精神科医157名の声明 心神喪失者等の強制医療観察法に反対する精神科医の集い
代表幹事 岡田 靖雄
富田三樹生関係する皆さまへ
私たちは、現在国会に上程されている「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に重大な危惧を感じている精神科医です。去る5月11日に「心神喪失者等の強制医療観察法に反対する精神科医の集い」を開催し、その議論をもとに、下記の声明を作成いたしました。この声明に自らの署名を付すことで、この法案への反対の意思を明らかにするものです。
なお昨今のウィルス等の状況に鑑み、地の文でお送りしますが、ご希望の方にはテキストファイル等の形でお送りしますので中島(Email:CZX00547@nifty.ne.jp)までお知らせ下さい。精神科医の皆さまへ
とりあえず二次集約まで行いましたが、今後も集約活動は続けようと考えています。声明にご賛同いただける方は中島(Email:CZX00547@nifty.ne.jp、FAX多摩あおば病院042-393-2880)まで、ご氏名とご連絡先を明記の上、お知らせ下さい。周囲の方に呼びかけていただいてもいいと思います。よろしくお願いいたします。
2002年5月24日
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に反対する臨床精神科医の声明
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律案」(以下、法律案)が今国会に上程され審議されようとしている。私たちは精神科医療の第一線を担う臨床精神科医として、この度の「法律案」を臨床経験に基づき検討した結果、本「法律案」は科学的根拠に乏しく、これが立法化されれば「心神喪失者」等の拘禁と自由の制限を大幅に強化するものとなり、更には極めて貧困な我が国の精神医療・保健・福祉の現状の中で、今なお差別・偏見に呻吟する精神障害者への新たな差別を産み出すと共に、精神医療そのものを大きく歪めるものとなることを指摘せざるを得ない。私たちは本「法律案」に対し、以下の理由で強く反対し、自からの連名によりその廃案を求めるものである。
1,再犯あるいは危険性の予測は不可能である
本「法律案」は再犯予測判断が可能であるとし、それを「法律案」の根幹に据えている。しかし、従来の責任能力判断は過去の時点における行為とその時点における病状との関係を主たる問題としているのに対し、再犯予測判断は将来の任意の時点における病状と対象者をとりまく不確定な環境のうちに生起する対象行為の発生可能性を問題とするものであり、この予測を行うことは不可能である。更に、「再犯予測不能」との科学的認識を無視した本「法律案」は、社会防衛上の観点から必然的に長期にわたる隔離・拘禁をもたらすこととなり、その導入は精神障害者に対する明白な差別といわねばならない。2,再犯予測を臨床に持ち込むことは、精神医療を歪め、その破壊に繋がる
臨床精神医療は精神症状のみならず、「疾病の辛さ、苦しさ」や「逸脱行為をせざるを得なかった」背景を含めて総合的に検討し、当事者との十分な信頼関係を基盤にしてはじめて成立するものである。本「法律案」は裁判官と精神保健審判員の合議により、入・退院や強制通院等の決定を行うとしている。しかし、これらの審判は科学的根拠のない「再犯予測」を基準にしており、実質的に根拠なき「再犯予測」を治療者ないしは治療の場に持ち込むことにより、治療関係は不成立・混乱・歪曲をこうむることとなる。再犯防止を第一の任務とし、対象者の利益を第二とする医療はもはや医療の名に値
いしないというべきであり、このような「再犯防止」を第一義とした社会防衛の役割を自らの内に抱えこむことは、臨床精神科医としての自殺行為に他ならない。3,法の下の平等と適正手続きの欠如は精神障害者に対する差別であること
本「法律案」は対審構造が曖昧で、弁護権の保障がなく、事実認定に的確さを欠く。事実認定は対審構造に立脚し、厳格な手続きによって行われるべきであり、これを曖昧にすることは、無実の元死刑囚赤堀政夫さんの例をあげるまでもなく、現在もある精神障害者に対するえん罪を一層増加させることになろう。こうしたことが精神障害者であるが故に許されるとすれば、それは精神障害者に対する差別そのものといわねばならない。4,貧困な精神医療・保健・福祉の現状の改革こそ最優先の課題である。
長年にわたる隔離・拘禁下の収容政策は35万余の入院患者、数万にものぼる社会的入院者を産み出し、精神障害者が地域で生活するための諸権利を剥奪してきた。そのことは欧米諸国と比較すると一目瞭然である。他の医療から著しく差別化された精神医療の改善は無論のこと、居住の場をはじめとする生活基盤の充実や自立した社会経済活動を可能とするシステムや支援体制の確立こそ緊急の課題であり、これらは何よりも優先されるべきである。
以上心神喪失者等の強制医療観察法に反対する精神科医の集い
代表幹事 岡田 靖雄
富田三樹生
- 私たちは臨床精神科医として上記声明に賛同し、自らの意志で連名するものである。
- (2002年6月3日第二次集約分、157名)
- 浅野 弘毅、荒川 幸博、有泉 享治、有本 進、生村 吾郎、石神 亙、石川 憲彦、磯田 雄二郎、
- 磯村 大、一ノ橋 英孝、伊藤 哲寛、伊藤 朋子、稲垣 俊雄、今岡 雅史、井本 浩之、岩井 圭司、
- 岩尾 俊一郎、上島 哲男、上野 光歩、枝 雅俊、大久保 圭策、大下 顕、大槻 不二比古、岡 潔、
岡江 晃、岡崎 伸郎、岡田 清、小川 正明、小川 恵、小川 紘、小河原 尚泰、小田 英男、- 小高 晃、落合 洋士、音田 篤、鬼原 治良、小畑 信彦、小原 基郎、小原 聡子、片岡 昌哉、
- 金杉 和夫、金村 元、亀田 英明、狩野 寛、川合 仁、川瀬 典夫、川畑 俊貴、岸 信之、
- 北中 淳悟、金 光洙、木村 健一、木村 政紘、楠部 治、久保 一弘、久米 眞理、黒川 洋治、
小泉 潤、小出 浩之、五島 幸明、斎藤 弘之、坂本 恵子、佐藤 順恒、三家 英明、柴田 明、
清水 聖保、白澤 英勝、杉浦 留奈、杉田 憲夫、杉山 克好、瀬川 義弘、瀬戸 睿、千郷 雅史、
宋 仁浩、高岡 健、高木 俊介、高木 隆郎、高田 知二、高橋 武久、高橋 尚美、田川 精二、
瀧川 牧人、竹内 徹、田中 勝正、田中 千足、田中 迪生、田原 明夫、田村 修、知念 襄二、
辻本 士郎、堤 俊仁、椿 恒雄、津本 学、鄭 龍寿、都井 正剛、樋田 精一、歳森 康博、- 中川 善資、中川 実、中島 直、長田 正義、中野 隆史、中山 隆嗣、名越 康文、苗村 敏、
西尾 雅明、長谷川 誠、花岡 秀人、花岡 正憲、浜垣 誠司、浜野 徹二、原 敬造、平井 清、
平尾 和之、平山 栄一、弘末 明良、広田 伊蘇夫、福田 一彦、藤城 聡、藤巻 純、藤本 臣又、
古山 佳子、星野 征光、細田 眞司、堀川 典宏、待鳥 浩司、松澤 冨男、松島 篤、丸井 規博、
三浦 宗克、水野 慶三、宮崎 隆吉、宮地 達夫、三吉 譲、村上 靖彦、望月 紘、望月 清隆、
元木 章二、森 俊夫、森 正樹、森口 秀樹、森山 公夫、屋宜 盛秀、山岸 一夫、山下 剛利、
山本 芳正、山本 忍、横内 敏郎、横田 泉、横田 禎夫、横山 太範、横山 淳二、吉岡 隆一、
吉田 優、吉田 清次、渡辺 哲雄、渡辺 瑞也、渡辺 洋一郎
池田小学校事件および特別立法に関連する声明一覧 「重大な犯罪行為をした精神障害者」問題 法務省・厚生労働省合同検討会 重大犯障害者の処遇法案〜与党・政府の動向 「隔離新法」 国会上程反対 速報! 国会議事堂前抗議行動! 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(案)(更新020324)
- 新法骨子関連 2002年2月14日
- ・自由民主党 触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム第11回会合 <議事次第>
- ・重大な触法行為をした精神障害者に対する新たな処遇制度(案)の骨子
- ・精神障害者の保健・医療・福祉の総合計画(仮称)に盛り込むことを検討中の主な内容
- ・触法処遇制度(案)骨子【図】
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