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2001年2月3日
第3回精神科看護管理研究会セミナー〔メモ)
はじめに
・今回の講演のテーマは3つあります。(1)看護、看護の役割、(2)精神科看護・治療、(3)管理、管理とは何をするか、目的は………という3つのテーマです。そこに、全て、感情がからんでいるのです。
・これだけの内容を90分で話すのは困難です。現在、「感情と看護−人とのかかわりを職業とすることの意味」を書いているところです。話し足らない点は本を参照して下さい。縦組A5版280頁予価(本体2,400円+税)[著者]武井麻子 日本赤十字看護大学教授、医学書院。
・今年の7月に、「看護と感情」という日本で初めてのテーマでシンポジュームを企画しております。
1.感情労働とは...(ホックシールド)
・面と向かって、もしくは声をとおして、人々と接触があること
・特定の感情(たとえば感謝や安心、ときには恐怖など)をクライエントにひき起こすことが求められる仕事であること
・雇用者が労働者の感情面での活動を、訓練や指導監督をとおして、ある程度コントロールすることができる
→職業上、適切な感情の内容や表出のしかたが決められており(感情ルール)、それに対して、有形無形の報酬があたえられる
・肉体労働、頭脳労働、精神労働という概念がありますが、1970年代半ばに社会学者のホックシールドが、感情労働という概念を使用しました。航空会社で、借金の取り立てやスチュワーデスの恐怖を考えていて使い出しました。
・今日では、対人職業が大半を占める様になってきました。そのためにストレスやメンタルヘルスが課題となってきております。電話相談も増えてきております。感情社会学会も出来ました。
・職業には、特定の感情がつきまとっています。
・リスクマネージメントでは、「ヒューマンエラー」が必ずあります。
・職業は、感情+組織+肉体労働で成り立っています。
2.精神科看護のなかの感情
切り捨てられる看護の感情的側面
<患者のかかえる問題〉とは...
・患者は「現実の問題」を抱えている
・「現実の問題」は人間関係上の葛藤であることが多い
・葛藤とは、感情の問題であり、繰り返し再現されるものである
・感情の問題には感情をもってあたるほかはない
・経営効率のために、早期に退院させる用になり、そこには薬物療法依存があり、心への治療に関わっていない不全感が残されています。看護の部分を切り捨てている不全感が高まっています。
・看護の部分を切り捨てているということは、「変化」と「成長」の可能性を切り捨てています。急性期と慢性期と分け、療養病棟では、マンパワーも少なく、なおさら切り捨てている。
・医学でも、「脳内物質の変化を何が起こしたのか?」という研究はあっても、「脳内物質の変化はなぜ起こるのか?」については視点が向けられていない。感情がどのように作用しているかに関心が向けられていない。
・状況との関係性では、脳の中に感情が存在するのではなく、体験の中に感情が存在するのです。
・患者は繰り返しのパターンがある。弱点をそのような形で反映させている。
3.看護婦の幻想と現実
(1)「よい看護婦」というとらわれ
(2)「何かしてあげること」へのとらわれ
(3)「自立」へのとらわれ
・人は感情の管理をしている。呼吸も体も管理している。管理できなくなると、バーンアウトする。
・組織のゴタゴタは、お互いに、「相手がしているから、事がうまく済んでいるからやらない」し、「相手がやらないからやってしまう」ということから起こり、お互いにステップを変える必要がある。
・「看護婦が殺人事件を起こしている」という見出しの活字が出ていますが、「母が殺人」では見出しにならないし、「准看護婦が殺人」なら見出しになる。
・看護婦で、自分が白衣の天使と思っている人はいますか?
・「看護婦がこんなことをやっていいのだろうか?」と自問自答する。怒鳴ったり、怒ったり、叱ったりしたことを語れない。そんな感情はごまかし、隠してしまう。そのような事について、検討もなされない。
・「共感(的理解)」「傾聴」「受容」ということを、看護学校で押しつけられ、先生は勧める。共感とは、患者に反応していろいろな感情が湧いてくることであり、巻き込まれることである。
・看護婦の感情について、仕事の上では、「見ない」「聞かない」「言わない」とされている。
・「怖い」とは言えないし、そのことをあまり語られていない。
・結論から言えば、「看護婦と患者は紙一重」である。学生から相談を受ける中で、学生の生育歴を聞き、そういうことに関心が向くこと自体、自分が生育歴そのものへの関心を持っているのであり、だからこそ分かるのであり、手が差し延べられる。自信が過去に傷付いた体験が生かされる。
・自分が何もしてやれなかった無力感や無力で罪深いという思いが残っており、だからこそ「良い看護婦」になろうとし、捧げたいと思う。
・良い看護婦になれないと自分がダメな者に見える。
・のんびりしていると悪いことをしているように思ってしまう。
・時間がなくなってきました。残りのテーマをどのようにつなげて話しましょうか。
4.患者との関係がよびさますもの
(1)「感情の器」になること
(2)患者と看護婦の境界線
・ボルビー(精神分析医)が、大人のうつ病に、ある傾向があることを発見しました。「世話好き」「他人のことを気にする」「自分より相手を考える」言い換えますと、「世話役の自己」「いつわりの自己」「仮面の自己」です。
・そこには、「過去に自分がケアされなかったことを補償しようとする」意識が働いています。
・夫婦仲が悪い環境で、親の調停役をして育った子供は「強迫的自立傾向」があります。親が子供扱いをするのを避けます。一方で、「何時までも甘えたい」「子供でいたい気持ちもある」「早く大人になる」。
・「強迫的自立傾向」があると、「子供・上司・周囲に病気を作る」「感情の機微をキャッチボールできない」「自分は何も頼らずに生きてきた」……………自立へのとらわれが同時に甘えである。
・セルフケア理論があるが、セルフケアできない患者を見てうんざりし、同時にそのような患者を感情的には拒否している。
・看護婦が患者の「感情の器」になっているのです。
・看護婦がイライラしている時がある。患者がそういう感情を看護婦にかき立てているのです。どこまでが、患者の感情であり、自分の感情であるのか分析する必要があります。今起こっている行動のパターンは、過去に必ずヒントが隠されています。
・まず、自分の感情に気が付かなければならない。
・個人で感情を語れるには限界がある。気遣いの部分が多いのです。
・自分の感情に気がつくためには、相手に話し、相手に投影してみることです。
・感情を流し込んだり、流し込まれたり。写したり、映し出されたりする。
・そのためには、チーム、他者が必要となる。
5.看護婦の不安に対する防衛
(1)個人としての防衛
(2)組織としての防衛
・集団の中では、防衛が働く。
・職場の自分とプライベートを切り離す必要がある。
・組織として防衛するためには、業務分担する。
6.集団としての看護婦組織
(1)婦長の孤独
(2)もめる看護婦
(3)女性集団のむずかしさ
7.病院という組織のなかの看護婦組織…看護はどこへ向おうとしているのか
・看護婦の集団は一致団結して見えるが、実は仲たがいが多いのが世界的傾向である。
・その理由は、(1)女性集団である。男性が精神科看護にいることが助かっている。(2)女性には序列と言う考え方が出来ない。頭がいい、美人、背が高い、胸が大きい、など価値観が多い。実力でなく、経験年数という客観性が主流となる。
・婦長は権威がない。人格、スキルにたけているという尺度だけである。
・超人的婦長はいない。
・管理には、時には「NO」という決断がいる。スタッフに対しては時には悪い考えをする必要がある。経営能力が問われる。
・看護婦は辞めてゆく仕組みになっている。
・経営する者は、看護婦に意欲を持たせるとか、良くしようという努力をしない。感情労働が切り捨てられているのです。
質疑1「見えない心を理解する」「理解出来ない症状に出会う」「残念な療養環境を黙認し放置する」「違法行為を起こした患者と出会う」「時に、恐怖を覚える」など、自分の体験したことのないものに接した時、看護婦としての達成感に出会うのだろうか?という疑問があります。まず、看護婦のスーパーバイザーの設置の是非についてどのように考えておられますか?次に、看護婦は公私を使い分け、二重人格性とか演技するという加重労働の役割を果たすことを求められますが、そのような場合にどのようにサポートすれば良いかと思うのですが、「自身が努力したという充実感」で救われるのかもしれませんが、何かご意見をお聞かせ下さい。
(答)場面一つ一つに達成感が何故得られなければならないのかわからないのですが。訳がわからない……妄想はわからないことが多いですが、でも妙にわかることがある。例えば、ファンタジーはわかることがありますよね。お姫様と正反対の状況におり、自分がお姫様と思わないと生きられない。生きるために意味づけを変えている。違法行為といっても、殺人はさておいて、泥棒をやったひとは大勢いますよね。自分も盗まれた感覚はある。人の物を盗っても悪いという意識がない。そこには母親を取り戻そうとするケアがある。
何か意味があると思ってくると、面白い。そう思わないとやり甲斐にならない。任務・達成感でなく、面白さだと思う。やり甲斐だと。達成感というのは、強迫的自立の原動力のことではないでしょうか。
質疑2「もめる看護婦」「もます看護婦」というのはいますよね。経験が長いひととは、一匹狼のような人に多いですよね。人間性もあるが、解決策があれば教えて頂きたい。
(答)「もます看護婦」はいますよね。社会の中にはそのような役割を果たす人はいます。揉めるのは、チームの問題であり、組織の問題です。その看護婦がいなくなっても、又別の看護婦がします。そのような役割の看護婦がいるのです。その組織には、既に、対立・葛藤があるのです。その反映です。その結果看護婦は結束をする。その看護婦がいないとバラバラになる。その人だけですむ問題ではないのではないでしょうか。
質疑3良い看護婦を演じて、問題にぶつかって、相談を受けるケースがあるのですが、その場で起こっているメカニズムを説明しても、本人はわからない。自ら気づくためのサポートの仕方はありますか。
(答)患者は同じことを繰り返しますよね。そうしますと看護婦はむなしくなりますよね。実はそのむなしさが大切なのです。彼・彼女が持っているむなしさが看護婦に投影されているのです。むなしさを乗り越えて生き続けると、自殺しかねない。むなしさを流し続けることで生き続けられてゆく。
むなしさ、無意味さに耐えることが看護婦の仕事だと思うのです。看護婦の仕事は達成感ではないのです。
シリーズ ケアをひらく
感情と看護
人とのかかわりを職業とすることの意味
縦組A5版280頁予価(本体2,400円+税)
[著者]武井麻子 日本赤十字看護大学教授
看護婦はなぜ疲れるのか?
「巻き込まれずに共感せよ」「怒ってはいけない」「うんざりするな!!」
−−−看護は肉体労働でも頭脳労働でもあるが、なにより感情労働だ。
どう感じるべきかが強制され、やがて自分の気持ちさえ見えなくなってくる。
隠され、貶され、ないものとされてきた《感情》をキーワードに、
「看護とは何か」を縦横に論じた記念碑的論考!
労働条件の厳しさ、人手不足、交代勤務のつらさなど、誰の目にも明らかな問題以上に、看護婦を悩ませている問題があります。それが本書で見ていこうとする、看護婦自身が日々体験している感情の問題です。みずからの感情を語ることは「恥」をさらすようであり、くだらなく思えるかもしれません。けれども、それをくだらないと感じることから問題にしなければなりません。最近新聞を賑わしている医療事故や看護婦による犯罪にしても、その裏側には、軽んじられ、無視されてきた感情が、語られないままに渦まいているのではないでしょうか。……本書より
医学書院TEL03.3817.5657 FAX03.3815.7804
感情と看護 目次
序章 見えない看護婦
1看護の仕事
2感情労働としての看護
3看護婦のイメージ
4「共感」という神話
5身体が語る言葉
6看護における無意識のコミュニケーション
7死との出会い
8傷つく看護婦、傷つける看護婦
9看護婦という生き方
10組織のなかの看護婦
終章 看護の行方
(武井麻子氏の講演の感想)
1.現場で行われて居ることを、独自の感性で分析をされた。臨床で何が活かされるかというと、質疑応答の中で、武井氏の感性が感じられる言葉があった。
(1)「場面一つ一つに達成感が何故得られなければならないのかわからないのです」
(2)「もます看護婦」はいますよね。社会の中にはそのような役割を果たす人はいます。もめるのは、チームの問題であり、組織の問題です。
その看護婦がいなくなっても、又別の看護婦がします。そのような役割の看護婦がいるのです。その組織には、既に、対立・葛藤があるのです。その反映です。その結果看護婦は結束をする。その看護婦がいないとバラバラになる。その人だけですむ問題ではないのではないでしょうか。
(3)患者は同じことを繰り返しますよね。そうしますと看護婦はむなしくなりますよね。実はそのむなしさが大切なのです。彼・彼女が持っているむなしさが看護婦に投影されているのです。むなしさを乗り越えて生き続けると、自殺しかねない。むなしさを流し続けることで生き続けられてゆく。むなしさ、無意味さに耐えることが看護婦の仕事だと思うのです。看護婦の仕事は達成感ではないのです。
2.『看護婦が患者の「感情の器」になっているのです。』という表現が印象的でした。以下の意味で使われていました。看護婦がイライラしている時がある。患者がそういう感情を看護婦にかき立てているのです。どこまでが、患者の感情であり、自分の感情であるのか分析する必要があります。今起こっている行動のパターンは、過去に必ずヒントが隠されています。まず、自分の感情に気がつかなければならない。
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