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2001年9月
重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇等に関する見解・補足説明 1.措置入院制度の運用上の問題について
現在、精神障害者の医療的な処遇は精神保健福祉法の規定に基づいて行われている。犯罪行為をした精神障害者の処遇については特別な規定があるわけではない。警察官通報、検察官通報に基づく措置入院制度の規定によって都道府県並びに指定都市が運用を行なっているところであるが、この運用のあり方が地域によってまちまちであることを問題としたい。
措置入院の対象となる精神障害者は、2名の精神保健指定医の診察によって、その病状によって自傷他害のおそれがあると診断された場合である。精神障害の発現率や罹病率に地域差はないとされていることから、厳密に医療的な判断がなされた場合は、地域によって措置入院者の数に有意な差が生じることはないと考える。しかしながら1999年6月現在の統計によると、人口1万人に対する措置入院者の割合は、全国平均で0.27人であるが、指定都市を除いた都道府県別では、最低0.09人から最高0.94人まで地域による格差が10倍以上と非常に大きいのが実状である。このことは、様々な要因が重なった結果であろうが、最も大きな要因として考えられるのは都道府県による制度の運用上の差異にあることは想像に難くない。
措置入院が行政による強制入院制度であり、その運用は全国的に統一されて然るべきものであることから、全国の状況調査をしたうえで、適切な運用を図られたい。2.精神科医療と司法の連携の問題
日本における精神障害者の処遇問題の一つとして、精神科医療と司法の連携がほとんど取られていないことが上げられている。しかしながら、現行の制度上でも、運用の仕方によっては司法と精神医療が連携を取ることがまったく出来ないわけではない。鑑定留置中の治療の保障、医療刑務所の充実と出所後の医療機関への診療情報提供、監獄法並びに刑事訴訟法の弾力的な運用による受刑者の医療機関への送致など、現行法体系においても、その運用によって今まで不十分であった司法と精神医療の連携を図ることはある程度可能と思われる。
3. 精神障害者は責任無能力者か
すでに、多くの精神保健福祉関係団体が指摘しているのは、精神障害者に対する司法手続き上の問題である。わが国の刑法では、心神喪失はこれを罰せずという厳然たる規定があるが、犯罪行為をした精神障害者の大多数が検察の段階で、心神喪失あるいは心神耗弱すなわち責任無能力・限定責任能力を理由に不起訴または起訴猶予とされている。その後検察官通報を経て、これらの精神障害者の処遇は精神科医療に委ねられることとなる。しかしながら、措置入院者として私達が出会う精神障害者の中には、果たして責任を持てない人なのであろうかと疑問を抱かせる人が少なからず存在するのである。
わが国においても、遅まきながら精神障害者のノーマライゼーションの推進や地域精神医療・コミュニティケアの胎動が始まっており、2002年度からようやく精神障害者の在宅福祉サービスの実施主体が市町村に位置付けられ、2003年度にはケアマネジメントの本格的な導入も予定されている。すでに諸外国では脱施設化が進み、精神障害者も市民としての権利を享受するとともに、応分の責任を担うという考え方が主流となっている。精神障害者には、生活者として様々な危険を冒す権利(失敗する権利)が専門的な支持システムの下に保障され、その権利保障の代償として精神障害者本人と彼らを援助・支援する側がともに責任を負うという概念が浸透しているのである。
このように、たとえ障害があっても市民としての権利と責任を保障していこうという時代の流れにあって、検察段階において、犯罪行為をした精神障害者の責任だけが自動的に(と思えるほど)免責されることに果たして合理的な根拠を見出せるのであろうか。起訴され裁判を受けた精神障害者については、その責任能力の有無・程度は、犯行当時の病状、犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等を総合して判断されており、現に心神喪失として無罪とされる例が毎年数件に限られていることからも、検察における責任能力の判断手続きが適性に行われる方策が必要と考える。またその際は、必要に応じて医療も保障される手立てが検討されるべきであろう。
「なにをやっても、自分達精神障害者は罪を問われない」とは、精神保健福祉関係者であれば誰でも一度は精神障害当事者から聞かされたことがある発言であるが、これは自己を著しく卑下するものであり、私たちは人間として扱われていないのだという諦めや悲しみが内在しているのではなかろうか。このことは明らかな逆差別を生むこととなっている。一方で、「私が罪を犯したときには、裁判を受けてその罪を償いたい」と言う精神障害者も少なくない。裁判を受ける権利や罰を受ける権利を一国民として保障していく仕組みが必要である。4. 社会復帰の困難性について
社会的入院をしている精神障害者の社会復帰が、私達精神保健福祉士をはじめとする関係者と本人の相当な努力と、地域社会の理解のうえにようやく実現するという現状から考えると、重大な犯罪行為をした精神障害者の社会復帰は相当の困難が予想される。
過去に重大な犯罪行為があったとしても、地域での受け入れにあたっては、特別な施設を作ることは考えにくく、一般の精神障害者が利用できる生活支援サービスを活用することが当然に考えられる。しかしながら、現状の貧困な社会資源でどれだけの人を受け入れる余地が残っているのであろうか。仮に、なんらかの医療の継続システムが導入されたとしても、充分な生活支援体制が整備されないのであれば、結果的に将来の犯罪の発生を予防することは難しいといわざるを得ない。
昨年12月の法務省と厚生省(当時)の合同検討会の立ち上げに際して、この検討会における協議・検討事項とされたのは、「重大な犯罪行為をした精神障害者の処遇の決定と処遇システムの在り方」のほか、「精神障害者に起因する犯罪の発生を予防するための方策」であった。前者については現在検討が進められているところであるが、後者については未だ検討されておらず、その検討スケジュールも示されていない。
立ち上げに当たっての主意書付属資料には、後者について検討すべき方策として以下の6点が挙げられている。
日本精神保健福祉士協会 事務局
〒160-0022東京都新宿区新宿1-11-4 TSKビル7F−B
TEL03-5366-3152 FAX03-5366-2993
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