2002年4月1日
日本精神科看護技術協会ニュースより
「重大な犯罪を行った精神障害者の処遇をめぐって」 −「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」提出を受けて− 重大な犯罪を行った精神障害者の処遇のあり方については99年の精神保健福祉法改正の付帯決議で検討課題であることが指摘され、国は01年1月から厚生労働省.法務省の合同検討会を開催し論議を重ねてきた。ところが、同年6月の大阪児童殺傷事件により、触法問題の論議は一挙に加速された。この間、論議の推移を見守っていたわれわれは、9月、法改正プロジェクトを立ち上げ、厚生労働省へ要望書を提出した。
02年3月、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」が法務省から示された。この法案によると、精神科医と裁判官で構成される審判所の設置、指定医療機関への入院ないし通院処遇、保護観察所がマネジメントする地域ケア等が構想されている。
本来、刑罰は過去の犯罪行為に対して科されるが、新法の目的は再犯の防止であり、将来の危険性を予測して処遇が決められることになる。触法精神障害者は「再犯のおそれ」があると認定される限りこの法律の対象となるのである。精神医学的には、病状の短期予測はある程度可能だとしても、長期的には困難であるというのが一般的な見解であるにもかかわらず、予測不可能で確定できない「再犯のおそれ」を理由にした入院処遇は、保安処分的な側面を持っているといわざるをえない。精神障害者のみに「再犯のおそれ」を理由に、司法処分を科すことは、法のもとの平等に反しないのだろうか。
精神科領域の看護に従事する者として、この法案の背景に精神障害者への誤解、偏見、差別があるのではないかと危惧する。また、市民の間に、より差別感情を強める危険性も感じる。
現在、いわゆる触法精神障害者は、確立されていない治療プログラム、少ないマンパワー、不十分な設備、必ずしも良好とはいえない環境下で処遇されているといっていいだろう。地域でのサポート体制も不十分である。加えて、いわゆる人格障害や薬物依存症者、治療抵抗性の精神病などを含む、多様で困難な問題を精神医療現場は抱えている。
看護者は、医療職のなかでも精神障害者に最も身近で日常的にかかわりを持つ職種として、時に心理的重圧を感じながらケアにあたっている。この臨床の現状を改善する方策がまず示される必要がある。いうまでもなく、一般的な精神医療の充実が最も優先されるべき課題なのである。
日本精神科看護技術協会は、精神科看護の専門職能団体として一般の精神科医療を充実させ、精神障害者の社会復帰をめざし、地域におけるサポートシステムを構築し、より質の高い医療.看護を提供することが、結果として社会の安全確保につながっていくという認識にたつものである。
池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧 「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会 重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向 「隔離新法」 国会上程反対 速報! 国会議事堂前抗議行動! 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)(更新020324)
- 新法骨子関連 2002年2月14日
- ・自由民主党 触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム第11回会合 <議事次第>
- ・重大な触法行為をした精神障害者に対する新たな処遇制度(案)の骨子
- ・精神障害者の保健・医療・福祉の総合計画(仮称)に盛り込むことを検討中の主な内容
- ・触法処遇制度(案)骨子【図】
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