「心神喪失者医療観察法案」国会情勢緊迫! 法案は廃案しかない!
参議院
法務委員会
厚生労働委員会
委員殿 各位ご多忙の折、突然のメールで恐縮です。
先日5月20日の参議院法務委員会に参考人としてお招きいただき、意見をのべさせていただきました高木俊介(精神科医・ウエノ診療所)と申します。
このつど、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)」につきましてお願いのメールをいたしました。来週にも件の法案が法務委員会で採決されるかもしれないとの情報がありました。この法案の問題については、私も未熟ながら参考人の場で提示しましたが、何一つ解決もしていないし、多少なりとも納得のいく答弁もなされていません。
改めてここに問題点を簡単に述べさせていただき、先生方に熟考をお願いする次第です。
(1)立法根拠となる事実についての資料・説明不足
この法案は精神障害者の疾病状態による再犯行為を防ぐことに主眼があると思いますが、そのような行為が行われる場合がどの程度あるのか、まったく示されておりません。法務省の挙げる数字は、この法案の対象とならないはずの「精神病質」に関するものが主で、作為が感じられます。(2)法の骨格をなす再犯予測についての議論不足
修正案にしてもこの予測を根拠にして予防的拘禁を行うわけですが、この予測の精度についてはきちんとした研究があり、「偶然よりましな程度」とされているわけですが、このような予測が精神障害者にのみ許される根拠。あるいは、かなりの率で起こる予測の誤りに対する対処についての議論不足。(3)対象者の問題についての議論の混乱
この法案は心神喪失者・心神耗弱者を対象としていますが、その場合基本的には精神病質は対象ではありません。しかし、再犯を繰り返す者のほとんどはいわゆる「精神病質」の合併であり、犯行要素は精神病質あるいは生活史・生活環境にあるとされています。したがって法の施行の実際は、精神病質を対象とするように変化していくことが強く予想され、これは我が国の責任主義の刑法体系あるいは責任能力判断のあり方に重大な変質を迫るものです。
そのような重大な問題をはらむものであるにもかかわらず、残念ながら議員の諸先生方の議論は、精神病質に関する再犯資料を鵜呑みにされたり、精神病質についての質疑が多かったりと、なお混乱していると感じざるを得ません。(4)起訴前検察段階における問題の無視
従来からどこの社会でも、精神科医療と司法は複雑で微妙な関係を持ってきました。しかし、次第に効果的な治療法と人道的処遇を確立してきた現代精神科医療にとって、過重な社会治安的役割をいかに脱するかが重要な課題です。多くの国の司法精神医学がこの問題に真剣に取り組んでいます。
しかし、我が国では、起訴前簡易鑑定の問題を含む起訴前の医療と司法への振り分けの入り口に重大な問題が山積しているにもかかわらず、この問題が無視され、単に医療内での処遇の問題として片づけられようとしています。(5)立法経緯の疑問に対する解明の不在
今回、日精協という組織からの献金の問題が出てきています。法的手続きに問題ないとしても、以上のような根本的な問題をはらむ立法に際して、この時期の特定団体との金品のやりとりがあったという事実は、重大な政治倫理的問題があると考えます。この解明なしに強行採決のような手段で法案を成立させることがあったとすれば、国民に対する背信行為と言ってよいのではないでしょうか。参議院は良識の府であり、理性にそった議論の場であると、私たち国民は幼少の頃から聞かされております。しかし、このたび、参考人としてその場に招いていただいて見聞きし、また詳しく議論を聞かせていただく機会を得、失礼ながら少々失望を禁じ得ない気持ちでおります。
どうか種々の問題をあいまいに残すことなく、熟慮検討していただき、私ども国民への範を示すような討議をしていただきたいと切望しております。
高木 俊介 拝
shun-t@mbox.kyoto-inet.or.jp
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