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第6回「法務省・厚生労働省合同検討会」(議事メモ)


 法務省・厚生労働省合同検討会

関連資料


と き:2001年9月11日(火) 10:00〜12:00

ところ:東京保護観察所会議室(法務省1階)

議 題:重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇決定及びシステムの在り方などについて

出 席:法務省 三浦課長、杉山官房参事官、梶木・大橋課長、倉島鑑別企画官、白木・加藤局付

厚生労働省 松本課長、八神企画官、護摩所・泉・田中・岩田・井上補佐

オブザーバー:長尾院長、山上教授、町野教授、神弁護士、池原弁護士

意見陳述: 東京地検 渡辺副部長、石田検事、米元医師


(1) 意見陳述 東京地検 石田一宏検事 精神診断室

(2) 意見陳述 米元利彰医師 東京地方検察庁 属託医師

(3) 資料 東京地方検察庁における簡易診断の実情 (東京地方検察庁検事 渡辺恵一 石田一宏)

(4) レジュメ 東京地方検察庁における簡易鑑定 (東京地方検察庁 属託医師 米元 利彰)

 


三浦課長:第6回の法務省・厚生労働省の合同検討会を開かせていただきます。

 本日は、台風が接近する中、お集まりいただきありがとうございます。

本日は、東京地方検察庁における簡易診断の実情等を中心にして東京地方検察庁検事 渡辺副部長、石田検事、そして東京地方検察庁における簡易鑑定につきまして東京地検精神診断室の米元医師からまずお話を伺い、そのうえで意見交換したいと思う。

よろしくお願いしたい。

【渡辺恵一副部長】

私は、東京地検刑事部でとくに事件の捜査、招致を管理している立場である。そして石田は精神診断室を所管しており、そこで統計などを扱っている。

【石田一宏検事】

 それでは私から、レジュメにしたがって東京地方検察庁の簡易診断の実情について説明をしたい。

 まず最初に、第1の被疑者の責任能力の有無・程度が問題となる事件の一般的な捜査のやり方だが、一般の犯罪事件の捜査に加えて、この種の事件では被疑者の責任能力の有無・程度を判断する資料を収集しなければならない。この種の事件では、簡易鑑定、鑑定を実施することも視野に入れて進めなきえればならないので、なるべく早い段階で責任能力の判断に役立つ資料を収集するということを心がけている。とくに身柄事件の場合だと、被疑者を拘留している期間内に簡易鑑定をすることが普通なので。

 どのような証拠資料を集めるのかという点だが、まず第一には、とにかく被疑者を十分に取り調べて被疑者の犯行動機や犯行に至る経緯、犯行時の状況などについて調べ、またその裏付け捜査を行う。そして事実を確定していく。次には被疑者の周辺にいる人たち、家族、友人、知人、勤め先などから事情を聞いて、生活状況とか性格などを聞く。またこの種の被疑者の中には、精神病院への入院歴や通院歴などがある者もおるので、そのような場合には病院に対する照会や事案によっては担当医師の取調べをして、被疑者の入院歴、通院歴、及びその内容を調査する。また前科前歴がある場合には、当然そういう記録が残っているのでその記録を検討していく。

 第2の精神鑑定嘱託の実情であるが、精神鑑定を実施するか否かの判断については、以上のような捜査の結果、被疑者の責任能力の有無に疑いがある場合に精神鑑定を嘱託し実施している。きわめて例外の場合、明らかに責任能力がないと認められる場合、たとえば精神病院の中で妄想に基づいて傷害事件を起こしたとか、そういう場合には担当医師から事情を聞くことをやって責任能力がないということが明らかな場合、あえて精神鑑定を行うということはしない。しかしあくまでも例外で原則的には精神鑑定を実施する。

 それから、精神鑑定を実施する場合に、本鑑定と簡易鑑定があるが、とりあえず簡易鑑定を実施するというのが普通である。本鑑定だと数ヶ月間、鑑定留置するので、本鑑定の実施は慎重に対応している。事案の内容から、また簡易鑑定でよくわからないという事案について本鑑定を実施する。慎重に実施している。

 次に精神鑑定を嘱託する際に、どのような資料を提示しているのかということだが、先ほど述べたようなこれまで収集した資料をそのまま鑑定に提示している。もちろん必要に応じて記録に表れないものは検察官が医師に説明することをしている。

第3として、責任能力をどのように判断しているのかという点だが、まず、心神喪失、心神耗弱という言葉は刑法にしか出てこないが、大審院の判例にしたがっている。すなわち、心神喪失は「精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく、またはこの弁識にしたがって行動する能力のない状態」と規定されているし、心神耗弱は「その能力が著しく減退した状態」とされている。

精神鑑定を実施しているので、精神の障害とその程度については鑑定結果を重視する。弁識能力や行動能力についてはこれまでの捜査の結果を踏まえて犯行動機や犯行の態様をみて総合的に判断する。したがって、鑑定結果で精神障害があったと診断しても心神喪失だと簡単には判断していない。捜査結果を踏まえた総合的な判断をしている。

精神障害を有する被疑者の終局処分について、起訴・不起訴の終局処分をするに当たってどういった点を考慮するのかということだが、精神障害を有する者で心神喪失で責任能力が完全にないと判断されたものについては、保留処分しかできないので不起訴処分となる。しかし心神耗弱とか、精神障害はあるが心神耗弱にまでは至らないものについては総合的に判断していく。刑事司法上いろいろ規定があるが、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重、情状、犯行時の状況などにより判断していくことになる。

東京地方検察庁における簡易診断の実情ということだが、東京地検には精神診断室というものが設置され、本庁に4名の医師、八王子支部にも4名の医師が診断に従事している。まず、主任検事が捜査を受けて簡易鑑定をするとなれば、診断要請書を書き、捜査記録とあわせて診断室の医師に提出する。鑑定結果は精神衛生診断書を医師に作成してもらう。そして主任検事が総合的に判断して終局処分を決定していく。

1年間平均241件実施している。簡易診断を実施した方のうち精神障害があると判断された者は76.8%、そのうち公判請求と略式請求をあわせて5年間で起訴率は45.8%である。その他というのは少年事件で家庭裁判所に招致したもの。


【米元利彰医師】

東京地方検察庁で7年ぐらい属託医師をしている。

東京地検精神診断室は、昭和29年の覚せい剤乱用最盛期に覚せい剤取締法違反に関して、処罰と治療の問題を処理するために東京地検と東京都精神衛生課と協議して、違反者が検察官の手元にあるうちに覚せい剤中毒を診断することにより都の精神衛生行政にも貢献しようということになり、昭和30年8月11日に当時は地検の刑事部に精神診断室が開設され、その後覚せい剤事案が減少して、現場の検察官から一般事案に対する依頼が増加して現在の刑事事件の簡易診断を実施するようになった。

精神診断室の役目として我々が考えているのは、精神障害の疑いのある被疑者をだいたい1時間_3時間の診察によって、現在、精神病の状態にあるか、犯行時に精神病の状態にあったか、また精神病の状態にあればその病名を診断して刑事責任能力に関して意見を付して担当検察官に書面で報告することである。

次に簡易鑑定の実情だが、鑑定の日時を決めるときに被疑者に精神診断承諾書を書いてもらい決められた日に診察となる。届けられた資料を3時間ぐらいでチェックしたうえで診察する。当たり前のことだが事前に診断内容について担当検事と打ち合わせることは全くない。診察は事案にもよるがだいたい1時間_3時間程度。いくら簡易診断をしようとしても被疑者の協力が得られない場合には診察自体が成立しないので、その場合には診断不能と検察官に報告することも年に何件かはある。

診断の承諾書が被疑者から得られなかった場合には、検察から裁判所に行き、裁判官の精神鑑定命令という命令書にしたがって精神鑑定を行うが、承諾書が得られない被疑者はやはり先ほど言ったように診断自体が成立できず診断できないと報告する事例になることが多い。

 で、実際の診察はまず簡単な身体的検査、神経学的検査を行い、それから精神症状の診断を行う。診察が終り30分_1時間ぐらいかけて診断書を作成する。報告書が出来上がる前後に検察官から求められれば診断の説明を行う。その説明はとくに最近、池田小学校事件の後、診断の直後に検察からの問合わせがかなり増えている印象をもつ。

実際の診断書は各地検で書式が違っているので配布しなかったが、被疑者の氏名、生年月日、本籍、住所、職業、生活史、性格、飲酒、嗜癖、趣味、既往症(身体的・精神的)、で精神的既往症の中でわかっている入院歴など。その次に、前科前歴などの情報など。そして犯罪事実の概要、つまりどのような犯罪を起こして被疑者となったのか、そして検察官が診断を求めるに至った経過。その次に簡易鑑定書の一番重要なものになる。一番上に診断名、現在時・犯行時の診断、その下には説明となっていて、被疑者の責任能力に関する説明を書いていく。最後に、今後の処分に対する意見として、精神保健福祉法の25条通報が必要かどうか要否を書くことになる。これが診断書であり、1枚であるが足りなければ足していくことになる。診断書の記入時間は30分〜1時間であるが特殊な重大事件であれば2〜3時間になる。

 その次に、平成12年度の診断中の25条通報を要とされた事例とその後の処遇についてと書いてあるが、第1回の法務省・厚生労働省合同検討会議事録によれば、松沢病院の坂口副院長は「24条は大体年間1,600 、1,700 という形で増えているが、25条、26条の申請に関しては横ばいか若干増えているが、都の保健課の方で受理して措置診察に回すのは非常に激減している。数年前までは、25条は年間150〜160例前後になって90%以上が受理されて、措置入院年間130_140と大半を占めていたのですが、この3年ぐらいは措置診察に至るケースが50%ぐらいに減っており、そのうちの、90%弱が入院になって、年間60件ぐらいとなっています」と、そして「都全体の傾向で言えますのは、25条の問題からいきますと、裁判を受けさせようとする権利意識が東京都側、医療者側では強くなっている。言葉は悪いのですが、安易に25条、26条申請を調査段階で受け付けないということで、法との分離傾向にあるのがこの2〜3年の特徴と言えると思います」とある。

 ここで我々が引っかかっているのは、裁判を受けさせるという権利意識が都側、医療者側にあるのは結構だが、現実問題として25条通報になるのは不起訴として裁判にならない段階であった、それを落としてしまうというのは非常に不公平である。問題であると感じる。我々精神科の医師が判断して25条通報が必要であろうと判断している症例に対して措置診察に回らない段階で結果だけを通告するのは問題である。

 具体的にどの程度不診察になったのか。平成12年度の東京地検の起訴前鑑定の総数は240件である。先ほどのデータと変わっているが、それは東京都のほうからだいたい拘留期限の切れる3日ぐらい前に通報してほしいと言われており、本庁でできる症例数には限度があるので、八王子支部に頼み込んで簡易鑑定をやる場合があるためである。

25条通報を要と診断されたものが82件あるが、うち1件は覚せい剤使用で起訴、通報したかどうか不明は2件ある。その他は結果がわかっている。82件のうち措置入院とされたもの56件、非措置要入院は1件だが、東京都の場合は診察だけで非措置要入院であってもそのまま釈放されてまた問題を起こしてしまう。不診察は23件であるがすべてを門前払いではない。このうち1件は入院中の産後の女性が外泊期間中に我が子を窓から投げて殺人未遂の事例で、これは前の病院で治療を受けたいという夫側からの強い要請があり、医療保護入院となったケースである。不診察23例のうち精神病院にすぐに入院となったのは2例だけである。また、この殺人未遂を除く21例の罪名をみると、窃盗、住居侵入、詐欺、器物損壊、銃刀法違反など。要するに直接的な他害行為ではないものが多い。自傷他害の要件の解釈の違いに問題が起因している可能性があると思われる。

この事例1、A・Sは男性で年齢は30歳。事件の5年前に精神分裂病で入院、3回の入院歴がある。強制わいせつ行為で逮捕され簡易鑑定が行われた。犯行に結びつく幻覚妄想状態というものはないが分裂病の欠陥状態にあり責任能力は問えず、25条通報としたが不診察になり、S病院に医療保護入院となった。しかし、被害者は同じ団地に住んでおり退院させることは困ると被害者の弁護士が主治医に面会したが、医療を担当する医師からは、入院要件がなくなれば退院させざるを得ないと伝えられていた。ただ本人からの退院要求はなくて、結局引越費用を負担することで示談になり、本人と顔を合わせることは避けられたが、このときに被害者は都の精神保健福祉課長とも面談し、都から私どもにも問合わせがあった。要するに、どうして不診察にしたのかその判断について、少なくとも文書に残してほしい。「これは自傷他害のおそれの要件にはならないと思います」との電話での記録しか残されていない。

現在の措置入院制度の問題点ということだが、自傷他害のおそれの要件の解釈について、窃盗とか経済犯罪は却下されてしまう。精神保健福祉法は経済犯も含めているが、それがいいかどうかは運用上で絞り込むのではなく、基準を絞り込んだうえでやるべきと思う。

事例2はストーカー事件であるが、イギリス人の著名なジャーナリストに恋愛妄想を抱き、住居に侵入してただそこに立っているだけだがそういうことを繰り返す患者さんである。診断は妄想性障害であるが、会話も問題なく妄想以外は普通の女性。入院歴は措置入院は2回あるが、1ヶ月もすると「二度と近づきません」と誓約書を書いて退院となる。措置診察するが措置不要としてその場で釈放されまた繰り返す。このことをニューズウイークのコラムに書かれ、今度は起訴して裁判にかけられた。住居侵入して、ただ立っているだけだが、この会議の趣旨である重大犯罪ではないが、治療効果があがらない事例についてどうするのかという事例である。

もうひとつ、24条通報の問題である。先ほど紹介した坂口医師も増加傾向にあると指摘しているが、24条通報には責任能力があるとされる人格障害もかなり含まれる可能性がある。もうひとつは薬物による錯乱状態も含まれる。こういう事例が24条通報によって捜査もしない段階で措置入院の対象となる。刑法上の公平性がどうか検討する必要があるのではないか。川崎市民病院に24条通報で入院する約半数が人格障害であるというが、落ちていけない人が医療に回される危惧がある。

 

(質疑応答・省略)

 

資料 

第六回法務省・厚生労働省合同検討会

平成13年9月11日(火)

10:00_12:00

東京保護観察所会議室

(法務省1階)

議題  重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇決定及び処遇システムの在り方などについて

 

 

東京地方検察庁における簡易診断の実情

平成13年9月11日

東京地方検察庁検事 渡辺恵一 石田一宏

第1 被疑者の責任能力の有無・程度が問題となる事件の一般的な捜査要領

第2 精神鑑定嘱託の実情

第3 責任能力判断の実情

第4 精神障害を有する被疑者の終局処分

第5 東京地方検察庁における簡易診断の実情

 


東京地方検察庁(本庁)における簡易診断の状況

 

平成8

平成9

平成10

平成11

平成12

総 数

診断総数

210

209

257

264

265

1205

             
精神障害者

173

168

199

197

189

926

公判請求

71

74

85

75

62

367

略式請求

13

10

15

7

12

57

不起訴

87

84

99

115

114

499

その他

2

0

0

0

1

3

注1:平成8年の「その他」は、求公判移送1件、区険から地検への移送1件である。

注2:平成12年の「その他」は、家裁送致1件である。

注3:平成8年から平成11年までの全国の地検における刑法犯の起訴率の平均は、57.6%である(平成12年版犯罪白書による)。

 


資料

東京地方検察庁における簡易鑑定

平成13年9月11日

東京地方検察庁 属託医師

米元 利彰

1.東京地検精神診断室について

2. いわゆる簡易鑑定の実情

3.平成12年度の診断中の25条通報を要とされた事例とその後の処遇について

4.現在の措置入院制度の問題点

5.簡易鑑定の有用性と問題点


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