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「対等・平等な社会制度の確立」

2001年9月20日、福岡弁護士会の八尋光秀弁護士のメッセージ

 サブテーマは、「精神の障害・疾患に対するいわれのない恐怖や非難を社会から取り去ること」

 社会制度は、「精神障害者」に対等・平等な地位を実質的に保障するものでなければならない。社会が、精神の障害・疾患を理由とした特別な立法及び政策をもつことは、多くの場合、超えようのない壁を築き、差別の坩堝(るつぼ)を作り出す。「精神障害者」をして、その壁の向こうにおいやり、その坩堝の底へ陥れる。
 「精神障害者」に対する社会制度はなにより、統合を基軸としたものでなければならない。

  1.現状の不平等性

  2.医療制度インテグレーション
  3.司法制度インテグレーション  

  1.現状の不平等性

 未だに社会は「精神障害者」をきわめて不利な立場に置いている。そのことが、精神の障害・疾患に対していわれのない恐怖や非難を醸成し続けている。
 わが国では、犯罪として検察庁に受理される件数は、年間200万件、このうち訴追(略式起訴を含めて)されるものは約120万件、このうち正式裁判(公判請求)を受けるものは10万件。うち、実刑(懲役・禁固)は2万2000件。うち3年以下1万9000件、5年以上1500件にとどまる。そのほとんどが刑務所に収容されることはない。
 全体の受刑者総数は、ほぼ3万人前後で推移し、未決収容者を合わせても6万人を超えることはない。受刑者3万人のうち5年以上収容されている人は3ないし4%にとどまっている。
 例えば、死傷者を最も多くだす交通事犯は年間約65万件を数える。しかしその50数万件(約85%)は不起訴処分とされ、起訴される約9万数千件のうち約7万数千件(約80%)は略式裁判により罰金に処されるにすぎない。つまり、年間約65万件の死傷者を出しながら、正式裁判を受けるものは約1万件で、その多くに執行猶予が付され、刑に服することはない。(以上、検察統計資料からの概算)
 わが国では、犯罪にかかわらず、約33万人にのぼる「精神障害者」が精神医療施設の中で少なからず自由の制限を受けている。しかも、そのおよそ半数の17万数千人は24時間出入口を施錠された病棟に、自由に出入りできない状況下での収容を強いられている。その期間は5年以上の人が約46%の15万人にのぼっている。
 「精神障害者」は犯罪者の数十倍を超えるボリュームで、自由を拘束され続けている。いうまでもなく、犯罪率は精神の障害・疾患ゆえに高くなるわけではなく、再犯率に至っては逆に低いとされて久しい。単純に、交通事犯と比較してさえ、社会防衛や被害者論によっても、「精神障害者」は不合理に不利な立場におかれている。

 2.医療制度インテグレーション

 このような自由の拘束は、「精神障害者を治療・援助するため」に合理性があるとは決して言えない。医療は本来的に強制になじまない。精神医療も同じである。5年以上も人の自由を拘束してしまっては、人間のための治療・援助が成立したと誰が言えるだろうか。医療の目標は、人間の社会生活活動の援助であり、図らずも入院してしまった人への社会復帰の促進にある。  一般医療と隔離医療を統合すべきとするインテグレーションが唱えられてすでに半世紀以上がすぎた。精神医療制度は速やかにインテグレーションを基軸として、全面的に再構築されなければならない。隔離医療を全面的に廃止し、一般医療への統合を達成することにより、「精神障害者」ははじめて他の障害、疾患と同様に取り扱われることになる。

 3.司法制度インテグレーション

 「精神障害者」に特別な刑事司法制度をつくるべきではない。「精神障害者」に対する予防拘禁制度は、社会に精神の障害・疾患に対するいわれのない恐怖と非難を作り出すだけである。その制度自体の費用対効果すら是認し得ない。   他のあらゆる障害や疾患と同様に、刑事司法のあらゆる場面で、適時,適切な能力補完・治療・援助等の手だてを制度化すれば十分である。実質的な対等・平等を確保するために、外国人には通訳、視覚障害者には点字翻訳があるように、精神の障害・疾患に応じた援助を提供する制度があればよいのである。  法的責任は、不可能を強いるものではない。この原則はすべての人に適用されるのであり、「精神障害者」にだけ適用されているわけではない。  逆に、「精神障害者」には、「反社会的存在」とするスティグマにより刑罰の先取りや二重処罰が、精神医療の名をもって科されている実態がある。

 以上のとおり、未だにある「精神障害者」に対するいわれのない恐怖と非難をなくし、実質的な対等・平等を保障するための社会制度として、インテグレーションの徹底こそ必要である。「精神障害者」を更に不利な立場へ追い込む、あらゆる特別な制度はいらない。    
 以上


<八尋光秀弁護士:関連リンク>

  1. 精神障害者事件、隔離医療に問題…ハンセン病訴訟弁護団代表に聞く(毎日新聞2001年7月10日)


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会

重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向

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