民間移送会社による精神障害者の移送に関する質問主意書および答弁書

参議院議員 桜井充議員提出のもの

参議院先議で国会提出されている「障害者等に係わる欠格事由の適性化等を図るための医師法等の一部を改正する法律案の審議は、4月3日に厚生労働委員会で趣旨説明のみを行います。(4月5日には法案質疑と参考人質疑、採決か)



右の質間主意書を国会法第七十四条によって提出する。

質問第一三号  民間移送会社による精神障害者の移送に関する質間主意書


平成十二年三月一日                  櫻井 充


参議院議長 井上裕 殿

民間移送会社による精神障害者の移送に関する質問主意書

 最近、民間移送会社によるいわゆるひきこもりの症状がみられる精神障害者の移送を専門とするサーピスの間題が多く報道されている。これら報道によると、民間移送会社が保護著に対して法外な料金を請求したり、民間移送会社の判断で入院先を決定したりしているが、法律には触れていないという。このような現在の法整備では、患者の人権は十分に守られていないと思われる。そこで以下質間する。
一 精神障害者又はその疑いのある者の保護者が、本人の同意なしにその者を精神病院へ人院させる場合、保健所を経て都道府県知事に申請すれば、これは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に従って措置され、医師の診察及び確認が行われる。しかし、保護者が都道府県知事に申請せず、最初から民間移送会社に依頼した場合、医師の診察及び確認は必ずしも行われていない。政府はこのような異なる取扱いを認めるのか、見解を示されたい。
二 一のように、保護者が最初に相談した場所によってその後の対応が異なってしまうことは間題であると考えるが、これは法律上の不備ではないのか、政府の見解を示されたい。
三 民間移送会社が精神障害者又はその疑いのある者を医師の診察及び確認なしに移送する場合、患者の人権は保たれるのか。保たれるとすれば、それは何の法律によって担保されているのか。
四 民間移送会社は主として、書類 審査により都道府県公安委員会に認定された警備会社の体裁をとっている。医療行政側が移送業者の実態を把握する手段を持たないのは間題と考えるが、政府の見解を示されたい。
五 今後、このような民間移送会社に対して、厚生労働省として何らかの指導・監督を行う予定はあるのか、見解を示されたい。
右質間する。

内閤参質一五一第一三号   平成十三年三月二十七日   内閤総理大臣森喜朗


参議院議長 井上裕殿 


参議院議員櫻井充君提出民間移送会社による精神障害者の移送に関する質間に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議員櫻井充君提出民間移送会社による精神障害者の移送に関する質間に対する答弁書

一及び二について
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「法」という。)においては、精神障害者本人の同意に基づく任意入院(法第二十二条の三)以外の入院形態として、措置入院(法第二十九条)、医療保護入院(法第三十三条)等が規定されている。
 御指摘のひきこもりの症状が見られる精神障害者とは、どのような症状を指すかが必ずしも明らかではないが、一般には自身を傷つけ又は他人を害するおそれはない場合が多いと考えられ、仮にこのような場合に精神障害者の保護者から法第二十三条の申請があっても、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市の市長を含む。以下同じ。)は法第二十七条第一項に規定する精神保健指定医による診察の措置を講ずることはないと考えられる。
 一方、精神障害者が任意で精神病院(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。以下同じ。)を受診することがあるが、その際に民間の移送サービスを利用するか否かにかかわらず、医療保護入院をさせるためには精神保健指定医による診察が必須とされており、その診察において医療及び保護のため入院の必要があると判断されれば、精神病院の管理者は保護者の同意を得て医療保護入院をさせることができる。また、医療保護入院の必要がない場合は、精神障害者本人の意思に基づき、任意入院又は通院により適切な医療が提供されることとなる。
 以上のように、精神障害者の入院形態等に差異が生ずるのは、都道府県知事に対する申請等の有無によるためではなく、個々の精神障害者の症状に即した適切な医療及び保護を提供するためであり、また、精神障害者本人を同意なしに精神病院に入院させる場合には、受診に際して民間の移送サービスを利用するか否かにかかわらず、精神保健指定医の診察が必須とされていることから、御指摘のような法律上の不備はないと考えている。
三について
 精神障害者が任意で精神病院を受診する際に、移動の便を得るために民間の移送サービスを利用することは否定されないが、その際に刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百二十条に規定する逮捕又は監禁のような犯罪行為が行われてはならないのは当然のことである。また、一及び二についてで述べたとおり、精神障害者を本人の同意なしに精神病院に入院させる場合には、精神保健指定医の診察が必須とされている。
四及び五について
 御指摘のような移送サービスを行っている民間事業者が警備業者として都道府県公安委員会の認定を受けている場合には、その警備業務の実態は都道府県公安委員会が把握し得るところであり、この内容を必要に応じて各都道府県等の精神保健福祉部局が把握することは可能である。また、厚生労働省においては、平成九年度厚生科学研究費補助金により実施した「精神障書者の人権擁護に関する研究」において、全国の保健所を通じて民間事業者による精神障害者の搬送の状況等を調査するとともに、現在、都道府県、財団法人全国精神障害者家族会連合会等を通じて民間事業者による移送事例に関する調査を実施しているところである。
 これらの調査結果等を踏まえ、精神障害者に対する適切な医療及び保護を確保する観点から必要があると判断される場合には、精神障害者及びその家族に対する情報提供等を図ってまいりたい


各都道府県の移送制度の現況(2000年10月末現在)

1 移送制度導入状況

○導入済(19箇所)
北海道、青森、宮城、秋田、福島、石川、長野、静岡、大阪、和歌山、島根、岡山、
佐賀、沖縄、札幌市、千葉市、大阪市、神戸市、北九州市

○導入予定(40箇所)
岩手、山形、茨城、栃木、東京、埼玉、群馬、千葉、神奈川、新潟、富山、福井、山
梨、岐阜、愛知、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、鳥取、広島、山口、徳島、香川、
愛媛、高知、福岡、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、仙台市、川崎市、横浜市、名
古屋市、京都市、広島市、福岡市

2 移送実績

  区分
                   調査件数 移送件数
 措置入院              4,312  1,986
 医療保護入院             142    26


 

移送制度への批判 → 大阪精神医療人権センター里見和夫弁護士

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