「心身喪失者医療観察法案」 国会審議等 2003年6月8日
京都精神しょうがい者の人権を守る会主催
緊急抗議集会の集会決議文2002年12月6日、第155回国会衆議院法務委員会において、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案(以下、「法案」と記す)」は、与党の強行採決により、可決され、参議院送付となりました。そして、現在行われている第156回国会参議院法務委員会において審議が続けられてきましたが、6月3日与党により強行採決が行われたのです。この暴挙を心から弾劾します。
「法案」は、これまで指摘されてきた通り重大な問題性を持っています。
第1に、「法案」の対象行為である、放火・強制わいせつ・強姦・殺人・強盗及び傷害とその未遂等の行為を行い不起訴の処分を受けた精神しょうがい者に対し、「同様の行為の再発の防止」を図るため強制的に入通院治療を行うことです。その目的を「社会復帰を促進すること」という言葉上の修正を行い批判の矛先をかわそうとしていますが、本人の社会復帰というのは名目に過ぎず、社会防衛的に「危険な」精神しょうがい者を合法的に隔離拘禁できるようにする実質的保安処分に他なりません。
第2に、「法案」の対象行為が、上記のように非常に広いものになっていることです。多くの精神しょうがい者が「法案」の成果をあげるために、入院治療と称した長期拘禁を受けることになります。さらに、入院期間に上限がなく、「再び対象行為を行うおそれがあると認められた場合」は拘禁が延長されます。現在においても、措置入院による長期入院事例が非常に多く確認され問題視されていますが、「法案」の施行以降は、同法案による人権を無視した長期拘禁により「人生を台なしにされた」精神しょうがい者の事例が数多く出現することは避けられません。また、日弁連をはじめ諸団体が、憲法の二重処罰の禁止に違反すると指摘しているように、「法案」そのものが憲法違反であり、精神しょうがい者のみにかけられた重大な人権違反です。
第3に、「法案」の成立により、精神しょうがい者は、「安全な社会生活を守るため」に隔離されるべき対象であるという意識が一般社会に広まり、さらに偏見差別が助長されることが懸念されます。精神しょうがい者が地域でさらに生活しにくくなるであろうことは、私たちにとって心痛むことです。
これまで、精神医療では、一般科に比べて、医師数は3分の1、看護者数は2分の1であってよいとする精神科特例を厚生労働省は認めてきました。そうした、安価な医療の中で、世界の中でも異例と批判された長期入院に見られる隔離拘禁がなされてきたのです。閉ざされた病棟の中では、精神しょうがい者に対する多くの人権侵害が続けられ、多くの方が殺されてきました。それに対し、一部の医療従事者たちは、開放医療やインフォームドコンセントなど患者の権利に根差した医療を進めてきました。同時に、精神しょうがい者を地域に受け入れ、差別偏見を取り除く努力を行いながら、福祉サービスを充実させる試みが福祉施設、共同作業所、いこいの場や様々な市民活動を中心に実践されてきました。当事者運動は、粘り強く問題の告発と精神しょうがい者の権利擁護を叫び続けました。政府の誤った精神しょうがい者政策とそれに起因する福祉の立ち後れの状況の中で、こうした取り組みが地道に続けられることにより、精神しょうがい者への理解と共感が深まり、豊かな地域社会の実現が進められてきたのです。
しかしながら、そうした努力を全く否定するかのように政府・厚生労働省から「法案」が提案され、精神科特例の中で暴利をむさぼってきた日本精神科病院協会等の支持など従前たる構造的利害関係と与党の数の論理が相まって、暴力的に「法案」成立が実現されようとしているのです。断固としてそれを容認するわけには行きません。私たち、緊急抗議集会参加者一同は、本「法案」の不当な採決を無効とし、差し戻しを要求するとともに、すみやかな廃案を強く要求します。
2003年6月8日
緊急抗議集会参加者一同
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