで適切な医療の確保、それの継続の確保、これを通じて、その効果としてのもちろんいろいろな問題行動の防止ということはあるが、その目的は社会復帰を図るということにある。


【森山法務大臣5/28趣旨説明】
 第一は、処遇の要否及び内容を決定する審判手続の整備について。心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行い、不起訴処分をされ、または無罪等の裁判が確定した者については、検察官が地方裁判所に対してその処遇の要否及び内容を決定することを申し立て、裁判所においては、一人の裁判官と一人の医師とから成る合議体が、必要に応じて精神障害者の保健及び福祉に関する専門家の意見も聞いた上で審判を行う(「裁判官及び精神保健審判員の意見の一致したところによる」14条)。この審判においては、被申立人に弁護士である付添人を付することとした上、裁判所は、精神科医に対して被申立人の精神障害に関する鑑定を求め、この鑑定の結果を基礎とし、被申立人の生活環境等をも考慮して、処遇の要否及び内容を決定する。

【古田刑事局長6/7答弁】
 これはまさに裁判所として行うもので、そういう意味では裁判。その中で、医師である精神保健審判員の役割は、医師としての専門的な知識、経験を、裁判をする上での判断の中で十分活用してもらい、もともとの裁判官である裁判官と十分議論をした上で、医学的、医療的にも、あるいは法律的にも最も適切と考えられる判断をする。
これはあくまで裁判所としての決定なので、個々の責任というのが具体的にどうなるかというようなことではなく、あくまで裁判所の決定として、それに参加しているという意味で、適正な判断を下すという意味における責任がある。審判員と裁判官は同等な立場で合議によって結論を導く。

(1) 対象の範囲
【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 この法案で対象としている殺人等の重大他害行為の事件を起こして、心神喪失あるいは心神耗弱、心神耗弱については疑いがある者も含むわけだが、そう認められて不起訴あるいは裁判で無罪等になった者、こういう方たちの数が年間大体400前後。したがって、その全員がそうなるというわけでは必ずしもないが、400というのが一つの数字としての目安になろう。

(2) 合議で不一致の場合は?
【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 その一致した範囲のところで裁判をするというルール。 具体的には、例えば、いずれか一人が入院までの必要はないという意見で、他の一人はやはり入院の必要がある、こういうような事態のときには、少なくとも継続的な医療の確保が必要だという限度では意見が一致しているので、入院させない医療を命ずる、そういう決定になる。

(3) 措置入院手続きより、裁判手続きが望ましいか
【後藤田正純議員(自民党)6/7質疑】【漆原良夫(公明党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 第一点の問題として、重大な他害行為を行った、そういう不幸な事態に至った場合には、被害者や遺族もいる。そういう点から、できるだけしっかりした手続で、そういうようなことをするに至った人についてきちっとした処遇を決めてもらいたいという思いは少なくともあるのではなかろうか。しかも、その手続ができるだけ被害者や遺族の方にも目に見えるものにしてほしい、という気持ちも恐らくあると思う。
そういうようなことも踏まえ、そういう事態になった場合には、現在の法制度の中で最も慎重、あるいはしっかりした手続・仕組みになっていると考えられる裁判制度の中でこの問題を決めるというのが適当ではないか。
さらに、本人の権利保障の点でも、やはり裁判システムの中で考えるということが適当な面が多い。
この法律案における処遇は、医療をきっちり確保するということの必要から、自由に対する制約や干渉というのもいわば密度が高くなる場合もあり得るわけであって、そういう点から見ても、その対象となる人のいろいろな権利保障が的確に行われる、そういう手続が必要であるということが重要なポイント。
また、都道府県の運用はどうしても地域的な差異が生ずるというのはやむを得ない面があるが、そういうような面も回避できる。

→→諸外国の状況
【漆原良夫議員(公明党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 世界全体について必ずしも把握をしてないが、基本的には、フランスを除き、多くの先進国、ヨーロッパ諸国あるいは米国といったところでは、重大な他害行為を行ったような精神障害者は、裁判所がその処遇を決定するという手続がむしろ一般的である。

(4) 昭和四十九年刑法改正草案の保安処分との違い
【漆原良夫議員(公明党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 改正刑法草案における保安処分は、刑事手続で刑事裁判として、刑事訴訟法の手続により決めるものだった。その処分を受けた者は法務省が所管する保安施設に収容するとされていた。
これに対して、この法律案による処遇制度は、刑事裁判を審理する裁判所とは別の、つまり刑事手続とは切り離された別な手続によるもの。精神科医をもその構成員とする新しい裁判の仕組みをつくり、それによって、法的側面と医療的側面が十分反映することができるような仕組みにしているわけで、刑事処分とは違う。
また、その後の治療についても、例えば入院が必要だと判断された人については、厚生労働大臣所管の国公立病院に入院等をして治療を受けるということになっている。
そういうことで、手続あるいはその後の治療の施設についても、改正刑法草案のいわゆる保安処分とは非常に大きく違っている。
もう一点、刑法にこういう処分を規定する場合には、刑法という性格からして、やはり一部に社会防衛ということは直接の目的とすることとなるわけだが、今回の法案は、要するに、適切な医療を確保して、これが継続されるようにし、それによって本人の社会復帰を促進するということが目的で、そういう社会防衛というのは直接の目的とはしていない。

(5) 再犯のおそれの判定
→→判定は可能か

【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 多くの専門家が指摘しているように、そもそも科学的に不可能。

【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 「再び対象行為を行うおそれ」、いわゆる再犯のおそれの要件は
最大の問題。そもそも、再び対象行為を行う予測ということが現在の科学で可能なのかどうか。我が国の精神医学において最も歴史と権威を持つ日本精神神経学会が、5月11日に、公式に、再犯の予測は不可能だと表明している。

【森山法務大臣5/28答弁】
 現代の精神医学によれば、精神科医が、その者の精神障害の類型、過去の病歴、現在及び重大な他害行為を行った当時の病状、治療状況、病状及び治療状況から予測される症状、他害行為の内容、過去の他害行為の有無及び内容等を考慮して慎重に鑑定を行うことにより、その精神障害のために再び対象行為に該当する重大な他害行為を行うおそれの有無を予測することは可能である。この点については、精神保健福祉法による措置入院に際しても、精神保健指定医が、その者の自傷、他害のおそれの有無を診断しているが、この他害行為とは、同法第28条の2第1項に基づく厚生労働大臣の告示にも示されているように、殺人、傷害、窃盗等の、他人の生命、身体、財産等に害を及ぼす行為を指すものとされている。また、諸外国においても、医師により、その精神障害に基づき再び他人に危険を及ぼす行為を行うおそれの有無が判断されている。

【坂口厚生労働大臣5/28答弁】
 現代の精神医学、例えば、国際的に標準的と言われておりますオックスフォード精神医学教科書(2000年版)によると、精神科医が予測を行うことは当然とされている。

→→判断基準
【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 また、おそれという要件はどの程度なのか、はっきりしない。もし、再犯のおそれなしとして再犯が起こってしまった場合、判断をした裁判官や精神科医は社会的に批判を浴びかねまない。つまり、再犯の可能性が全くないと確信できなければ、再犯のおそれなしと判断はしにくい。そうすると、ほとんどのケースにおいて再犯のおそれがあると判断せざるを得なくなる。
このはっきりしない要件によって、結局、長期間の入院をさせられることになってしまう。10年、20年入院していた人は、社会性を失い、病院の外で生活できなくなる。実際、今、精神病院に入院している人の43%は、5年以上入院している人たち。結局、一生退院できなくて、実質的な終身刑になってしまう、形を変えた保安処分になってしまう、そういう懸念がある。

【森山法務大臣5/28答弁】
 このようなおそれの有無は、その病状や治療状況等により左右されるので、あらかじめ入院期間の上限を定めることは適当ではない。刑罰にかわる制裁を科するものではなく、また、いわゆる保安処分とも異なる。したがって、実質的な終身刑になるとか形を変えた保安処分になるということはない。

3.政府案の第二、医療の処遇 


【森山法務大臣5/28趣旨説明】
 第二は、指定入院医療機関における医療。
「国、都道府県が開設する病院であって厚生労働省令で定める基準に適合するものの全部または一部について、その開設者の同意を得て、厚生労働大臣が行う」(法案)厚生労働大臣は、入院をさせる旨の決定を受けた者の医療を担当させるため、一定の基準に適合する国公立病院等を指定入院医療機関として指定し、これに委託して医療を実施することとしている。指定入院医療機関の管理者は、入院を継続させる必要性が認められなくなった場合には、直ちに、裁判所に退院の許可の申し立てをしなければならず、他方、入院を継続させる必要性があると認める場合には、原則として六カ月ごとに、裁判所に入院継続の必要性の確認の申し立てをしなければならないこととし、あわせて、入院患者側からも退院の許可等の申し立てができる。また、保護観察所の長は、入院患者の社会復帰の促進を図るため、退院後の生活環境の調整を行う。

【古田刑事局長6/7答弁】
 退院につきましても、やはりこれも指定入院医療施設の医師による判断を経た上、精神科医をもその構成員とする合議体によって判断する。この場合にも、必要があると認めればほかの医師に鑑定を求めることで、その判断について十分適切な判断が確保されるよう仕組みを考えている。

(1) 処遇の内容
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 国際的な動向を勘案して、医師及び臨床心理技術者等による、例えば司法精神医学的治療の一つの大きなポイントである怒りのマネジメントや、被害者に共感する心を養うなどの精神療法を十分行う。
また、往々にして、病状とか長期に入院したことにより、作業ないしは就労、家庭生活や自立した生活が難しいことについては、作業療法などを通じて、社会復帰に向けた訓練を綿密に行う。それから、患者の行動観察を入念に行い、再びそういった行為が起きるのではないかというふうなものについて、きちんとした評価を行う。

(2) 指定医療機関の施設
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 施設整備については、入院患者に対して十分なスペースを確保しないと、こういうふうな患者はかなりデリケート。十分なスペースを確保することによりまして、患者本人及び医療従事者及び一緒に入院している患者や近隣の安全に配慮できる。

(3) 指定医療機関の指定
【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 指定通院医療機関については、できるだけアクセスのいいところということで、精神保健指定医を必置とし、必要かつ適切な医療を行うことができるところを指定する。

4.政府案の第三、地域の処遇
法案第106条で精神保健観察、113条で人材の確保、108条で関係機関相互の連携の確保。

【森山法務大臣5/28趣旨説明】
 第三は、地域社会における処遇。
退院を許可する旨の決定を受けた者等は、厚生労働大臣が指定する指定通院医療機関において入院によらない医療を受けるとともに、保護観察所に置かれる精神保健観察官による精神保健観察に付される。
また、保護観察所の長は、指定通院医療機関の管理者及び患者の居住地の都道府県知事等と協議して、その処遇に関する実施計画を定め、これらの関係機関の協力体制を整備し、この実施計画に関する関係機関相互間の緊密な連携の確保に努めるとともに、一定の場合には、裁判所に対し、入院等の申し立てをする。

(1) 精神保健観察とは?
【横田保護局長6/7答弁】
 医療機関はもとより、地域社会で精神障害者に対する援助業務を担っている保健所等の関係機関とも連携しつつ、当該通院患者の生活状況を見守り、またその相談に乗り、そしてまた、そういったことを通じて通院や服薬を間違いなく行うように指導・働きかけを継続的に行う。これによって地域社会内における継続的な医療の確保をする。
それからもう一つ、保護観察所の長は、指定通院医療機関の管理者、それから当該患者の居住地の都道府県知事などと協議し、処遇に関する実施計画というものを策定する。その実施計画に基づき、関係機関相互が緊密な連絡をとり合いながら継続的な医療を確保する。この保護観察所においては、そういった関係機関との連携の確保、ネットワークづくりといったものをこれから推進していく。
そして、そういうようなものを続けて、継続的な医療を確保することに努力し、その上でまた必要があると認める場合には、裁判所に対し入院によらない医療を行う期間を延長する、さらには再入院の申し立てをすることで、医療の継続の確保を徹底させるこのように政府案は、通院患者が社会内において必要な医療を継続して受けられるための新たな方策
を盛り込むことにより通院患者の社会復帰の促進を図っていく。

(2) 精神保健監察官とは?

【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 全国に50カ所保護観察所があるが、その地域的なネットワークを生かし、保護観察所を中心に、病院、保健所とか、精神医療関係の方々と十分協力できるネットワークを構築して、それにより、院外で治療を受けている人たちのいろいろな生活面での援助あるいは指導等の観察をきめ細かに実現していく。
保護観察所のすべてに精神保健観察官を配置する。

→→人数は?

【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
【古田刑事局長6/7答弁】
 必要な数の確保に努める。

 民主党案
1.民主党案の第一、司法精神鑑定センター 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 第一に、起訴前、起訴後の精神鑑定の適正な実施を目的として、最高裁判所と最高検察庁にそれぞれ司法精神鑑定センターを設置し、鑑定人の選定事務、個別の精神鑑定に係る情報または資料の調査研究及び分析等を行う。
これにより、鑑定人の選定に関して裁判官や検察官の負担を軽減することができるとともに、鑑定精神科医の偏りや鑑定結果のばらつきなどを防ぐことができる。

【平岡秀夫議員(民主党)5/28答弁】
 また、最高裁判所と最高検察庁のそれぞれの司法精神鑑定センターが精神鑑定に関する情報の収集や分析で協力することにより、司法における精神鑑定のより正確な実態把握が可能となるとともに、より高度の精神鑑定技能を開発していく道を開いていくことも期待できる。

2.民主党案の第二、判定委員会


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 都道府県に新たに判定委員会を置くものとし、精神保健指定医のうちから都道府県知事が任命する委員で構成。委員二名の合議体で、措置の入退院、措置解除の判定を行い、委員の意見一致が条件。

3.民主党案の第三、精神保健福祉調査員


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 第三に、現行の措置診察が極めて限られた情報の中で慌ただしく行われているという現状を踏まえ、精神保健福祉調査員を新設し、措置診察の必要性を判定するための調査及び判定委員会の求めに応じたさまざまな調査を専門的な立場から行い、より厳格な措置入院の判定をサポートする。

4.民主党案の第四、精神科集中治療センター 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 第四に、人員配置基準の低い精神科の病棟では、人手の少なさゆえに十分な医療を施すことができないため、精神科集中治療センターを指定する。
これは、政府案のような、収容を目的としたものではなく、あくまでも通過施設として位置づける。
また、政府案のように、重大な犯罪行為の有無や再犯のおそれを要件とするものではなく、あくまでも治療上の必要から手厚いマンパワーで医療を提供する精神科ICU。

5.民主党案の第五、社会復帰支援 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 第五に、社会復帰支援体制の強化として、精神障害者の保健及び福祉に関する業務を行う者の相互連携を図る。
政府案と異なり、この仕組みが機能すればするほど、地域の各職種の連携が密になり、措置退院患者以外の方たちにもプラスに作用する特徴がある。
政府案では、保護観察所を軸にした通院継続の仕組みが他の精神障害者に恩恵をもたらすことはない。

IV 両案比較
1.池田小事件の再発防止 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 特に、従来から指摘されているように、司法手続における精神鑑定のあり方、中でも起訴前の安易な鑑定が多い。

【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 以下の二つの理由で、政府案では、池田小学校事件の再発防止にはならない。
第一に、池田小学校事件の被告人は、起訴前の本鑑定により、責任能力を認められている。心神喪失でも心神耗弱でもない。つまり、心神喪失等を理由として無罪となる可能性は低く、その場合には、この政府案の対象にはならない。
第二に、池田小学校事件の被告人は、事件前には十三回の逮捕歴があった。しかし、政府案が対象とする重大な犯罪行為は行っていなかった。つまり、今後同様のケースがあったとしても、政府案では防げない。

【平岡秀夫議員(民主党)5/28答弁】
 池田小学校事件で被告人となった者についても、過去、数々の軽微な犯罪行為を行ったときに、民主党案に基づいた体制が整えられ、きちんとした精神鑑定が行われていたならば、その時点で適切な刑事処分がなされることによって、犯人に遵法精神を呼び起こし、今回の池田小学校事件のような重大な犯罪に至ることを防げた。

(1) 再発防止には現行制度見直しで十分か
【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
【水島広子議員(民主党)5/28答弁】
 本来、地域における精神保健福祉体制が十分に確保されていれば、精神障害者の孤立や治療中断が防がれ、心神喪失などのために不幸にして自傷・他害事件を起こす人を確実に減らすことができる。また、措置入院制度が適切に運用されていれば、医療上の必要性にこたえる十分な治療を提供することができるはず。
政府は、これらの問題に真正面からこたえることができないため、新たな制度をつくって人々の目をそらそうとしているように見える。

2.指定入院医療機関(政府案)と精神科ICU(民主党案) 


【水島広子議員(民主党)5/28答弁】
 日本の精神科の病棟は、人員配置基準が低いため、手厚い人手を必要とする人たちに十分な医療を施すことができない。このことが早期の社会復帰を阻害しているということは、随所で指摘されている。
民主党案では、通過施設としての精神科集中治療センターを指定し、一般の措置指定病院での治療が可能となるまでの入院治療を行うことを提案している。これは、いわゆる処遇困難病棟や重症措置治療病棟をイメージしたものではなく、あくまでも治療上の必要から手厚いマンパワーで医療を提供する精神科のICUである。一般医療でも、病状が重いときにはICUで治療を受け、ある程度落ちつくと一般病棟に移されるが、まさに、そんなイメージである。
政府案の病棟は、重大な犯罪行為の有無や再犯のおそれを要件としており、また通過施設として位置づけられているものでもなく、社会防衛上の観点から、必然的に長期にわたる拘禁をもたらすものになることは明らかであり、医療上の必要性のみによってつくられる民主党案の精神科ICUとは完全に異なるものであると言える。

3.新法制定(政府案)か、措置入院改善(民主党案)か 


【漆原良夫議員(公明党)6/7質疑】

(1) 措置入院の問題点
【宮路法務副大臣6/7答弁】
 これまで、心神喪失等の状態で他人に重大な他害行為を行った者についても、現在の精神保健福祉法のもとでは、措置入院等の方法によって一般の精神病院で治療が施されているが、とすると、一般の精神病院だから、施設もスタッフも特別ということではなく、一般のレベルのものであるから、専門的なスタッフもとりわけ配置されていないし、また、ほかの一般の入院しておられる方にある面では悪い影響もいろいろ出てきている側面も否定できない。
そしてまた、その入退院の決定が、都道府県知事が形の上ではやることになっているが、実質的には医者に委ねられているので、医者の負担も大変重たい。退院後の医療も、しっかりとしたものが確保されていない。都道府県知事の入退院の決定なので、都道府県の範囲を超えた連携も必ずしも十分でない。

(2) 新法の必要性
【森山法務大臣6/7答弁】
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者については、特に国の責任において手厚い専門的な医療を統一的に行う必要があり、精神保健福祉法における措置入院制度等とは異なり、裁判官と医師が共同して入院治療の要否、退院の可否等を判断する仕組みや、退院後の継続的な医療を確保するための仕組み等を整備することが必要である。
特に、本法律案の新たな制度による処遇は自由に対する制約や干渉を伴うものであり、それが適切な医療を継続的に確保する必要から強度になることもあり得るので、このような処遇を行うか否かの判断は、対象者の防御権が適切に保障された手段により、十分な資料に基づいて中立公正になされることが必要であることから、一般に、行政機関における手続よりも、厳格性、慎重さなどを有する裁判所における手続によりこれを行うことが適当。
また、本制度による処遇については、国の機関が中心となって行うことが適当であると考えられること、地域社会におきまして通院患者の観察及び指導を行い、必要に応じて入院や処遇終了等の申し立てを行う本制度の枠組みは保護観察の枠組みと類似しているということ、さらに、関係機関との連携確保につきましても、保護観察所が保護観察を実施する上で培ってきたノウハウをこの制度にも生かすことができること、また、保護観察所は各都道府県に少なくとも一カ所は置かれており、その全国的なネットワークによって、生活環境の調整、精神保健観察等の事務を円滑に実施することができるということなどを総合的に考え、この制度に保護観察所を関与させることとした。
これらにより、継続的かつ適切な医療の確保が図られ、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図ることができ、対象者の社会復帰を促進することができる。

4.精神障害者への差別・偏見 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 政府案は、精神障害者に対する差別や偏見を助長するものとして有害ですらある。

5.隔離政策 


【中村哲治議員(民主党)5/28質疑】
 安易に隔離政策をとることにより、らい予防法やエイズ予防法で犯した過ちを再び繰り返してはなりらない。
精神医療を受けている方は、全国で300万人、10家族に1人。体の健康を害すると同じように、皆すべてに可能性がある。

6.精神医療・福祉全体の取り組み 


【水島広子議員(民主党)5/28趣旨説明】
 民主党は本改正案のほかにも、精神保健福祉改善十カ年戦略を提案しており、ノーマライゼーションの実現に向けて全力で取り組む。

【坂口厚生労働大臣5/28答弁】
 精神医療及び精神障害者福祉の充実は重要な課題であり、今後、患者の病状に応じた精神医療を確保するための精神病床の機能分化、入院患者の社会復帰や地域における生活を支援するための社会復帰施設の整備、居宅生活支援事業等を推進する。
このため、精神保健医療福祉の総合計画を策定し、現在、社会保障審議会の障害者部会において、鋭意検討を進めている。
この検討結果を踏まえ、障害者基本法に基づく新しい障害者基本計画及び新しい障害者プランにおいて、精神障害者全般についての総合的な対策を盛り込み、2003年度よりその推進を図る。

【高原障害保健福祉部長6/7答弁】
 医療制度と社会復帰制度、そして社会復帰後の在宅福祉サービスについて総合的に議論し、2002年夏をめどに精神医療領域における総合的な計画を策定して、2003年度を初年度とする障害者基本法に基づく障害者計画、それに基づく前期プラン(内閣府の方で今年度いっぱいぐらいかけて全体調整がされる予定)の中に、厚生労働省の取りまとめた精神保健、医療、福祉の総合計画を反映させたい。その中身は、病床であるとかマンパワーであるとか、そういったものが中心になる。

【福島豊議員(公明党)6/7質疑】
 例えば、自治体病院協議会では、精神保健・医療・福祉施策を一層推進するための新たな計画というものの策定が必要であるということを提言いたしております。具体的には、新たな精神科地域医療計画の策定、精神科救急医療体制の整備、精神科入院医療改善計画、精神障害者のための地域支援長期計画、偏見と差別を解消する長期計画、こういった五つの内容の計画をつくるべきである、こういった提言もある。

(1) 理解教育
【塩崎恭久議員(自民党)6/7質疑】
 三つの障害、とりわけこの精神障害についてどういう理解教育をやろうとしているのか。例えば、精神障害者との交流を持つような機会というのをやっているのか。

【玉井文部科学省大臣官房審議官6/7答弁】
 子供たちが同じ社会に生きる人間としてともに助け合い、支え合っていくことができるよう、そういう体験を通して障害のある人々との、いわば正しい理解、そして福祉の心、助け合いの心を育てていきたい。


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

「心身喪失者医療観察法案」 国会審議等

「心神喪失者医療観察法案」の審議の経過

国会審議の論点

「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会

重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向

隔離新法」 国会上程反対 速報! 国会議事堂前抗議行動!

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)(更新020324)


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