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精神科におけるクリティカルバス


東京都立松沢病院看護部主任 片山弘美

全自病協雑誌第40巻第4号        2001年4月

はじめに
 当院は120年の歴史を持ち1200床を有する精神病院である。病棟数は30あり,急性・
救急,入院病棟,慢性,社会復帰,アルコール,合併症から構成されている。
 入院患者はほとんどが精神分裂病で占められており,処遇困難の患者が多い。また
年々高齢化も進んできており60才以上の患者が平成12年3月現在で4OO名を超えてい
る。
 そこで平成11年度に主任課題研修で看護研究的に始められたクリティカルパスヘの
取り組みが行われた。その結果クリティカルパス導入の必要性,有益性などが結論と
してあげられた。
 そして,平成12年は院全体の取り組みとなり,医師,看護婦,リハピリ、PSWなど
他職種が参加し,クリティカルパスを推進していくためのプロジェクトチームが6月
に発足された。

当院におけるクリテイカルパスの現状
 プロジェクトチーム発足後急性期,入院病棟,社会復帰,アルコール病棟において主
任を中心とした取り組みが開始された。
 急性期と入院病棟は,精神分裂病患者に対するクリティカルパスの試作・実施を
行っている。
 社会復帰では,休息入院(単身アパート生活者で訪問看護を受けている)患者を対
象にしたクリティカルパスの試作を行ったが実施には至っていない。
 アルコール病棟では,アルコール・リハピリテーションプログラムに沿って1週問,
1カ月,3カ月の3種類のクリティカルパスの試作・実施を行っっている。
 いずれも過去のデータから対象の絞り込み,時間軸を設定し,縦軸は実際行なってい
る治療及び看護に沿ったものを項目内容として取り入れた。
 そこで,急性期におけるクリティカルパス試作・実施の経過を紹介する。

急性期におけるクリティカルパスの経過
 女子の急性期病棟は40床のうち10床隔離室を有している。入院時は必ず隔離室を使
用する。これは自傷,他害行為から保護すること,精神症状による混乱が鎮静するま
で外的刺激を制限し精神的安定を図るため行なわれている。そこで、クリティカルパ
ス作成上隔離室使用期間の設定が入院期間に大きく係わってくるのではないかと考え
隔離室使用期間に着目した。カルテ検索の結果から使用期間が最も多い4日間に設定
した。また入院期間は1ヵ月を目標とした。
 対象は年間入院患者で全体の55%を占める精神分裂病とし,その中でも合併症のない
精神分裂病患者とした〈表1〉
 このクリティカルパスを使用し,平成12年9月から12月までの期間16名に試行した
〈表2〉。
 その結果,隔離室使用4日間で1ヵ月以内に退院,転棟したケースが3例あった。反対
に13例が隔離室使用を延長された。その理由をみると拒食,拒薬のケースが多いこと
が分かった。このことから隔離室使用中から服薬や食事に対するケアが重要であると
考える。
 入院期間については,隔離室使用期間が短ければ入院期間も短くなるのではないか
という考えもあったが結果は得られなかった。実際に試行してみると入院期間には退
院先が大きく係わっており家族との関係が重要であると言える。家族がいても調整が
うまくいかないと入院期間が長くなりがちで退院できず次の段階である入院病棟への
転棟いう形になっている。
 結論として,女子の急性期病棟では転棟する患者を対象とした服薬や食事に重点を
おいたケア項目で集約されたクリテイカルパスが必要であることが言える。
 まだ導入段階で内容的には不十分であると思われるが,今回時間幅に焦点をしぼり
検討を行った。その結果症例数は少ないが,貴重なデータを得ることができた。今後
評価,修正していく上で手がかりをつかむことができた。引き続きデータを収集しな
がら取り組んでいく必要がある。

当院におけるクリティカルパスの問題点
 精神科においてクリティカルパスが中々進まないのは医師との調整が図りにくく,
看護婦が主体となりクリティカルパスを完成させているためではないだろうか。当院
でも同じことが言える。今回取り組んでみて試作は行ったものの医師との調整が中々
図れず看護中心のクリティカルパスとなってしまったり,実施できないなど問題点が
上がっている。
 これは「クリティカルパスは精神科に適用するのか」という疑問があるからではな
いだろうか。精神科の対象とする病気は同じ疾患であっても症状は多彩である。また
入院までに多くのエピソードに彩られている。そのため入院から退院までを標準化し
たクリティカルパスでは同じ疾患であっても適用しないと考えているため医師との調
整が図りにくいと思われる。
 確かに精神科の患者は,病気に対する認識が薄く,発症経過や症状も違うのは言う
までもない。よって治療経過も様々で限定できず短期間で経過することもあれば,薬
物効果や副作用によっては長期間になることもある。このような中で疾患を限定し,
クリティカルパスを実用化していくのは難しいと考える。しかし,実用可能にしてい
くには評価,修正しながら患者の共通データを収集し,傾向を知ることも必要である
と考える。

今後の課題
 クリティカルパスのメリットは、医療チーム協力の強化,ケアの継続性維持,質の
均一化の維持と向上,患者満足度の向上,記録の負担軽減,コストの滅少などが上げら
れている。
 今回の取り組みで問題となったのは医師との調整の難しさであった。入院治療の主
力の一方は医師の治療であり,看護計画だけではクリティカルパスを完成させるのは
難しい。入院中の患者に最良の治療看護を提供するためにはお互いに協力しあうこと
が重要である。また,リハピリ,PSWなど他職種との連携も深め,情報の共有化を図
り,お互いに合意を得た上で取り組んでいく必要があると思われる。
 また,看護スタッフへの教育も必要である。クリティカルパスに対して用語そのも
のから理解してもらえないこともあり,誤解や偏見を持っている人も多いと思われ
る。院内としては,抗議が1回行われたたが,全員参加できたわけではなく各自の理解
も十分とは言えない。クリティカルパスを実用化していく上で理解不足は責任のなす
り合いになりかねない。まず、スタッフを指導する際、「なぜ必要なのか」「何を目
指しているのか」を十分説明することが重要である。クリテイカルパスに対するビ
ジョンがはっきりすることで取り組む姿勢が前向きになってくると思われる。そし
て、プロジェクトチームの一員である主任が指導する役割を担っていくことが大切で
ある。主任がリーダーとしてスタッフを引っ張っていき,スタッフとのコミュニケー
ションを通じて疑問,意見などに対応していく必要がある。やはり,医療チームの協
力を得るためにも全員が使いやすいクリティカルパスの検討も実用化に向けて重要と
思われる。

おわりに
 当院では急性期,入院病棟,社会復帰,アルコールの病棟においてパスの作成及び試
行が行なわれている。現在は,症例数も少なくデータ収集と言った段階でまだまだ課
題は多く残されている。これから先長い時間を要することは言うまでもない。まずは
クリティカルパスの実用化に向けて医療チームとして医師と看護婦,他職種との連携
を図った上でのクリティカルパス作成が必要であると考える。
〈参考文献〉
1)立川幸治 阿部俊子編集:クリティカル・パスわかりやすい導入と活用のヒント,医
学書院1999
2)末安民生他:特集クリティカルパスを始めよう,精神科看護,28(2),2O01.2.


MONTHLY  月報
2000年12月〜2001年1月

●12月5日 第6回「精神病床の設備構造等の基準に関する専門委員会」
 4ヶ月余りに渡って激論が交されて来たが、11月30日に医療法改正案が成立し,新年
早々に省庁再編が予定されているこの時期に一応の決着をみた(2月号「展望」・「参
考資料」参照)。
●12月25日 民間警備会社についての報道
 テレビ朝日系ニュース番組で、精神障害が疑われる者の家族から依頼されて搬送を
請け負う民間業者の実情が報道された。業者が実際に本人に働きかける場面もあった
が,報道は批判的なものとは言えなかった。改正法に盛り込まれた移送制度が運用さ
れていない状況,さらには受診に結びつきにくい精神障害者への行政の無力が背景に
ある。なお,各地の会員病院などに対してもファックスで宣伝をしているようだっ
た。
●12月26日 医療審議会総会
 最終的に,他の病床区分と共に,改正医療法に係る政令・厚生省令・厚生大臣告示案
要綱が承認された。これを基に,3月の改正法施行に向けて作業が進むことになった。
●12月28日 道路交通法改正試案,公表
 この日までに公表された試案では「運転免許証の更新を受ける者の負担の軽減」,
「悪質・危険運転者対策の強化」と共に,「運転者対策の推進」の1つとして「障害
者に係る欠格事由の見直し等」が挙げられた。「てんかん、精神分裂病等にかかって
いる者」については,一般の報道とは異なって「原則として,免許を拒否する」と
なっていた。警察庁のウェプサイトでも意見が募集されたが,年末年始を挟んで特別
部会のメーリングリスト(ML)で情報と意見が交換され,意見書の送付に結びつい
た(3月号「資料」参照)。
●1月10日 アモバルビタール注射剤の供給停止、明らかに
 精神科領域で急速鎮静に広く使用されていた,バルビツール酸誘導体の同注射剤の
供給停止が、MLで話題になった。日常的にはフルニトラゼパムなどのベンゾジアゼ
ピン系の薬剤で事足りるとしつつ,著効を示す少数例に対しても使えなくなることに
対して割り切れなさを示す会員が少なからずいた。
●1月16日 内科系学会社会保険連合例会
 診療報酬改訂について要望する際の重要な回路である,内保連第90回例会が都内で
行なわれた。五島雄一郎会長から,昨春の改定の経緯などについての報告と,来春の
次期改定に向けてのスケジュールなどの提案が行なわれ,了承された。PPSなしにDRG
のみの試行を拡大すること,改定の要望にはデータが必要とされること、などが話題
になった。
 精神科関連小委員会の委員長は当特別部会の守屋診療報酬委員(埼玉県立)で,当日
は金子副部会長(新潟県立小出),川副情報委員長(旭中央)も関連学会の代表として参
加した。診療報酬問題委員会での意見集約が求められる。
●1月27日 精神保健従事者団体懇談会例会
 雪の降りしきる都内で,精従懇第81回例会ガイドライン行なわれた。世界精神医学
会(WPA)2002年横浜大会の広報委員会から活動報告を受け、WPAへの取り組みについて
議論された。精従懇として従来なった国際フォーラムをWPAの中で行なうが,準備とし
て例会に並行してフォーラム実行委員会を開くほか,WPAのパブリシティ推進部会や精
神保健委員会にも協力して行くことになる。会員団体からの積極的な参加が求められ
た。その他,道路交通法改正試案,精従懇シンポジウム(5月頃)についても話し合われ
た他、国会報告も行なわれた。

 当部会の全会員病院の精神科医師・職員を呼びかけの対象とした,メーリングリス
トヘの登録を希望される方は,以下のような電子メールを送信して頂きたい。なお,
新年度以降,アドレスが変更される可能性があるので御了承を頂きたい。
宛先:Majordomo@mlc.nifty.com
題名:(何でも,なくてもよい)
本文:「subscribe zenjibyo」の1行のみ

 なお,お問い合せは下記まで,電子メールで頂きたい。
 kawazoe@hospital.asahi.chiba.jp(情報委員長 川副泰成)


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