第四回法務省・厚生労働省合同検討会(提出資料)
法務省・厚生労働省合同検討会
関連資料
平成13年6月12日(火)
10:00〜12:00
東京保護観察所会議室
議 題 重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇決定及び処遇システムの在り方などについて
出席者:神弁護士、池原弁護士、松本課長(以下5名厚生労働省担当)・護摩所補佐・泉補佐・井上補佐・田中補佐、山上(医科歯科大学)教授、長尾医師(精神病院長)、町野(上智大学)教授、三浦課長(以下6名法務省担当)・杉山官房参事官・梶木課長・大橋課長・八澤局付・加藤局付
資料
「重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇決定及び処遇システムの在り方について(議論の素材として)」弁護士・神 洋明
_ 問題の所在
1 かつての保安処分論議
日弁連や精神神経学会等からの反対意見(保安処分対精神医療)
2 最近の論議
精神医療の現場(精神科医)から現行制度に対する問題提起がな- されている。
_ 精神科医の負担が大きくなっている現状
治療歴のある精神障害者の事件が起きる度に、精神科医に避難- される。
処遇困難者の存在が一般的な患者の開放的な処遇を圧迫して- いる。
_ 刑事司法における被害者の権利保護や、精神医療における一- 般患者の人権擁護思潮を反映
_ 精神障害者による重大な犯罪行為が報道される度に繰り返され- る「安全であるべき社会」が危機に瀕しつつあるという社会認識の
存在
_ 弁護士としてのひとつの考え方
1 新たな制度を創設しなければならない立法事実があるか。
_ 精神障害者の犯罪が、最近、特に増加しているという状況には- ない。
_ 精神障害者を危険な存在と見ることは困難である。
_ 危険性の予測も難しい。
2 刑法の規定に手を加えて「保安処分」を導入することは、人権保障- という観点からも、余りにもデメリットが大きい。
_ 責任主義に裏打ちされた刑法・刑事訴訟法の人権保障機能を- 損なう。
_ 触法精神障害者を他の精神障害者と区別し危険視する差別を
一般化することになりかねない。この峻別の結果、触法精神障害- 者自体の社会復帰をも阻害しないか。
_ さらに言えば、精神障害者そのものを犯罪予備軍として敵視す- ることにもなりかねない契機を有している。その結果、国民の誤解
- を広げることにもなる。
_ 触法精神障害者だけを対象とした結果、本来、問題があるとさ- れていた処遇困難者の処遇問題が取り残されることになる。
3 その制度によって、社会の中のマイノリテイ_が他から差別的に扱- われることになっていないか。
触法精神障害者の治療上の処遇は、そうでない精神障害者の治- 療上の処遇と異ならないのに、なぜ区別した扱いが論じられるの
- か。(処遇困難者の問題が触法精神障害者の問題にすり替えられ
- ていないか。)
4 刑法による処罰は、非難可能性を前提にしている。犯罪行為時の
責任能力の存在がその根拠になる。責任能力なき被疑者・被告人に
刑罰を科することはできない。
5 保安処分は行為者の責任を問うものではなく、行為者の危険性を
問うものである。危険性の予測は難しいと言われている。「レッテル- 詐欺」「治療なき拘禁」にならないか。
6 精神障害と危険行動は一緒に論じることができない。
_ 精神障害と危険行動の間には因果関係がない。精神障害だから
危険という考え方を人々の心に刻ませることになる。
_ この考え方は保安に対する懸念を優先させ治療に対する懸念を- 後回しにさせる。
_ コミュ二テイ_ケア、集中的な地域ケア_を不可能にする。
_ 危険性は精神衛生の専門家が正確に予測できるという危険な想- 定への依存を作り出す。
_ 現行の「措置入院制度」の問題点があるか。あるとしたら改善策で- 対応できないかの検討
1 措置決定をする指定医に、自由な判断が保障されているか。
警察官通報(24条通報)では、警察段階で「措置」が決められてい- て、指定医に意見を強要している場合があるという指摘がある。
その結果、警察官通報の中には、犯罪事実すら確認せずに、責任- 無能力で、措置入院させている場合があるという。
事実関係を確定させるという意味での「裁判を受ける権利」の保障
ということが考えられないではない(後の_−4)。
2 措置解除の判断は1人の指定医でよいか。また、法律家や学識経- 験者等が入る余地はないか。精神医療審査会等の第三者機関の関
- 与は考え得るか。
この場合、精神科医以外の者が関与することで、「保安」の意味が
判断されないような手立てが必要である。
3 措置解除後の治療中断にどう対応するのか。
通院強制をすることと、患者の治療を拒否する権利との関係をどうと- らえるか。
通院確保は強制とはなじまない。管理主義よりも、信頼関係を基礎と
した地域医療のなかでの訪問看護にするのがよいとの医療関係者- の指摘もある。
4 刑事手続きと措置手続きのすみ分けがきちんとできているか。
_ 本来、措置相当の刑事責任能力のない者を刑務所に送っていな- いか。また、その逆はないか。(上記_−1)。
_ 捜査段階での起訴前の(簡易)鑑定と起訴後の鑑定とでのダブ- ルスタンダードになっているという指摘もある。
* 上記1及び4の観点から、ラフな起訴をする方法で、事実- 認定と責任能力の判定は裁判所がするという方法が考え
- られないではない(当然、責任能力がないとして無罪となる
- 件数は増える)。
5 措置患者の中には、処遇困難な患者がおり、とくに民間の精神病- 院においては、その存在が、一般の精神障害患者の開放的な処遇
- を圧迫させている。
処遇困難な患者のための、重度の国公立施設は必要か。
(検討会では、この問題が触法精神障害者のための施設に置き換え- られている)。
仮に設けるとしても、特殊病院を作るのではなく、特化した病棟や病- 院(救急、急性期病棟、薬物依存症病棟、重症治療病棟)にし、病院
- 間の相互補完の道を残したものにする必要がある(病院の機能分
- 化)。
6 長過ぎる措置入院期間を防ぐために、措置期間を段階的に法定す- る必要はないか。
_ 措置入院制度を補完する精神医療体制の整備等について
1 不十分な精神医療体制
_ 民間病院が処遇困難な患者を受け入れるには、人的にも物的- にも設備を拡充する必要がある(医療法改正によるスタッフの充実
- も必要)。
患者と医師の割合、患者と看護の割合が、48対1、6対1(一般- では、16対1、3対1)。
_ 地域に密着した医療が行えていない。精神科病院の適正配置も
必要。
2 精神医療をとりまく地域社会のケアーの不十分さ
家族を含めた社会が精神傷害者を暖かく迎え入れる素地がな- い。本当の地域精神医療は、充実した医療体制を確保し、各病院
- がテリトリーをもち、地域内における資源を活用して治療を進める
- べきものである。
3 診療報酬上の問題
病院経営を十分可能にするような診療報酬体系になっていない。
処遇困難者に対応するには人的にも物的にも不十分すぎる。
4 医療従事者の教育と訓練の必要性
_ 残された問題への対応
おそらく、以下の問題を除いたケースは、上記の精神医療体制の- 整備・改善と措置制度の運用等の改善で対応が可能だと思われる。
1 刑事責任能力がなく、治療が必要なのに、現在の精神医療では治- 療が難しい患者
(人格障害、性格障害と言われている患者への対応)
2 刑事責任能力がなく、かつ、治療の必要がないとされる患者(行為- 時には責任能力がなかったが、措置判定時には病状がなくなってい
- る者)
( 文中の重複番号等は原文のままです。)
重大な犯罪行為を行った精神障害者の処遇決定及び処遇のあり方について2001.6.12 弁護士 池原毅和
1 医療と精神障害者の出会いの段階での問題
(1) 起訴便宜主義に制度的な欠陥があるのか。
_ 不起訴率の高さをどう評価すべきか。
_ 責任能力を理由とする不起訴裁定についての不全感を軽減- する手段はないか。
(2) 措置入院に制度的な欠陥があるのか。
_ 不起訴になった者について25条通報を行っても措置入院に- ならない場合があることをどう考えるか。
_ 無罪確定者、受刑修了者はどうか。
_ 重大な犯罪行為を行った精神障害者について特別な入院判- 断機関を作るとした場合何を判断するのか。 治療の必要性+
再犯の危険性とした場合、理論上はどれかの要件が欠ければ
入院は否定されるべきと思われるが、実際には治療の必要性
あるいは治療の有効性要件がかけても再犯の危険性要件が
残存すれば入院を認めることになるのではないか。その場合の
入院は単なる保安拘禁と径庭がないのではないか。
(3) 重大犯罪行為を行うに至る前に医療との出会いはないのか。
心の健康についての啓蒙活動
地域性新保健福祉活動の充実
2 入院医療の段階で制度的欠陥はあるのか。
(1) 重大な犯罪行為を行った精神障害者のための「専門」病院とは
どんなものか。
_ 「専門」とは、_)重装備の保安設備があり、院内は自由な環境
が可能な限り保たれていること、_)医師、看護婦、コメデイカルス- タッフが対患者比で十二分に配置されていることにつきるように見
- える。_)行われる医療内容は一般の精神医療と同じである。
しかし、従来、重大な犯罪行為を行った精神障害者で措置入院- 中に病院の拘禁設備を破壊して離院して問題になっている事案は
多いのか。多くないとすると重装備の保安設備は本当に必要なの- か。院内の自由な環境の整備、6人部屋雑居のような状態ではなく
個人のプライバシーが保てる個室等の設備、十二分な医療スタッフ
の配置は、一般精神医療でも是非実現すべきことである。仮に措- 置入院対象者の病棟をこのように改善するということでは同じ目的
- を達成できないのか。
(2) 重大な犯罪を行った精神障害者はすべからく処遇あるいは治療
が困難なのか。
処遇あるいは治療が困難な患者のうち触法精神障害者の占める- 割合は20%を下回るとも言われる。
3 退院時及び退院後に制度的欠陥はあるのか。
(1) 退院の決定が1名の医師の判断に任されることは欠陥か。
_ 特別な判断機関が退院を判断するとした場合、治療の必要- 性+治療の有効性+再犯の危険性を判断するとして、前2者が
消退している時に再犯の危険性だけで退院を制限できるのか。
(2) アフターケアの問題
_ 通院義務づけ制度あるいは通院命令の必要性は認められる- か。
_ 前提条件の整備として考えるべきことはないか。
4 医療から司法への受け渡しについて制度的欠陥はあるか。
措置入院終了後に刑事手続きを続行することは可能か。
以上
法務省・厚生労働省合同検討会
関連資料
池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会 重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向 精神医療ニュースへ
全国精労協ホームページ