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「これが政府・与党の隔離新法に対する、当事者であるぼくたちの対案です」(塚本さんのコメント)


触法精神障害者処遇手続法ではなく、精神障害者の人権と福祉施策を確立するために!

精神障害者人権基本法(案)

2002.1.14 文案・塚本正治

1 この法律の趣旨について
1)精神障害をもつということ

 「精神障害者の人権」について考える時、精神障害をもつとはどういうことなのかということについて、基本的な認識をそろえておく必要があると考える。ここで言う基本的認識というのは、医療従事者から見た精神障害ということだけではなく、精神障害当事者にとっての意味ということでもある。
 人間はみな、個的な精神的・肉体的限界をこえてストレスを加え続けられるならば必ず発病する。逆にいうならば、病になることによって、直接死にいたることを回避し、生き継いでいくということである。発病することによって外的ストレスは内的な疾患へと転化するわけであるから、外的ストレスの解除と同時に疾患に対する治療ということが必要になる。「健康=善玉・病=悪玉」という社会的認識は、精神病に対する偏見を生み出す大きな原因になっている。根本的には「勤労は美徳」とされる近代−現代社会のあり方が問われている。
 発病し、精神障害をもった当事者は、その精神障害を受け入れることによって「発病する前とはちがった、味わいある人生」をおくることができる。しかし「精神障害を受け入れる」という「病を治す」ということにおいても、「障害をもって生きる」ということにおいても大切な過程が、精神医療の貧困さと「精神病者は何をするかわからない」という社会的偏見・生活支援等施策のなさのために、たびたび打ち壊されていることは大きな問題である。
 いつの時代にも精神障害者は存在してきたし、人間は誰でもその置かれた社会的環境によって発病しうるのであるから、「精神障害をもつ当事者が生きづらい社会は、精神障害をもたない人も生きづらい社会」であると言えよう。

2)精神障害者への人権侵害の現実
 精神障害者の人権について語るとき、何より精神障害者への人権侵害の現実について見据えなければならないだろう。それはひとつに「医療現場における不当な扱い」である。本人への説得・本人の同意を些少した「身体拘束」「行動制限」「薬物投与」は、心のケアを必要とし、入院しているはずの精神障害者の心にさらに傷を負わせ「病・障害を受け入れること」を困難にする結果となっている。
 また「面会・通信の自由への侵害」は、入院生活への移行にともなう「不安感」「孤立感」をさらに駆り立てる結果になっている。同時に「こづかいの自主管理等、私的生活の剥奪」は、退院し、地域で自立生活を営んでいく社会性を日々奪い取る結果になっている。つまり「病を治す」はずの入院生活において、「病・障害を受け入れる」ことを困難にし、地域で生活を営んできた社会性を奪い取り、精神障害者が病院の中でしか生きていけない状況を作りだしている。これが、「社会的入院」の大きな原因であり、精神科平均在院日数約400日という、諸外国に比べてもケタはずれに長い入院日数の原因でもある。もちろんその根本的問題は「精神科医療の特例措置」にあることは、いうまでもない。 一方、精神障害者を受け入れる側の地域においても、家族の冠婚葬祭から身内の精神障害者が排除される等、精神障害者は家族の中でも孤立している。また一人暮らしの精神障害者が地域で暮らす住まいを確保しようとするとき、公営住宅法の欠格条項により「公営住宅の単身入居」から精神障害者は排除されており、在宅介護施策も身体・知的障害者施策に比べても、はるかに遅れている。
 就労現場においても、就労支援のないまま、精神障害を理由に賃金カットや解雇されるケースがあり、職場における人間関係の中で「のろま」「役立たず」等、精神障害に無理解な差別的言動を精神障害者は日々、受けている。障害者雇用のカウントからも身体・知的障害者とくらべ、精神障害者は大きく取り残されている。
 教育現場において、発病した精神障害者に教育機関は一切関わろうとせず、精神障害者の親にもつ生徒に対しても、何の関わりもしてくれない現状等がある。
 昨年6月8日に起きた「池田小事件」に関して、精神疾患と事件との間に客観的なむすびつきが一切明らかにされていないにも関わらず、マスメディア各社は一斉に「容疑者に措置入院歴あり」「精神科に入・通院歴あり」と津波のように報道し、精神障害者に対する偏見を著しく助長する結果となった。それを契機に、精神障害者社会復帰施設建設に対する地域住民による根強い反対活動が全国的に広がっている。

3)精神障害者に対する偏見について
 精神障害者の存在を神秘化したり、観念化することは、いつの時代にもおこなわれてきたことであるが、「精神障害者はなにをするかわからない」と「社会防衛」の観点から「危険な存在」として著しくあつかわれるようになったのは、近代に入ってからであると考えられる。
 日本においては明治時代における「精神病者監護法」にはじまり、第二次大戦時における精神病者への大量殺戮、戦後「精神衛生法」による精神病院への隔離・拘禁の徹底を通して、町から精神障害者は姿を消され、市民は姿なき精神障害者に対して「鉄格子の中にとじこめられるほどの恐い存在」と認識するようになった。それが現在においても引き継がれていることは、全国における精神障害者社会復帰施設に対する地域住民の反対活動に端的に示されている。
 つまり市民の精神障害者に対する素朴な神秘化や観念化を「何をするのかわからない危険な存在」という強固な偏見に変えたものは、「隔離・収容」を推進してきた精神保健施策の誤りに他ならないと言える。

2 条文

(1)第一条
 「この法律は、誰もが罹り、持ちうる精神障害についての社会的差別と偏見をなくし、症状が辛い時にいつでもかかれる適正な医療と援助の確保と精神障害者の人権の確立及び自立と社会経済活動への参加の促進を目的とする」

(2)第二条 国の義務
 「国及び地方公共団体は、医療現場、地域において現実に起きている精神障害者に対する人権侵害をなくすという観点から、医療施設、社会復帰施設その他の福祉施設並びに地域生活支援事業を充実する義務をもつ。国は精神障害者施策の実施する権限を地方公共団体に分権するとともに、地方公共団体は市町村を基本単位として精神障害者施策を実施する義務をもつ」

(3)第三条1 患者の人権
 「隔離・収容を目的とした今日までの精神障害者施策の反省に基づき、以下のように、精神障害者の人権を明確にし、その人権は決して侵害されてはならないものとする」
 1.常にどういうときでも、個人として、その人格を尊重される権利
   暴力や虐待、無視、放置など非人間的な対応を受けない権利
 2.自分が受けている治療について、分かりやすい説明を理解できるまで受ける権利
   自分が受けている治療について知る権利
 3.一人ひとりの状態に応じた適切な治療及び対応を受ける権利
   不適切な治療及び対応を拒む権利
 4.退院して地域での生活に戻っていく事を見据えた治療計画が立てられ、それに基づく治療 や福祉サービスを受ける権利
 5.自分の治療計画を立てる過程に参加し、自分の意思を表明し、自己決定できるようにサポート(援助)を受ける権利
   また、自分の意見を述べやすいように周りの雰囲気、対応が保障される権利
 6.公平で差別されない治療及び対応を受ける権利
   必要な補助者、”通訳、点字等”をつけて説明を受ける権利
 7.できる限り開放的な、明るい、清潔な、落ち着ける環境で治療を受ける事ができる権利
 8.自分の衣類等の私物を、自分の身の回りに安心して保管しておける権利
 9.通信・面会を自由に行える権利
 10.退院請求を行う権利及び治療・対応に不服申し立てする権利
   これらの権利を行使できるようサポート(援助)を受ける権利
   これらの請求に申し立てをした事によって不利に扱われない権利

 第三条2 地域生活に関する権利
 1.病院の敷地内で一生をおくるのではなく、住みたい地域で暮らせるようサポート(援助)を受ける権利
 2.暮らすための住まいが、公営住宅や民間賃貸住宅で確保される権利
 3.サポート(援助)が障害当事者のニーズに基づいている事
 4.障害者当事者の活動の場が社会的に保障される権利
 5.障害当事者のペースで就労できるようサポート(援助)を受ける権利
 6.就労できなくても、所得保障され暮らせる権利
 7.治療の時間の中で失った「教育を受ける機会」をふたたび保障される権利
 8.教育現場や企業の人権啓発の場で、精神障害者問題を障害当事者が語る場が保障去
   れ、精神障害に対する偏見をなくし「今を生きるひとりの人間−市民」として人間関係を取り結べる権利


 第三条3 裁判を受ける権利等
 1.公平で適正な裁判を受ける権利
 2.拘置施設・矯正施設おいて充分な医療を受ける権利
 3.矯正施設において、社会する社会更生のプログラムが立てられ、そのプログラムの中に自分の意思が尊重される権利
 4.暴力や虐待、無視、放置など非人間的な対応を受けない権利
 5.面会・通信を自由に行える権利

 第三条4 精神障害者の人権確立の推進
 「第三条1.2.3における精神障害者の人権を阻害し、侵害する「医療特例」「欠格条項」等は、撤廃されなければならない」
 「第三条1における精神障害者の人権を阻害し、侵害する行為は他の法律とも照らし合わせ処罰されなければならない。細則は省令にて定める事とする」


 第三条5 精神障害者を抱える家族への支援
 「精神障害者の人権確立及び適切な医療の確保・生活の支援は、国及び地方公共団体の責務であり、精神障害者を抱える家族は、その苦悩から解放され、支援されなければならない」


 第四条 マスメディア評価検討委員会(仮称)の設置
  1.マスメディアによる精神障害に対する偏見を助長する報道内容を評価検討し、本法第三条1.2.3における権利を侵害したと判断される場合、当該マスメディアに勧告する事を目的とする。
  2.評価検討委員会は、国が適当と認める団体に委託するものとする。
  3.評価検討委員会は、精神障害者の人権を擁護する活動を経験した弁護士・市民・障害当事者で構成されるものとする。

 第五条 精神科医療オンブズマン制度の導入
  1.精神医療審査会を補助・補強するため、精神科医療オンブズマン制度を導入する。
  2.第三者機関による病棟訪問・患者からの相談受け付け等の活動と本法第三条1に抵触する場合、当該病院に対して勧告を行い、患者の権利代行として精神医療審査会に適切な判断を求める事ができる。
  3.第三者機関は精神障害者の人権擁護活動を経験した弁護士・NPO(非営利組織)・障害当事者・市民・専門家で構成され、地方公共団体の精神保健福祉センターにそのセンターをおく事とする。

 第六条 退院促進制度の導入
  1.社会的入院解消のため、退院促進制度を導入する。
  2.地方公共団体において新たに「退院促進審議会」を設置する。
  3.「退院促進審議会」は精神障害者の人権擁護活動を経験した弁護士・NPO(非営利組織)・障害当事者・市民・専門家で構成され、社会的入院解消にむけた年間計画を策定しなければならない。
  4.策定された年間計画にもとづき地方公共団体は、適当と認める団体に「退院促進事業」を委託し、退院促進を推進しなければならない。

 第七条 語り部制度(仮称)の導入
  1.国及び地方公共団体は、全医大生に対し、精神障害当事者の体験を聞くカリキュラムの機会を保障しなければならない。


 第八条 事故・事件救済基金制度(仮称)の創設
  1.刑法39条に抵触し、責任能力を問われない事故・事件の被害者とその家族を救済するため、事故・事件救済基金制度を創設する。


関連→刑事司法における精神障害者の現状 「生きてシャバにでたい」(塚本正治)

「司法精神病棟」建設をはじめ、精神障害者に対する隔離収容施策の強化に反対し、精神医療の底上げと精神保健福祉施策の充実を求める署名

大阪精神障害者連絡会(愛称・ぼちぼちクラブ)
2001年7月1日「司法精神病棟」建設をはじめ精神障害者に対する隔離・収容施策の強化に反対する声明

大阪精神障害者連絡会(愛称・ぼちぼちクラブ)

2001年6月16日 「大阪教育大付属池田小学校事件報道による二次被害を受けている精神障害者の訴えたいこと」
襲われた学校 立ち直るために  精神障害と法(上)塚本正治さん   再犯を予測できるのか
2001年7月2日 朝日新聞

ぼちぼちクラブのホームページ

   大精連・大阪精神障害者連絡会

こころの病の体験を歌にのせて〜当事者バンド「ハルシオン」の活動〜

   大阪こころの健康総合センターのページ

ハルシオン〜フナの唄

   ふっききょう精神障害者社会復帰促進協会のページ

読売新聞大阪版の一面トップを飾ったこともある、塚本さんと下村さんのバンド、ハルシオンのCD「フナの唄」も買ってきいてみましょう


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

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