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「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」に関する声明

       
          2002年5月15日
           
    日本臨床心理学会運営委員会
         
       運営委員長 吉田 昭久

 日本臨床心理学会は、精神医療、保健、教育、福祉、産業などの諸領域おいて、臨床心理学的業務及び研究に従事する者や臨床心理活動に関心を持つ者によって構成される学術団体です。
 臨床心理の現場では、患者やクライアントとの人間的な信頼関係が最も尊重されるべきです。このような立場から、私たちは第154回国会に提出されている標記法案(以下新法案)がこの信頼関係を根本的に破壊するものと考え、その可決成立に反対であることをここに表明し、抜本的見直しを行うよう要請いたします。

理由
1. 新法案は、2000年5月のバスジャック事件、そして2001年6月の大阪教育大学附属池田小学校事件などが契機となったことは明らかです。政府は、これらのあまりに不幸でかつ特異な事件を契機に顕在化した社会の不安感情を背景にして、「精神障害」と「他害行為」を短絡的に結び付け、「他害行為」への対応策のみを先行させて法案成立を急いでいます。これは、患者である「精神障害者」への人権侵害や社会的偏見を助長するだけであり、21世紀を展望して展開し始めた「精神障害」をめぐる治療的環境や生活への支援的環境を後退させるものであります。

2.臨床心理学的には将来の再犯を予測することは不可能です。それにもかかわらず、この法案は将来の再犯予測が可能であるとし、その結果強制入院医療を合法化するものです。これは精神医療の名を借りた不定期刑の設定につながるものと言えます。

3.保護観察所による強制通院や監督権の導入は、それでなくとも偏見に満ちた社会環境に身を置く「精神障害者」との信頼関係を築こうとする臨床心理学的援助を、まったく否定するものと言わざるをえません。

4.新法案では精神障害者という一般的な用語を極力避け、「心神喪失者」や「心神耗弱者」という用語を用いています。しかし第33条以降繰り返し使用される「心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれ」という文言は、明らかに「精神障害」が原因で「他害行為」を行う恐れがあることを強調しています。これはまさに国が社会防衛の立場から「精神障害者はこわい」という社会的偏見を強化しているといっても過言ではありません。


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会

重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向

隔離新法」 国会上程反対 速報! 国会議事堂前抗議行動!

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)(更新020324)


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