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重大な触法行為をした精神障害者に対する新たな処遇制度(案)の骨子 第1 目的
○ 心神喪失等の状態で重大な犯罪に当たる行為を行った者に対し,その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより,継続的に適切な医療を行い,並びに医療を確保するために必要な地域社会における観察及び指導を行うことによって,その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止等を図り,もってその社会復帰の促進を図ることを目的とする。
第2 対象
1 対象行為
○ 対象行為は,以下のいずれかの行為に当たるものとする。
(1) 刑法第108条(現住建造物等放火),第109条(非現住建造物等放火),第110条(建造物等以外放火)又は第112条(これらの未遂)に規定する行為
(2) 同法第176条(強制わいせつ),第177条(強姦),第178条(準強制わいせつ及び強姦)又は第179条(これらの未遂)に規定する行為
(3) 同法第199条(殺人),第202条(自殺関与及び同意殺人)又は第203条(これらの未遂)に規定する行為
(4) 同法第204条(傷害)に規定する行為
(5) 同法第236条(強盗),第238条(事後強盗)又は第243条(これらの未遂)に規定する行為
2 対象者
○ 本制度の対象者は,以下のいずれかに該当する者とする。
1) 不起訴処分をされた者であって,検察官により,上記対象行為を行ったこと及び心神喪失者又は心神耗弱者(以下「心神喪失者等」という。)であることが認められた者
2) 無罪の裁判又は有罪の裁判(実際に刑に服することとなるものを除く。)が確定した者であって,上記対象行為を行ったこと及び心神喪失者等であることが認められたもの
第3 審判
1 合議体の構成等
○ 処遇の要否・内容の決定は,1名の裁判官及び1名の精神科医の意見の一致したところによることとする。ただし,不起訴処分をされた者が対象行為を行ったこと及び心神喪失者等であることの判断は,合議体の裁判官が行うこととする。
○ 裁判所は,精神障害者の保健及び福祉に関する専門的な知識経験を有する者に,必要に応じて参与員として審判に関与させ,処遇の要否・内容に関する意見を求めることができることとする。
2 入院又は通院の要否の審判
(1) 審判の開始
○ 検察官は,対象者について,継続的な医療を行わなくても心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認めるときを除き,地方裁判所に対し,審判の開始を申し立てなければならないこととする。ただし,対象行為の中では傷害に当たる行為のみを行った対象者については,傷害が軽い場合であって,当該行為の内容,現在の病状等を考慮し,この申立てをすることを要しないと認めるときは,これをしないことができることとする。
(2) 鑑定入院
○ 上記申立てを受けた裁判所の裁判官は,対象者について,継続的な医療を行わなくても心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認めるときを除き,一定の期間を上限として,処遇の要否の決定がなされるまでの間,鑑定のため,当該対象者を入院させる旨を命じなければならないこととする。
(3) 調査・審判
○ 裁判所は,事実の取調ベ,証人尋問等を行うことができることとする。
○ 裁判所は,対象者に関し,精神障害者であるか否か及び継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無について,医師に鑑定を命じなければならないこととする。
○ 上記鑑定を行うに当たっては,当該対象者の精神障害の類型,過去の病歴,現在及び対象行為を行った当時の病状,治療状況,病状及び治療状況から予測される将来の症状,対象行為の内容,過去の他害行為の有無及び内容等を考慮するものとする。また,この鑑定においては,その病状に基づく入院による医療の付与の必要性に関する意見を付さなければならないこととする。
(4) 申立ての却下等
○ 合議体の裁判官は,不起訴処分をされた者について,以下のいずれかに該当する場合には,申立てを却下する旨の決定をしなければならないこととする。
1) 対象行為を行ったと認められない場合
2) 心神喪失者等であると認められない場合
○ 合議体の裁判官は,検察官が心神喪失者と認めて不起訴処分をした者について,心神耗弱者と認めた場合は,その旨を検察官に通知しなければならないこととする。
(5) 入院又は通院の要否の決定
○ 裁判所は,上記(3)の鑑定に基づき,かつ,上記(3)の意見及び当該対象者の生活環境を考慮し,以下のいずれかの決定をしなければならないこととする。
1) 入院をさせて医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合は,医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定
2) 1)の場合を除き,継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認める場合は,入院によらない医療を受けさせる旨の決定
3) 上記1)又は2)の場合に当たらないときは,この法律による医療を行わない旨の決定
○ 入院によらない医療を受けさせる期間(以下「通院期問」という。)については,一定の上限を設けることとする。
3 その他の審判
(1) 退院又は入院継続の要否の審判
○ 指定入院医療機関の管理者は,医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定を受けた者(以下「入院患者」という。)について,入院を継続して医療を行わなくても心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認められないと判断するに至った場合は,直ちに,地方裁判所に対し,退院の許可の申立てをしなければならないこととする。
○ 指定入院医療機関の管理者は,入院患者について,上記おそれがあると認める場合は,一定の期間ごとに,地方裁判所に対し,入院継続の申立てをしなければならないこととする。
○ 入院患者,その保護者又は弁護士は,地方裁判所に対し,退院の許可又はこの法律による医療の終了の申立てをすることができることとする。
○ 保護観察所の長は,入院患者の退院後の生活環境を調査するとともに,指定入院医療機関,都道府県知事,市町村長等と協カして入院患者の生活環境の調整を行い,その結果等を踏まえ,入院患者の生活環境を報告するとともに,処遇に関する意見を述べることとする。
(2) 処遇の終了又は通院期間の延長の要否の審判
○ 保護観察所の長は,入院によらない医療を受けさせる旨の決定を受けた者(以下「通院患者」という。)について,継続的な医療を行わなくても心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認められないと判断するに至った場合は,指定通院医療機関の管理者と協議の上,直ちに,地方裁判所に対し,この法律による医療の終了の申立てをしなければならないこととする。
○ 保護観察所の長は,通院患者について,上記おそれがあると認める場合は,一定の期間を上限として,指定通院医療機関の管理者と協議の上,通院期間の延長を求める旨の申立てをしなければならないこととする。
○ 通院患者,その保護者又は弁護士は,地方裁判所に対し,この法律による医療の終了の申立てをすることができることとする。
(3) 再入院等の要否の審判
○ 保護観察所の長は,通院患者について,入院をさせて医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認めるに至った場合は,指定通院医療機関の管理者と協議の上,地方裁判所に対し,当該通院患者の入院の申立てをしなければならないこととする。また,通院患者について,継続的な医療が確保できないと認める場合も同様とすることとする。
4 不服申立て
○ 上記2の(4)の申立ての却下決定,入院又は通院の要否の決定,退院又は入院継続の要否の決定,処遇の終了又は通院期間の延長の:要否の決定及び再入院等の要否の決定に不服がある者は,高等裁判所に抗告をすることができることとする。
○ 鑑定入院命令に不服がある者は,地方裁判所にその取消しを請求することができることとする。
5 対象者の権利保障等
○ 対象者及び保護者は,弁護士を付けることができることとする。
○ 裁判所は,入院又は通院の要否の審判の際に対象者に弁護士が付いていないときは,これを付さなければならないこととする。
○ 対象者,保護者及び弁護士は,意見を述ベ,及び資料を提出することができることとする。
○ 裁判所は,入院又は通院の要否の審判について,被害者等から申出があるときは,審判期目において審判を傍聴することを許すことができることとする。
第4 指定医療機関における処遇
1 医療の給付
○ 厚生労働大臣は,入院患者及び通院患者に対し,必要な医療の給付を行うこととする。
○ 医療の給付は,指定医療機関に委託して行うものとする。
2 指定医療機関等
○ 指定医療機関とは,入院患者の医療を担当させる指定入院医療機関及び通院患者の医療を担当させる指定通院医療機関をいう。
○ 厚生労働大巨は,指定入院医療機関についての基準を定めることとする。
○ 指定医療機関の指定は,その開設者の同意を得て,厚生労働大臣が行うものとする。
○ 指定医療機関は,厚生労働大臣の定めるところにより医療を担当し,厚生労働大臣が行う指導に従わなければならないこととする。
○ 指定医療機関が,担当する医療を行うについて不適当であると認められるに至ったときは,厚生労働大臣は,その指定を取り消すことができることとする。
○ 指定医療機関(病院又は:診療所に限る。)の管理者は,精神保健指定医を置かなければならないこととする。
3 診療方針及び医療に要する費用の額の算定
○ 指定医療機関の診療方針及び医療に要する費用の額の算定方法は,健康保険の診療方針及び医療に要する費用の額の算定方法の例により,これによることができないとき及びこれによることを適当としないときの診療方針及び医療に要する費用の額の算定方法は,厚生労働大臣の定めるところによることとする。
○ 厚生労働大臣は,指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し,かつ指定医療機関が請求することができる診療報酬の額を決定することができることとし,指定医療機関は,厚生労働大巨が行う診療報馴の額の決定に従わなければならないこととする。
○ 厚生労働大臣は,審査のため必要があるときは,指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め,又は当該職員をして指定医療機関についてその管理者の同意を得て,実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができることとする。
○ 指定医療機関の管理者が,正当な理由がなく厚生労働大臣の報告の求めに応ぜず,若しくは虚偽の報告をし,又は診療録その他の帳簿書類の検査の同意を拒んだときは,厚生労働大臣は,当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができることとする。
○ 国は,政令で定めるところにより,指定入院医療機関の設置及び運営に要する費用を負担する。
4 その他
○ 指定入院医療機関の管理者は,入院患者につき,その医療等に欠くことのできない限度において,その行動について必要な制限を行うことができることとする。
○ 厚生労働大巨は,指定入院医療機関が行うことができない行動の制限を定めるほか,入院患者の処遇について必要な基準を定めることができることとし,指定入院医療機関の管理者は,その基準を連守しなければならないこととする。
○ 指定医療機関の管理者は,医療を受ける対象者の社会復帰の促進を図るため,その者の相談に応じ,その者に必要な援助を行い,及びその保護者等との連絡調整を行うように努めなければならないこととする。
○ 処遇改善請求,処遇改善命令等,患者の適正な処遇を確保するための制度を整備することとする。
第5 地域社会における処遇
1 処遇の実施計画の策定
○ 保護観察所の長は,指定通院医療機関の管理者,保健所等の長その他の医療,保健及び福祉に関する機関等と協力して,処遇の実施計画を定めることとする。
2 医療
○ 指定通院医療機関の管理者は,通院患者に対し,その病状等に応じて適切な医療を行うこととする。
3 観察及び指導
○ 通院患者は,通院期間中,精神保健観察に付することとする。
○ 精神保健観察として,保護観察所の長は,通院患者に対し,継続的な医療を受けさせるために必要な観察及び指導を行うこととする。
○ 保護観察所の長の行う観察,指導等に従事させるため,保護観察所に,精神保健観察官を置くこととする。
4 援助
○ 都道府県知事及び市町村長は,通院患者に対し,精神保健福祉法等の法律に基づき,保健及び福祉に関する援助を行うこととする。
5 関係機関の連携及び調整
○ 保護観察所の長は,指定通院医療機関,保健所その他の医療,保健及び福祉に関する機関と協議し,通院患者に対する処遇の状況を把握するとともに,その適正かつ効果的な実施体制を確保するため,相互の連携及び調整を図ることとする。
- 新法骨子関連 2002年2月14日
- ・自由民主党 触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム第11回会合 <議事次第>
- ・重大な触法行為をした精神障害者に対する新たな処遇制度(案)の骨子
- ・精神障害者の保健・医療・福祉の総合計画(仮称)に盛り込むことを検討中の主な内容
- ・触法処遇制度(案)骨子【図】
池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧 「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会 重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向 精神医療ニュースへ
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