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「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」についての緊急声明

2002年3月19日

陽和病院患者協会

 政府は、重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇に関して、本年3月15日、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」(以下、「処遇新法案」)を国会に上程することを閣議決定しました。この「処遇新法案」では「再び対象行為を行うおそれ」を要件としての期限の定めのない強制入院、3〜5年にわたる強制通院といった処遇制度を創設し、地方裁判所に設置する裁判官および精神保健審判員からなる合議体が裁判することとしています。この「処遇新法案」は数多くの問題点を持っています。  

                  
第一に事実認定における当該精神障害者の防御権が保証されていないことが挙げられます。
なぜならこの裁判は職権主義的構造となっており、いわゆる起訴状一本主義による当事者主義的構造で裁判の中立公平性を担保するのと異なり、裁判官個人また精神科医個人の人徳に頼らざるを得ず、憲法31条以下の適正手続きの保証が無いからです。しかも三ヶ月以内に結論をだすというのでは、すでに少年審判でも問題になっているように、事実認定について重大な問題が起きかねません。 

           
第二は「再び対象行為を行うおそれ」とは詰まるところ「再犯の恐れ」に他ならず、これを予測する事に関しては、すでに日本精神神経医学会が明らかにしてるように、とうてい不可能だからです。これは不確実な再犯予測を前提として許容し難い人権侵害を引き起こすものです。仮に千人に一人が「犯罪を犯す」として、万が一95%の確率で「犯罪を犯す」との予測が可能だとしても施設に入れられている人の98%が実は「犯罪を犯さない」人達になると計算できます。精神障害者ならそれも許されるとでもいうのでしょうか。「再犯の恐れ」と言う、危険性を根拠とする拘禁はまさに刑罰に代わる処罰としての予防拘禁、不定期拘禁であり、それ以上のものではあり得ません。

             
第三にこの「処遇新法案」はあるべき精神医療を歪め、精神障害者への差別と偏見を助長するものです。精神医療において主治医との関係は他科と比べてとりわけ重要です。主治医を選ぶこと、病院を選ぶことは精神障害者にとって極めて重要な権利の1つです。インフォームドコンセントや心の通い合う医療が無ければ、良くなる病気も治りませんし、社会復帰にもつながりません。医者も選べず、重警備施設のなかでどの様な治療的関係が成り立つのでしょうか。まして退院してからも刑事政策の一翼を担う保護観察所の監視のもとでの通院と言うのでは、本人の医療の為というのはお題目です。


 総じてこの「処遇新法案」は憲法に保証された法のもとでの平等に反し、精神医療に刑事処分的要素を持ち込み、精神障害者がおしなべて危険とする世論を助長するばかりか、精神障害者の社会参加を著しく阻害することになります。        
私たち陽和病院患者協会は以上の理由により「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」に断固として反対することを決議しここに声明として発表します。


池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧

「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会

重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向

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