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<2001年8月22日>

保岡興治(元法務大臣自民党「触法障害者問題」国会議員プロジェクトチームメンバー)議員からの電話に思うこと


               全国「精神病」者集団会員 長野英子

 特別立法に反対する声明を出しましたが、与党および自民党のプロジェクトチームの議員に送ったところ、その一員である保岡氏より8月20日に電話がありました。
 完璧にメモをとってはいませんしテープで録音したわけではないので、私の思い違いもあるかもしれません。それを前提での報告ですが、この間の「触法精神障害者対策」の本質がとてもよく出ている話だと思いますので報告させていただきます。
声明を読んだが問題であると思ったの説明したい、とのことで20分あまりも説明なさいましたが、彼が法相在任時代からこの問題で法務省厚生労働省が対立しているのを何とか連携させたいと、精神科医、弁護士、家族会、精神障害者当事者、犯罪被害者等の話を聞き勉強した。その上で法務省と厚生労働省のこの問題に関する合同検討会を発足させ主意書も自分が書いたとのこと。
彼が強調していたのは、
「精神医療全体の改善底上げとこの問題は車の両輪」
ここがまさに問題点だと私は考えます。昨年合同検討会の主意書を読んで私は震え上がりました。私の立場であれを読むと精神医療、保健、福祉、総体を「犯罪防止」に向け動員して行こうとしているとしか読めないのです。
 彼が車の両輪といいますが、そのたとえを使えば両輪を貫くのは車軸は「社会防衛と治安」でしょう。「犯罪防止」のために人を予防拘禁することをいったん認めてしまえば、その精神障害者差別、そうした差別に基づく精神障害者観は精神医療および保健福祉総体を根底から規定してしまいます。
「精神医療の改善」やら「医療福祉、本人支援の充実」は無条件に「よいこと」とみなされがちですが、強制医療体制下においては、必ずしも「本人の利益」になるものではありません。ましてや「犯罪防止」のための予防拘禁制度と両輪の「精神医療の底上げ」は私たちにとって「管理監視の強化」「人権制限の強化」につながります。
 私自身は強制入院制度撤廃を主張していますが、少なくとも強制入院制度下においては「精神医療福祉、本人支援の充実」は常に「人権擁護システム強化」と車の両輪でなければなりません。
 保岡氏のいう「精神医療の底上げ」と「特別立法」を両輪とする体制は、恐るべき体制といわなければなりません。その車はどこに行くのでしょうか?
 保岡氏はさらに「当面対象者は違法行為を行い不起訴や無罪となった人たち」であるが「やがてこの制度施設が国民の信頼を受けるようになったら、受刑出獄後の精神障害者、緊迫した犯罪の恐れがある処遇困難者、家庭内で暴力をふるう人、なども対象にしていくことも考えている」といいました。
 さらに「初犯の防止も考えて行かなければならない」とも。
 何度も強調しますが、私は特別立法は人を「予防拘禁」するシステムであり差別だから反対なのであって、この対象者が拡大適用されるから反対なのでも、犯罪防止に無効だから反対なのでもありません。
しかしこの特別立法が動き出そうとも、犯罪は起こり続けますし、その中に健常者も胃潰瘍の患者も精神病の患者もいておかしくありません。
 特別立法が仮に施行された後、一度でもまた精神障害者による違法行為が起きたら、ただちに特別立法の対象者の拡大、強化が図られることになるのは明白です。そして「初犯の防止に無効」では意味ないということで、彼のいうもう一方の車輪である「精神医療の改善」「医療保健、福祉の充実」はより治安的社会防衛的に変化して行くことも明らかでしょう。
 とりわけ今回の特別立法で導入されようとしている地域での強制医療システムは地域での精神医療保健、福祉の治安的再編に拍車をかける形に必ずなります。
 精神病者監護法以来百年の誤りをいま再び繰り返さないために、特別立法新設阻止に向け全力をあげて闘いましょう。


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

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