精神保健福祉法の施行について

精神保健福祉課


1 精神保健福祉法の施行について

平成11年6月4日に「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律」(平成11年法律第65号)が公布され、平成12年4月1日の法施行に向けて、厚生省において現在、政省令等の整備を行っており、追って通知することとしているので、都道府県におかれては、関係法令の主旨を踏まえ体制整備をお願いしたい。
 なお、法施行のための体制整備にあたり、特に留意すべき点について、以下のとおり要点を整理したので、参考とされたい。

(1)移送制度の円滑な実施について

 平成11年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「法」という。)の改正において、都道府県知事(指定都市にあっては市長。以下同じ。)は、その指定する指定医の診察の結果、直ちに入院させなければ医療及び保護を図る上で著しく支障がある精神障害者であってその精神障害のため本人の同意に基づく入院にないと判定されたものを、医療保護入院又は応急入院させるため、応急入院指定病院に移送できることとした。
 また、措置入院に付随して従来から行われていた措置入院のための移送についても、法分上明確にしたところである。
 したがって、各都道府県等におかれては、平成12年4月1日の法施行に向けて、「移送に関するガイドライン(案)」を参照とし、移送制度の運用が円滑に行われるよう体制整備をお願いしたい。
 特に、移送体制の整備に当たっては、以下の点に留意されたい。

ア 措置入院

(ア)基本的考え方

 措置入院に付随して従来から行われていた措置入院のための移送について、法文上明確にされたが、この中で移送に際して告知を義務づける等、患者の人権に配慮して移送を行うことを規定しており、この主旨を踏まえ移送体制を整備すること。

(イ)事前調査の実施

 指定医の診察の必要性を判断するために、移送の対象となると考えられる者の居宅等において、移送のための事前調査を行う体制を整備すること。

(ウ)指定医の診察を行う場所への搬送

 事前調査の結果、措置入院のための指定医の診察が必要と判断されたとき、診察を行う場所に移送の対象者を搬送することも法に規定する移送制度に含まれるため、そのための搬送体制についても整備すること。

(エ)移送に係る記録用紙等の整備

 事前調査の結果を記録する「事前調査票」、移送の経過を記録する「移送記録票」、指定が行った診察等を記録する「診察記録票」、書面による告知の様式をあらかじめ整備しておくこと。

(オ)職員の同行

 事前調査から入院までの全過程において、都道府県職員(指定都市においては市職員。)が同行することとしており、円滑に移送が行われるよう人員体制の整備を図ること。

(カ)補助者

 指定医の診察及び実際の搬送に当たって、必要に応じて補助者をつけられるよう体制を整備すること。

(キ)車両等の整備

 移送の対象者を必要な場所に移送することが必要となったとき、速やかに車両等を用いて搬送できるよう体制を整備すること。なお、移送の対象者を車両等を用いて搬送する部分については委託することができる。

イ 医療保護入院及び応急入院

(ア)基本的考え方

医療保護入院等のための移送は、家族等が説得の努力を尽くしても本人の理解が得られない場合に限り緊急避難的に行うものであるため、事前調査を十分行ったうえで、本制度の適応について適切に判断すること。

(イ)相談の受付窓口の整備

 移送に係る相談の窓口を整備し、その周知に努めるとともに、利用者が利用しやすい体制となるよう配慮すること。

(ウ)事前調査の実施

 措置入院の場合に準じる。

(エ)指定医の選定

 事前調査の結果、指定医による診察が必要と判断したとき、速やかに指定医の診察が居宅等において行われるよう体制を整備すること。なお、この診察を行う指定医は、診察の結果入院が必要となった患者が入院する医療機関以外に所属していることを原則とすること。

(オ)移送に係る記録用紙等の整備

 措置入院の場合に準じる。

(カ)職員の同行

 措置入院の場合に準じる。

(キ)補助者

 措置入院の場合に準じる。

(ク)車両等の整備

 措置入院の場合に準じる。

(ケ)入院手続き

 入院に当たって、既に都道府県知事が指定する指定医によって入院の必要性が判定されているため、重ねて判定を行う必要はないこと。その場合、病院に診察記録票の写しを手渡すこと。

(2)精神医療審査会機能の強化について

 今回の法改正において、精神医療審査会の機能強化を図ったところであり、これを受けて精神医療審査会マニュアル(昭和63年5月13日健医発第574号)を改正することとしているので、各都道府県等におかれては、その主旨を踏まえ法施行に向けて体制整備を行われたい。
 なお、精神医療審査会の体制整備に当たっては、特に以下の点に留意されたい。

ア 精神医療審査会委員定数

 今回の法改正により5人以上15名以内としていた委員定数の規定を外したところであるので、審査すべき案件の数に応じて、審査が迅速(請求等があってから概ね1ヶ月以内。)かつ適切に行われるよう合議体の数を整備すること。

イ 情報公開について

 審査結果が報告された以後は、精神障害者の個人情報以外の情報は公開するよう努めること。

ウ 審査方法の充実

 今回の法改正により、審査を行うに当たって新たに審査会委員による診察、診療録その他帳簿書類の提出の命令、出頭を命じての審問等を行うことができることを規定したところであるので、必要に応じてこれらの審査方法を積極的に活用すること。

エ 電話相談の取扱

 都道府県知事に寄せられた電話相談について、内容を審査会に報告するとともに、事例によっては口頭による退院請求として取り扱うこと。

オ 実地調査との関連

 精神医療審査会からの求めがあったとき、精神病院の立入調査に指定医である審査会委員を同行させること。

カ 指定医の処分の関連

 審査会の審査の過程で指定医の不適切な行為が明らかになったとき、その件について精査の上、厚生大臣に通知すること。

(3)入院患者の開放処遇について

 法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める精神病院に入院中の者の処遇に関する基準として、任意入院患者は、原則として開放的な環境で処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇をいう。以下「開放処遇」という。)とすることとしたところであるので、各都道府県におかれては、管下の精神病院において任意入院患者が開放処遇とされるよう指導監督等の徹底を図られたい。
 なお、任意入院患者の開放処遇に向けた精神病院の指導監督等に当たって、特に次の点に留意されたい。

ア 入院患者への周知

 任意入院患者に対して、開放処遇を受けることを文書により伝えることとしていること。

イ 開放処遇の制限

 任意入院患者の開放処遇の制限は、当該患者の症状からみて、その開放処遇を制限しなければ医療又は保護を図ることが著しく困難であると医師が判断する場合にのみ行われることであること。その場合、患者に対して開放処遇の制限を行う理由を文書で知らせるよう努めるとともに、診療録に開放処遇の制限に関する事項を記載することとしていること。また、指定医は開放処遇の制限を行ってから72時間以内に診察を行うとともに、その他、必要に応じて積極的に診察を行うよう努めることとしていること。

(4)精神障害者社会復帰施設の設備運営基準について

 改正精神保健福祉法の規定に基づき、厚生省令により「精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準」(以下「設備運営基準」という。)を定めることとしている。
 設備運営基準は、精神障害者社会復帰施設が精神障害者の人権の尊重に特に配慮しながら、障害者の自立と社会参加の促進のために設置、運営される必要があるとの観点から、社会復帰施設の職員や構造設備、運営に関する基本的な事項を幅広く盛り込むとともに、
1)社会復帰施設における利用者等の人権の擁護に十分配慮すること、2)社会復帰施設における利用者への援助が、利用者の心身の状況や希望等を勘案して策定される「援助に関する計画」に沿って、説明と同意を行いつつ、計画的かつ懇切丁寧になされることが重要であること、3)社会復帰施設の運営については、透明性が確保されることが重要であることなどの趣旨を盛り込むこととしている。
 また、設備運営基準は、平成12年4月1日以降すべての社会復帰施設にその遵守を義務づける「最低基準」であることから、特に、構造・設備の基準や人員配置基準の数値的基準等については、既存の社会復帰施設の構造・設備、人員配置の実状等にも十分配慮した内容とすることとしている。
 また、この設備運営基準に沿った適正な運用を確保するため、都道府県知事、指定都市市長が行う社会復帰施設に対する指導監督の実施要領等についても別途通知することとしている。
 各都道府県、指定都市におかれては、これらの設備運営基準及び関連通知に基づき、引き続き社会復帰施設の適切な運営の確保に努められるようお願いする。

(5)精神病院に対する指導監督等の徹底について

 精神保健福祉施策の推進については、かねてより人権に配慮した適切な医療・保護の確保に努めていただいているところであるが、厚生省としては、新潟県の国立療養所犀潟病院における措置入院中の患者死亡事例(平成10年)等精神病院における人権侵害事案の発生が後を絶たないことから精神保健福祉法の施行に関し、都道府県知事等が精神病院に対して実施した実地指導等を踏まえ、国としてこれを検証することにより、より適正な入院患者の医療・保護の確保を図ることを目的とする「精神病院実地検証」を実施している。これは、従来より実施している公衆衛生関係行政事務指導監査の際に、直接精神病院への立入検査を実施し、各都道府県・指定都市が毎年実施している精神病院に対する実地指導方法の確認等を行うものである。
 これまでの精神病院実地検証では、全病院において道県市が指摘した事項以外の問題点が散見されている。
 各都道府県・指定都市においては、管下医療機関に対し実地指導等を実施する際には、今一度、精神保健福祉法及び平成10年3月3日障第113号・健政発第232号・医薬発第176号・社援第491号厚生省大臣官房障害保健福祉部長、健康政策局長、医薬安全局長、社会・援護局長通知「精神病院の指導監督等の徹底について」等各種通知の趣旨を踏まえ、管下医療機関に対する一層の指導の強化を図られたくお願いする。
 また、精神病院に対する指導監督については、改正精神保健福祉法においてもその強化が図られており、新たに1)都道府県知事は、入院中の者の処遇が適当でないと認めるときは、精神病院の管理者に改善計画の提出等を命じることができること、

2)改善命令等に従わない精神病院については、期間を定めて入院による医療の提供の全部又は一部を制限することを命じることができるものとされたところであり、おって関係通知を改正する予定であることを念のため申し添える。

2 精神障害者社会復帰対策の推進等について

(1)精神障害者社会復帰施設の整備促進等について

 精神障害者社会復帰施設・事業等については、昭和62年の法改正で社会復帰対策の推進を法律に位置付けるとともに、平成7年12月に策定された障害者プランに数値目標を盛り込むなど、計画的な推進を図っているところであるが、精神障害者社会復帰施設等については、これまで地元の理解が得られにくいことや、自治体の財政事情等の理由により施設の種類によっては整備が遅れている状況にあり、障害者プランの達成に支障が生じることも考えられる。各都道府県・指定都市におかれては、障害者計画における具体的な数値目標の設定を行い、併せて貴管下の障害者計画の未策定市町村に対し早急に計画を策定するよう指導願いたい。なお、管内の社会復帰施設等の整備の進捗状況等について改めて評価・点検を行い、精神障害者社会復帰・福祉施策の推進に努められたい。
 なお、平成11年度第2次補正予算において、経済対策の観点から、精神障害者社会復帰施設の施設・設備整備費について、必要な予算措置を行ったところであり、事業の前倒しについて協力願いたい。
 また、同補正予算において、精神病院における任意入院患者の開放処遇の促進を図るための病棟出入口扉の改修事業を精神病院療養環境改善整備事業に盛り込んだところである。当該事業は、先般の精神保健福祉法の改正により、任意入院患者は基本的に開放処遇を行うことととなることから、病棟出入口扉を自動開閉扉等に替える改修事業を新たに補助対象とすることとしたところである。各都道府県・指定都市においては管下関係医療機関への働きかけをお願いしたい。

(2)精神障害者社会復帰施設の運営費の改善内容について

 精神障害者社会復帰施設については、近年、利用者の高齢化や単身化の進行、障害の重度化、自立度の低下が顕著になるなど、施設を取り巻く状況が変化している。
 また、関係者から、1か所当たりの運営費が不十分で施設の運営上支障を来す場合があり、このことが社会復帰施設の計画的整備の阻害の一因になっているとの指摘があり、運営費補助の内容改善に対する強い要望が寄せられてきた。
 こうした状況に対応するため、平成12年度予算において、生活訓練施設等の指導員、事務員各1名の増員、地域生活支援センターの施設長の設置、施設職員の処遇の改善など運営費の大幅な内容改善を盛り込んだところである。
 各都道府県・指定都市におかれては、所要の予算措置を行うとともに、施設の安定的運営の確保について引き続き協力願いたい。

(3)身体障害者施設との相互利用の推進について

 平成12年度から精神障害者通所授産施設と身体障害者通所授産施設における相互利用を実施することとしている。精神障害者と他の障害者施設の相互利用の促進については、既に平成11年度から精神障害者と知的障害者において相互利用を実施しており、今般の精神障害者と身体障害者間の相互利用により、三障害それぞれの通所授産施設において相互利用が可能となる。
 なお、精神障害者が身体障害者通所授産施設を利用する場合にあっては、精神障害者通所授産施設の補助単価を、身体障害者が精神障害者の通所授産施設を利用する場合にあっては、身体障害者通所授産施設の措置費単価を支弁することとする予定である。

(4)精神障害者訪問介護試行的事業の実施について

 今回の法改正において、精神障害者にホームヘルパーを派遣する精神障害者居宅介護等事業が法定化され、市町村を中心に平成14年度より実施することとなったところである。
 本事業を円滑に実施するため、今年度より実施している精神障害者訪問介護(ホームヘルプサービス)試行的事業を引き続き実施することとしているが、今年度は試行的事業を実施していない都道府県、指定都市もみられ、低調であることから、平成12年度においては、本事業の重要性に鑑み、全都道府県・指定都市において実施されるよう特段の御配慮をお願いする。
 また、新たに試行的事業に参画した市町村やホームヘルパーの協力も得ながら、試行的事業の成果を集約・解析し、精神障害者ホームヘルパーの養成研修等のあり方、内容等について検討を行うための事業を精神障害者社会復帰促進センター((財)全国精神障害者家族会連合会)に委託し、全国2か所で行うこととしている。
 各都道府県、指定都市においては、平成14年度の実施に備え、これらの事業への参画と積極的な取組をお願いしたい。

(5)精神障害者ケアマネジメント体制整備について

 本事業は、従来より精神障害、身体障害、知的障害の各障害ごとに段階的に実施してきたものを今年度より3障害を統合して実施しているものである。
 精神障害者の地域生活を支援する観点から、ケアマネジメントを希望する精神障害者に対して保健・医療・福祉サービスの一体的な提供が必要であり、そのためにはケアマネジメントの手法を確立する必要がある。
 また、今回の法改正により平成14年度から市町村がホームヘルプサービスをはじめとした精神障害者居宅生活支援事業等在宅福祉施策を実施することから、当該業務を円滑に行うためにもケアマネジメントの手法の確立は重要となる。
 しかしながら、今年度の本事業の実施状況は低調であり、特に精神障害者に係る事業は他の障害に比べても遅れている状況である。
 本事業の重要性に鑑み、平成12年度は全都道府県・指定都市において実施されるよう特段の御配慮をお願いする。

(6)精神保健福祉担当職員等特別研修事業の実施について

 今回の法改正において精神保健福祉施策に係る関係機関の役割分担を見直し、平成14年度から市町村が精神保健福祉手帳及び通院医療費公費負担の申請の受理、精神障害者の福祉に関する相談、精神障害者居宅生活支援事業の実施等の新たな業務を実施することとなった。
 市町村がこれらの事務を円滑に実施できるよう、専門性や広域的な調整が必要な事項については保健所を通じて都道府県が支援することとしているが、平成12年度においては都道府県に対する補助事業として、市町村職員等に対して、市町村が平成14年度以降新たに実施する事務について指導・研修を行う精神保健福祉担当職員等特別研修事業を実施することとした。
 各都道府県、指定都市におかれては、当該趣旨を御理解の上、事業の実施について特段の配慮を願いたい。なお、実施に際しての実施要綱等については別途通知することとしている。


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