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2001年9月

重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇等に関する見解


日本精神保健福祉士協会

 日本精神保健福祉士協会は、去る6月18日に「校内児童殺傷事件に関する見解」を表明した。その後、重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇等に関する議論が俄かに活発となり、報道によると、政府・与党ともに新法制定を視野に入れた新たな処遇システムの検討が進められているところである。
 本協会としては、具体的な法案が示されていない現時点で処遇システムそのものを論じることはできないが、従来から措置入院者への援助・支援という形で重大な犯罪行為をした精神障害者と向き合ってきた精神保健福祉士の立場から、現状の処遇等における問題や課題について整理し、以下の通り見解を述べる。
 なお、新たな処遇システムに関する法案が提示された時点においては、改めてそのことについて見解を表明することとしたい。

1. 現行の処遇における課題

1) 精神科医療が、従前からの社会防衛的側面を払拭しないまま、数次に渡る精神保健福祉法改正を経た今日においても、医療が本来担う役割や機能を超えて、「保護」の名のもとに司法や社会が対応すべき問題までも抱え込んでいる状況は何ら変わっていない。

2) このことは、単に重大な犯罪行為をした精神障害者の問題に限らず、社会的入院の解消が遅々として進まず、社会復帰が果たせずにいることにも表れている。

3) 地域によって、措置入院が長期化していたり、人口1万人に対する措置入院者の割合に相当の格差が生じるなど、現行の措置入院制度の運用上の明らかな差異がある。


2. 重大な犯罪行為をした精神障害者への関わりを通して

重大な犯罪行為をした精神障害者との関わりにおいては、適切な医療を受け病状が回復したのち、特別な処遇がなくとも通常の地域生活支援体制の下で社会復帰・社会参加を果たしている事例を少なからず経験している。
 一方では、関わりの中で相当な困難を感じる事例もあるが、その背景には以下のような問題点を指摘することができる。

1) 精神障害者の生活権を保障していくシステムが社会の中に整備されていない。

2) 医療の対象と考えにくい人までも、医療機関で対応している。

3) 本来チーム医療で対応すべきことが、充分なマンパワーが確保できないためその実践が困難な状況にある。

4) 貧困な医療状況にあって、一部の重大な犯罪行為をした精神障害者に対して過度に拘禁性が高い処遇を行なわざるを得ない。 

 
3.司法における課題

検察の起訴便宜主義や本来司法が果たすべき役割を医療が肩代わりしてきたことが、結果として精神障害者の偏見・差別を助長しラベリングを強化することになっている。また、安易に責任無能力とされることが精神障害者の尊厳を著しく冒し逆差別となっている。
 民法が改正され、ノーマライゼーションの観点から精神障害者の保護と自己決定の理念の調和を図り、新たな成年後見制度が定められた。刑法における責任無能力の規定についても見直される必要がある。

4.精神科医療における社会的入院者の解消と全体的な底上げを

精神科医療における20世紀の負の遺産としての社会的入院者の解消は、重要な課題とされながらもその進捗状況は非常に遅れている。21世紀を迎えた今こそ、地域社会が受け入れるべき精神障害者の退院を促進し、マンパワーの格段の充実を図ることで、精神科救急医療体制を一般科並みに整備し、誰もが24時間安心して受診できる医療システムを構築することが急務の課題であり、精神科医療が本来担うべき機能・役割を明確にしていく方策が必要である。

5.精神障害者の地域生活支援体制のよりいっそうの整備を

2002年度からの在宅福祉サービスの市町村への位置づけ、2003年度からの障害者ケアマネジメントの導入が予定されている中で、社会的入院者の受け入れを視野に入れた地域生活支援体制が計画・整備され、権利擁護制度の充実の下、個々の精神障害者のニーズに即した様々なサービスが継続して提供されるシステムを医療の充実と共に実現していくことが、国、行政機関、精神保健福祉に携わるすべての専門職、そして市民の責務である。

以上

日本精神保健福祉士協会 事務局
〒160-0022東京都新宿区新宿1-11-4 TSKビル7F−B 
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関連→2001年6月18日 校内児童殺傷事件に関する見解

   2001年9月 重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇等に関する見解・補足説明



池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会

重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向

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